1-6 皮から革へ
昨日は岩を切り出し革を漬けるための槽を作ったところで夜が来た、岩は本当に便利な資源だ。もっともこのシャベルがあってこそだろうが。疲れを取るために早々に寝床へ入ることとする。
早朝目が覚める、朝はすこしづつ太陽の光量が上がっていくのでわかる。朝焼け夕焼けもないのが視覚的に少々物寂しい。いつか慣れる日がくるのだろうか。
戦利品であるモンスターの頭蓋を叩き割る、脳漿にあたる液体を確保し槽へ入れる。脳に相当する部分は少なくとも地球の哺乳類とは異なっているらしく光沢を感じるほどつるつるとした黒い球体が鎮座していた。リュックに入っていた安っぽいビニール袋を手袋代わりにして掴んでみれば案外柔らかい、脳漿量の確保のため感触はよろしくないがそのまま潰し液量確保のため水を加えて混ぜた。
少し黒い血混じりとなった脳漿液に噛んで柔らかくしたモンスターの皮を漬け、しばらくしたら取り出して絞る。広げて伸ばし、ある程度乾いてきたところでもう1度漬ける。再び絞り、広げて伸ばすと木の棒を四角く立てたものに引っ掛けピンと張った。
藁やら木片やら煙がでそうな植物を皮の下に置き火をつけて燻す。ついでに木の枝に刺したモンスターの肉も燻してみる、できればベーコンのように塩漬けにした後に燻せればいいのだが塩は今のところ見つかっていないのが残念だ。
この島の規模ではそうそう何度も伐採や燃料代わりに植物を使うことは難しいだろうからこういう作業はまとめて行いたい。周囲を警戒しつつ煙を焚く、燃えないよう気をつけつつも少ししつこいくらいに燻したほうがいいだろう。
一連の作業が終わるころには周囲はもう暗くなっていた、未だに慣れない夜の太陽が周囲を青く妖しく照らす。出来上がった燻製肉をかじってみたところ、何か渋く、苦くなってしまっていた。まあ、味はともかく保存できればいいとしなければ。
皮のほうは正しいく加工できたかどうかはわからないが生臭さはもうないし少し固くなってしまったが多少柔軟性を残してもいる。初めてとしてはまずまずといったところか。
しかしながら疲れた。体は煙くさいし作業は大変であるしあまりやりたい作業ではない。だが必要ならそうもいってられないだろう。
拠点に帰ると不味い燻製肉を齧り水で流し込む。白玉は薄いが飽きない味で水分に富み慣れればなかなかにいける、黄花と共に食べればデザート感覚だ。
食事が終わると洋服の試着をするように体に出来上がった革を当ててみる、どうにも苦労してできたものには愛着を感じるものだ。サイズ的には服を1着作れるほどではないので牙付きの革は胸当てのような形にして使い、野犬の革は脛や腕を守るプロテクターとして加工する。無理やりナイフで皮の四端に穴を開け細く切った革を紐のようにして通して縛って固定するお粗末な代物ではあるが、素人であり革職人でもないため仕方ないだろう。
とはいえ、破れた服のままよりかは幾分みすぼらしさが消えた気がした。