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伝説のシャベル  作者: KY
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3-20 帰還、体制の樹立


 とりあえずは学園に戻ることとなった、発狂したムラビトは行軍に遅れが出るので仕方なく適当に簀巻きにして引きずって進む。何人かのムラビトは村跡に残りたいとぐずっていたが他のムラビトに説得されて動き出した。それでも1人は泣きながら風化した家跡を指差し動こうとしないので置いていく事になった。急に目が覚めたら家族もいなくなって家もボロボロ、気持ちは分からんでもないが。まあ、勝手にするといい。ヒトは何かに縛られて平穏を得る、悪いことではないし現に自分も愉しむ為に生きるという考えに捕らわれているといっても過言ではない。ただあまりに固定され平穏と引き換えに変化に弱くなるのか、それとも流浪の身で風に吹かれて流離うか。どっちが幸せなのか。今の自分は後者でかつては前者、いまは不幸ではなく毎日が充実している。


 自分にとってはゆっくりと、他の奴らにはかなりのハイペースで学園まで戻る。正直散歩にしても一度通った風景で面白くは無い、さっさと進みたいものだが体格差と身体能力を考えればこれ以上は急かせないか。今後は学園の残留組から一人つれていって説明と誘導を頼んでおいた方が良さそうだ。そのための布石、あとそのための人員。面倒な生徒達の救出に管理体制の樹立などはまさにこのような事態を想定して行った。ただ実際の効率的運用に関しては試行錯誤がまだ必要なようだ。



 学園に戻った。学園のことを知っているムラビトも多いせいか安堵の表情が見て取れる、そのまま講堂まで連れて行く。どうにも残留組の生徒達はたくさんの個室があるというのに一つの場所で共同生活を送りたいらしい、奇特なものだ。


「おい、誰か来い」


「どうしましたか・・・あら?」


「こいつらの世話を頼む。あとは早速だがプランAだ、ヒトを上にやって10人ほど連れて来い」


 呼びかけにやって来たのはルオナ女史、連れて来たムラビトを見て少々驚いている様子。こういう手合いの世話は博愛主義者にはうってつけだろうし後は任せることにする。暴れなければこちらから干渉することも特に無い。あとは見つけた食料を運び込む人員が要る、新鮮な肉が手に入った自分にとっては不要だが。いや、最近肉ばかりだ、栄養バランスを考え何かこの世界の郷土料理でも作ってもらうことにしよう。暴飲暴食や食べ残しは好ましいものではないが、味には括らない方とはいえ食べるのならば美味い方がいいに決まっている。残留組は10人と少し、ただし負傷者と救護者が多分に含まれており実際に動けるのは数人に過ぎない。食料を運ぶだけの往復の単純作業にこっちが時間をかけてまで従事してやるつもりは無い。そうするとプラン通り上からヒトを呼んで来てもらうしかないだろう、ただし数日はかかるか。もう少しまともに動ける残留組の人数を増やせるよう要請したいところだ。


 ちなみに、肉だが学園の倉庫と先ほどのムラの倉庫から香辛料を拝借した為に劇的に食事の質が上がっている。ある意味、一番これが個人的に嬉しかったりする。有象無象の命などよりも余程自分の利益になっている。かつての西洋人が胡椒に黄金と同じ値をつけたのも分かるような気がする。まったくヒトというものは罪深い、ただ食べるだけに飽き足らない。その貪欲さこそが本質であり強さの秘訣なのだろうが。


 学園以外から助けられたヒトを見て残留組の面々の表情も明るい。ルオナ女史の説明を受けつつ座って休むムラビト達、発狂していたムラビトは簀巻きのまま端のほうに寝かされている。大分おとなしくなったが今度はブツブツと不気味な言葉を繰り返しており正気ではないようだ。ムラビトの一人が歓声を上げる、何事かと思いフィアに聞きに生かせたところ地上に居る生徒の肉親らしい。非常に運がいいといえるだろう、だがあまりに中睦まじい姿を見せるのは危険かもしれない。皆、親兄弟とは逸れている身。望郷と嫉妬の念が何を仕出かすかは分からない。まあ、頭を悩ますのはクイーンの仕事だ。


 一人の獣人の男子生徒が荷物と言伝を持ち出発した。足の速さが自慢らしい、大人数で行軍するよりかは早く目的地まで着くだろう。そしてこれから掘り起こしていくであろうヒトビトに状況説明、学園への誘導をしてもらう人員を募集することにする。


「むすー」


 フィアがあまり乗り気ではないようだ。正直こっちも足手まといを連れて行くのはそこまで乗り気ではないが天秤にかければ仕方が無いだろう。





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