3-1 ものがたりのはじまり~伝説の序章~
ようやく喋ります、主人公。今まで説明会ばかりで煩わしさを感じたならすいません。ここからは軽快な感じになるよう心がけますm(_ _)m
さて、どうしようか。世界の果てまで来たのはいいがこの後のことを考えてはいなかった。
とりあえず引き返すことにして大岩の島のホームベースへ帰る道を歩いていると突如として地面が揺れた。体制を低くしシャベルを地面に突き立て耐える。
倒れてしまうのは危険だ。周囲を警戒するが物陰は見えない。未知のモンスターの襲撃ではないようだが。
右斜め前に視線を向けると少し先で砂漠が陥没していく光景があった。足元の砂も穴に吸い込まれるように流れていく。幸いにして結構距離があり自分が飲み込まれることはないだろう。
数分後には地響きも収まり浅く大きな穴が残った。穴の近くの砂漠表層部は流れ落ちていき深層部が剥き出しになっている。この露出した部分もある程度時間がたてば表面が劣化し周囲の風景に溶け込むことになるだろう。
―――気になるものを見つけた。砂漠深層の露出部へと近づいてみる。
これは、フィギアか?
高さ30cm程の人形が逆さまに埋まっていてわずかに足先が出ている。蜻蛉のような透明な2対の羽、緑色の髪、やけに大きい金色の目、4頭身ちょっとの体。顔は怒ったシーンなのか妙に険しいのが気になるが、どう見てもフィギアだ。一体何たってが埋まっているのか。
着ている服はぴっちりとしたワンピースのようだ。逆さまになっているので上から覗けば白い下着が見える。眼福眼福。
この人形も自分のように空から落っこちてきて埋まったのだろうか?
そう思えば親近感も沸くというものだ。足を持って引き抜こうとしたが壊れてしまうのも後味が悪い。これも何かの縁だ、樹脂のような砂漠深層の土を丁寧に取り除いていく。化石の発掘のような気分で作業を行う。傷つけぬよう慎重に、焦らずとも時間はあるし大岩の島までもそう遠くない場所だ。食料の心配もない。
小一時間はかけて大体の部分は削り終えた。達成感と開放感から一息ついて水を飲む。
さて、と。足の部分を掴み持ち上げる。目の前まで上げるとフィギアの髪が重力に従い下に垂れていた。手荷物感覚も樹脂特有の硬さがない。もしかしたらドールのような高級品か?
目と目が合った。互いに瞬きした。・・・互いに?
『xxxxxxxxxxxxxxxx!!!!』
「ぬおっ!!」
驚き手を離すのとフィギアが何か叫びつつ羽を動かし身をよじるのは同時だった。フィギアは落下する体を上手く立て直し地面すれすれを這うように飛ぶと。
『へぶっ』
地面に突き刺さっていたシャベルの柄に勢いよく頭をぶつけて地面に落ちた。
何なんだ一体・・・
―――如何ほど低い確率なのか。この砂漠、しかも埋まっていた小さな存在が地上を歩く男と遭遇するというのは。だが往々にして物語というものは奇跡的に始まる、出会わなければそれぞれの存在は語られることなく消えていくだけだった。
呆然とする男、地に突っ伏す妖精。その傍らに突っ立つシャベルが光を反射しひとり輝いていた。