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伝説のシャベル  作者: KY
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3-2 妖精の実力

とりあえず気を失った妖精を摘んで我が家へと帰ることにした。得体の知れない存在ではあるが先ほどの様子を見るとそこまで危険な相手では無さそうだ。ただし蜂が毒針を持つように小さくても何か武器があるかもしれない、最低限の警戒は怠らないようにしなければ。



マイホームに到着、世界の果てへの遠征は、中心を目指したときに比べれば格段に短かった。とはいえ精神的に疲れたのもまた事実、腰を落として一息つきながら帰る途中にもいだ白玉の実を食べることとする。ほのかに甘く水分に富んだこの実はやはり美味しい。遠征の残りの古い燻製肉もつまむ。全く持って美味しくないが、食料を無駄にするというのはいただけないからだ。食べるために殺しているのだから最後までそれを貫く、つまらないマイルールの一つだが曲げる気はない。


『ぬー・・・』


小さく声をあげ妖精が体を揺らす、起きたか?

目と目が合う、本当に大きな目だ。漫画やアニメのような存在だと思う。だが妙に違和感は無く愛玩動物のような保護欲を駆り立てる。



『!?xxx!!』

「む・・・」


明り取り用の窓から飛んで逃げていってしまった。


まあ、立場を置き換えてみれば気持ちはわからんでもない。いきなり目の前に巨人がいてこちらを見てきたらそれは怖いだろう。



マイホームから出ると妖精が飛んでいった方向を見る。お、珍しいな。朝方に蝙蝠(バット )か。よく見かけるものの基本的にこちらを襲ってくることもないし自分からしても捕まえるメリットも無い小型のモンスターだ。


あ、妖精に群がっている。この島で空を飛ぶ動物なんて虫か蝙蝠(バット )くらいだ。目立っても仕方が無い。



―――だがいい機会だ、いつから埋まっていたかは知らないが仮にもこの世界で生き残っていた種族なのだ。見せてもらおうか、その生存術というものを。


『xxxxx!xxxxxxxx!!』

「・・・」


案外機敏に飛ぶものだ。


『xxxxxxxxxxxxxxx!!!』

「・・・・」


あ、囲まれた。


『xxxxxxxxxxxx!!xxxxxxx!!!!』

「・・・・・」

涙目だ。・・・本当に何も無いのか?



仕方が無い。言葉らしきものを話している以上意思の疎通はできるだろう、奴さんの命はともかくこの世界に関する情報が聞ければそれで御の字というものだ。


腿のプロテクターから骨のナイフを抜くと今にも妖精に襲い掛かりそうな蝙蝠へ向け投げつける。


サッと身を翻す蝙蝠、ナイフは当たらず空を切る。だがそれでいい、所詮は牽制用だ。数メートルならまだしもこの距離ではそうそう当たる者ではない。だが妖精からは距離を置くし蝙蝠たちの注目を感じる。


「GAAAAAAAAAAAAAA!!!」ウォー・クライ


強力なオーラの波動を受け蜘蛛の子を散らすように慌てて逃げていく蝙蝠達、線香の煙を受けた蚊のように落ちてくる妖精・・・なぜ落ちてくる!



ウォー・クライで一時的だが強化された身体能力をフルに使い走り、落下予測地点まで一気に到達。気絶している妖精を手のひらで受け止めるとともにクッションになるよう地面すれすれまで手を落とし救出。安堵の息とともに反動である軽い虚脱感に襲われるがもう慣れたものだ。


手に掴んだ妖精の体はやけに柔らかい。プニプニ、プニプニ・・・そういえば腕が疲れないマウスパッド、水の入ったシリコンボール。かつてはこういう揉み心地のよさそうなものをよく買っていた。



嗚呼、何か癖になりそうだ。

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