1-7 51の夜を越えて
男なら工作は大好きな筈ッ・・・たとえゴミができても
住居の壁につけた傷が五十個になった。51回の夜を越えてこの世界を生き抜いてきたこととなる。少しずつではあるが当初では知りえぬ事がいくつかわかるようになってきた。
この世界では必ず5日ごとに、少し暗くなってきた夕方ともいえる時間から明け方の間中必ず雨が降る。石の器を外に置いておいた限りでは毎回ほぼ同量の雨が降るようだ。
そして51日経つが、ほぼ気温、湿度とも初日より変化が無い。さらに言えば5日サイクルで天気が変わっており晴れ、曇り、晴れ、曇り、雨となっているようだ。
快適な気候が続くという点では悪くはないがもしかしたら四季というものが存在しないのかもしれない。住む分には大層有難いが少しばかりものさびしい気がするのは日本人の血だろうか。
当初ほど爆発的ではないが、野犬と偶に現れる牙付きを殺害した際に身体能力が向上するのは続いている。疲れにくくなり日々の行動半径が拡大していくのはいいことだ。
ある程度貯まった皮をなめし、現在では革の服とでも言えるような防具を手に入れることができた。もっとも身体能力の向上の性か探索時草木で皮膚を切ることがほぼ無くなってしまったのだが。
武器といえば何を思い浮かべるだろうか、所謂ゲームで一般的なものは剣、浪漫溢れる刀、肉薄し爪や拳で闘う猛者もいる。しかしながら現実は違うだろう。
耐久性、携行性、そして何よりもリーチを考えたときに有用なのは銃だ、もっとも今はもちろんそんなものは無い。弓矢も非常に優れているだろう、サイレンサー開発前は戦後までボウガンが用いられた時もあり音が小さいのも利点だ。ただし現在の道具ではどれほどまともな弓矢ができるのだろうか、不恰好な弓と粗雑な矢ではまともな武器になるとは思えない、いずれ時間があれば作成していきたいところだが。
さて、ともすれば人類が有史以前より使っており、かつて様々な戦場で用いられた槍を作ることとした。
穂先は最初磨製石器のように石を使っては見たが、標的としたなめした皮の的を貫通させることは難しかった。しばらく悩んだ末、ある物を思い出した。
牙付きの牙を返り血を浴びて以降、妙に切れ味の増しているブッシュナイフで削り形を整える。まるで硬い棒を小刀で削っているような感覚であった。1.5m程の木の棒の先端と穂の柄に噛み合うように溝を掘り合わせ、革紐をひたすら硬く幾重にも巻く。水をかけて天日で乾かし、これを何度か繰り返すことで皮が多少なり縮みより結束が固くなる―――今度はなめした皮を貫くことができた。
軽く、耐久性にはやや難がありそうだが使い勝手はよさそうな槍ができた。他に耐久性に優れた鈍器や斧があればいいが、それはこのシャベルで十二分に代用できそうだ。




