3-21 同行者
残留組に話を通すと2人ばかしが付いて来る事になった。一人は学園内を回っていたときに助けたロッカーに隠れていた獣人の女生徒。
「ロッカーか」
「え、あの私の名前はロカロカだけど・・・」
本当にロッカーじゃないか、名は体を表すとはいえこれはやりすぎだろう。覚えやすいからいいが。とりあえずこれからも呼び名はロッカーで固定だ。
しかし、まあ態度や顔に見合わず上手く生きそうなヤツだ。天然の腹黒さ、いや強かさを持つというべきか。残留組は不憫な扱いではなくむしろかなり安全だ。地上は、正直危険が伴う。それは探索や日々の食料集めにしかり、極限状態での生徒同士のいざこざも生じてくるだろう。男女で住むスペースも同じ。さて、それがどういう事態になるか楽しみだ、いや正直どうでもいいが。学園に残っている際こっちになにかあったとしても食料の余剰分で地上まで脱出することは可能、逆に地上でヘマをやらかし生徒達に大きな被害が出たとしても安全。結局『巨人』を恐れないのであればここに残っているのがある意味では一番楽だったりする。
しかし、一緒に来るとすると多少の危険が伴うが。まあかまわんが、本人も良く分かっていないのかもしれない。その生存本能は何かを見出したのか?少し楽しみだ。
「・・・そっちは?」
「ああ、話すのは初めてになるね。ナコナコって言う、よろしく頼むよ。一応、学園の教師を勤めていたよ・・・本当に大きいねえ!」
橙色の明るい髪の色をした獣人だ、学生服ではなく運動しやすそうな服を着ており、頭に包帯を巻いておりそれが右目にまでかかっている。教師か、確かに話の中のどこかで聞いた覚えがある、教師はルオナ女史だけでは無かったか。こちらの意図を察したか苦笑いをしながら口を開く。
「恥ずかしながら、今までずっと意識が無くてね。まあ、色々大変だったようだけど・・・運が良かったのやら悪かったのやら」
気絶していて起きたら事が大きく進んでいれば、まあ驚くか。ただ、その間の講堂の騒ぎやら話し合いといった騒がしいものをスルーできたのは良かったのではないか?個人的には事故で大きな怪我を負ったとして苦しみながら治るのを待つよりも起きたら治っていた方がいい。好き好んで苦痛を味わう必要は無い、苦痛が好きな人間もいるかも知れないが。
「専門は?」
「社会学と運動を教えていたよ、当分はまともに運動はできないだろうし地理も社会も役に立つかはもうわからないけどね」
「・・・そうか。まあ、いい。この2人が付いて来ると言う事でいいな」
「ああ、そうなるよ。基本的にはあなたに従うよ、巨人のダンナに妖精様」
「ええと、よろしくお願いします」
「ああ」
「むー、ホウタイちょっとおじ様に慣れ慣れしくないかナ?」
「気に障ったならすまないね、でもそちらの御仁はそういうの気にしないだろうさ?」
「まあな。フィア、面倒は嫌いだ」
この程度なら問題は無い、舐められなければ。別に勝手に相手が親しく話しかけてくる分には問題は無い、敵対しなければ。むしろ今のはフィアが過剰だ。あまり、そういうのに五月蝿い奴は好みではない。
「ぶーぶー・・・わかったヨおじ様」
「まあいい、行くぞ」
次の目的地は生存者を確保したムラの先にある。劣化したクリスタルは透明度が落ち乱反射により遠目には靄のように見える。島などはこのような濃い靄に包まれていることも多い。だが、強固なクリスタルに包まれた島の先、というか下の方にはぼんやりとした濃淡が滅茶苦茶な靄が広がっている一帯がある。まだ地底を探索してそう長くは無いがはじめて見る光景だったのでそこを目指すことにする。何か面白いことが待っているといいが。
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