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伝説のシャベル  作者: KY
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3章異聞の3 沈黙の会議場


「「「・・・」」」


 沈黙、黙るしかないこの空気。空元気さえ出ない。



 今避難してきている生徒は200人弱。元々初等部(10~12歳)、中等部(13~15)、高等部(16~18)の定員がそれぞれ200人ずつ(5クラ ス)の計600人だから3分の1にも満たない。


 その上第二講堂からもっとも遠い位置にあった高等部の学生数はさらに少ない。初等部を避難所に近い場所に置いたその効果は大きかったものの現状戦力となりそうな中等部以上の人員が不足していることは大きな問題だ。


 自警委員会は14歳以上から入ることができ多くの種族がバランスよく100人ほどが在籍していた。


 獣人は動きが素早く連絡係や攻撃係、ドワーフは動きは遅いが力持ちなので盾や槌をもつ防衛係、ヒューマンは個体差によって攻撃係と防御係に分かれる。エルフは腕力は無いが唯一魔法が使えるため後衛係であった。ただし魔法をつかう魔獣を倒さなければ宝玉は手に入らない貴重なものなので学生に回ってくる宝玉は小さく威力の弱いものが殆どだった。ただ威力は弱い分オドの消費が少ないというメリットもあった。


 前衛は槍を持った槍グループ、防御係は盾を持った盾グループ、後衛係は先端に宝玉がつけられた短杖をもつ杖グループと呼ばれていた。人数比は60:30:10程であり先程の戦いでそれぞれ1人ずつ死ぬか、行動不能になってしまった。


 今、まともに動ける自警委員は20人程。もっとも一般の生徒も急ごしらえだがモンスターに対する基礎訓練は臨時講義でやっているため増員はできるだろうが、委員でさえ低い錬度がさらに悪い人員しか集まらないだろう。ただそれでもやらなければいけない、もう年齢や種族は関係なく戦わなければいけないのだから。


 武器はここの倉庫にあったはずだった。



 教員は生徒の情報によるとルオナ先生の言ったとおり最後尾で生徒を逃がす為に戦ったり、逃げ遅れた生徒を探したりしていた姿が目撃されていた。一部の教員は我先にと逃げ出したようだが、そういった教員がなぜか優先的に襲われたらしい。子供より大人の方がより食べ応えがあるということだったのだろうか。


 少なくとも今ここにいる教員以外は絶望的か、もしくはどこかに篭城していたとしてもむしろ支援を欲している状況なのだろう。


 現状を打破するには期待できなさそうだった。



 逃げてきたルートによってはほぼ被害を受けていないクラスもあった。モンスターが特定の場所からしか入ってきていないならまだ逃げ遅れてはいるが襲われていない学生もいる可能性がある・・・そうあって欲しい。


 仮に進入地点を塞ぐことができれば校舎を取り戻すことが、いや、これは難しいだろう。ただでさえこの有様なのだから。



 外の景色も理解できない事態になっていた。まず、空が無く静かに光を放つクリスタルのようなものに覆われてしまっているのだ。その上周辺の都市が無かったり、何千年も経過したように風化している部分もある。そう思えばクリスタルに覆われた建物は全くそのまま残っているらしい。クリスタルに閉じ込められた生徒やモンスターを見たという証言さえある。校舎の周辺を除けば見慣れたほかの建物も存在しない、こういうのがとても心を不安にさせる。


 何もかもが理解不能な事態だった。創造神様のところまでモンスターが攻め入ったという噂も聞いた、何かが起こったことは間違いないのだろうけど。



 モンスターは殆どの証言がファングばかりであった。あとは数件のサーベルウルフを見たというものもあった。仮にこの二種類だけであればこの講堂はしばらくは安心できそうだ。どちらも壁を壊して追ってくるほどの知能は無い。


 ただ、1件だけ黒くて大きな影を見たという証言があった。おそらく何かの見間違いだとは思う。ただ不安要素の1つにはなってくる。



「何か、意見のある方はいますか?」


「「・・・・」」


 結局のところどうにもならない状況を再確認しただけだ。理想はモンスターを倒し追い出すことだがそれが叶うはずも無く仮にできても多くの犠牲者が出る。外部からの助けも期待できない。そもそも意見をまとめれば、この学校自体が外界から隔離されている可能性も高い。そういうまとめをした直後なのだから、皆無言でも仕方が無いか。


「・・・とりあえず、今ライル先生に占拠されている倉庫を開け、当面の間は第二講堂を守り様子を見るということでいいでしょうか?」


 もしこの学校自体が隔離されているようならば、しばらくここに篭っていればモンスターも餓死してくれる可能性もあるのではないか、ということも小声で付け足す。希望は大事だと思う、それが僅かでも。倉庫には全員が1週間生きていけるだけの水と食料が保管されている。人数が減った今なら一月持たせることもできるだろう・・・その後どうなるのかは考えないことにしておく。


「「「異議なし。」」」


 あとは追加の意見として仮に逃げ遅れた生徒が封鎖しているドアに辿り着いた場合、モンスターの姿があまり見られなかった区画については警戒しつつ一時的にドアを開け受け入れるといったものが可決された。


 とりあえずの意見はまとまった。学生のできることなんてこんな所だろう。


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