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伝説のシャベル  作者: KY
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1-4 拠点作り

秘密基地は浪漫、ゼッタイ。ダンボールで小さな家のようなものを作ったことのある人は多い筈ッ・・・

明け方とでも言うのだろうか、徐々に青い光は薄れ太陽は輝きを取り戻す。周囲が明るくなれば砂漠自体の発光は案外気にならない。


流石に不寝番のせいで疲れてはいたが、安全な寝床と食料を探さなければならない。取り敢えずは獣の残った生肉を喰らったが、衛生的にはよろしくは無いだろう―――もっとも生肉生水をすでに喰らってしまっているし今後もそうせざるおえないだろうが、こればかりは死んでも諦めるしかないだろうと男は思っていた。


島に再上陸した男はまず昨日のオアシスへと向かい喉を潤し忘れずに水を汲んだ。そしてまずは大きなオアシスへと慎重に足を進めた。異形に近くの砂漠で襲われたということはこの島にも生息している可能性があった、その意味では昨日警戒せずにオアシスへと向かったことは危険だったといえる。


オアシスは実に広かった、直径で言えば2キロはあるだろうか?警戒して見れば案の定異形の姿があった。昨日遭遇した奴に似てはいたがとはいえサイズは小型犬程度であり、以前の異形のような大きな牙も持っていなかった。5匹ほどの群れで水を飲むと共に、鼠のような動物を口に咥えていた。口から覗く牙は鋭いが、あまり大きくは無い。


さて、どうするか。未知の敵と相対するには情報が足りない、ここは慎重に―――とはいえ。これから寝床も探さないといけないし散策も必要、何より食料が無ければ死ぬだけ。次の獲物がいつ現れるかもわからない。


・・・こちらかあちらのどっちが餌となるのかはわからないが。


勢いよく飛び出した男は自分の全力の速度に驚くが、あえてスピードを上げる。異形の一匹がこちら気がつき牙を剥いてキシャーという音と共に威嚇してくる。こちらが餌なのか、だが気にせず重心を落としつつシャベルを薙ぐ。想像していたよりも抵抗無く剣先が頭に伸び、上顎から上を跳ね飛ばす。


動きは止めない、鼠のような動物を咥え逃げるか迷っているような2匹目にシャベルを叩き付ける、が焦り過ぎた。踏み込みも甘い。異形の前の地面を叩く。好機と見て獣が飛び掛ってくる、地面を穿ったシャベルを跳ね上げるが柄で受ける形となり懐まで接近を許してしまう。


―――恐れるな、犬への対処は握りこぶしを喉に突っ込んでやることだ。噛み付かんと開く大口に右手を突きこむと異形はもがくが噛み付くことができない。左手のシャベルを掲げ把手部で額のルビーのような感覚器官を叩く、叩く、右腕にも力を込め頭蓋まで叩き割った。


息を荒く吐きながら見れば残りの3匹は林へと逃げて行ったようで姿は消えていた。またあの違和感が亡骸から体に入ってくる、前回より遥かにマシだが体が暑くなり、猛烈な飢餓感が襲う。


ただし今回は理性は残っていたためリュックから練炭とライターを取り出し焼いてみることとする。


結論から言えば、非常に不味かった。そもそも調味料も無い、固くてパサパサしたものとなった。よく焼けば数日程度はもつ保存食にはなりそうだが・・・無論衛生的に焼くに越したことは無い、が。しかしもう今更であるし、不味すぎるのでレアで食べて誤魔化す事にする。異形の口に突っ込んだ腕の傷は早くも血が止まっていた。


椰子のような木に生っている実をもいで口に入れる。ピンポン玉サイズの実の表面の皮は殻のように硬質だが噛むと簡単に割れた。果実は水分が多く、あまり味は無いがうっすら甘い。中心にやや大きい種があるので口から出す、あえて例えればライチに似ている。そんなに美味しくは無いが食用になるかもしれない―――もっとも後で腹を壊したり最悪死ぬかもしれないが考えても仕方がない。


そこそこ保存も利きそうな果物でオアシスの周りにかなりの数が生えている。色から名をとって白玉とでも名づけようか、これは主食になるかもしれない。


リュックに白玉を適当に入れ、獣の死骸も運ぶ。ふと気まぐれに周囲に咲いていた黄色い花を口に入れてみる。美味い、なんというか甘くて柔らかい。島のいたるところに咲いておりこれもいけそうだ、黄花とでも呼ぶか。


気をよくして白い小さな花を口に入れる、想像を絶する程渋い、反射的に噴出すと水で口を洗う。とても食べられたものではない。


クリーム色の山葡萄に似た実を摘む、口が痺れるような感覚。すぐに吐き出すが痺れは1時間は続いた。いずれ果実や花だけでなく他に生えている草等もおいおい確かめる必要はあるだろう。


さて、一応は今日の食料と水を確保できた。妙に好調な体や凶悪な凶器となっているシャベル等々気になることはいくらでもあるが、探索がてら衣食住の住居を探すことにする・・・そもそもこんな状況自体が狂っているのだ。細かいことは気にしてはいられない。


島を簡単に回って見た、先ほどのオアシスが一番大きいが小さなものもいくつかあり、白玉と黄花もたっぷりとあることがわかった。蝙蝠のような姿の小柄の異形も見たが、主に白玉を食べているようでこちらを見ると口に入れたまま飛んで逃げていった。暗闇の無いこの世界には夜行性というものはないのかもしれない。


小型犬のような異形もちらほら、鼠のような動物も結構な数を見かけた。団子虫のような小さな虫らしきものが島のいたるところに見え、食物連鎖の底部を維持しているようだ。幸いというか残念というか、大型犬サイズの異形は見られなかった。


最後に中心部の大岩にやってきた、今まで住居となりそうな場所は見つからなかった。一人である以上どうしても寝ているときは無用心となる、安全な寝床は是非にも欲しい。大岩は見上げるほど大きく存在感があったが、洞窟のような場所は見当たらなかった。


岩に背を預けシャベルを杖にして一息つく、そこで妙に切れ味の良く今も結構深く地面に突き刺さるシャベルを見る。試しに大岩にシャベルをぶつけて見る・・・あっさりと削れた、むしろ掘れるほどのレベルだ。マイホームは自分で作れということか。日が暮れるまでに寝るスペースだけでも削りたいものだ。


しばらく作業に没頭していたところ、4畳程度の洞窟を掘ることができた。入り口をどうするか悩んだが、大岩の一部をうまい事切り出し入り口を塞いだ。こんなの持てるか、と思ったが今の身体能力では拍子抜けするほどあっさりと動かすことができた。壁を穿ち窓のような場所も作る、ここも寝るときには切り出した石を使って隙間を埋められるようにした。


枯葉や土でやわらかいベッドを作れば完成だ。手前味噌だがいい仕事をしたと思う。


改めて大岩を見る。死のうと思い、変なところに落ちてきて、襲われ、勝ち、今がある。この2日だけで今までの人生など比べ物にならない程の経験をした。今、先の展望も命の保障も無いが、なぜだか気分は晴れやかだ。シャベルを持つ手に力がはいる。この岩を、かつての人生の墓標とし、新たな住居とすることに決めた。


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