第三章 地底掘削編 3-0 これまでの簡単なあらすじ
序・一章
不幸と裏切りにより失意のうちに騒ぎにならないよう自殺のために穴を掘ってその中で練炭を炊こうとしていた男だが急に地面が崩れ、目覚めると透き通った結晶質の砂漠だらけの世界にいた。
その世界には男に違和感を与える謎の物体が満ちていた。
砂漠に生える大きな岩が目印となる島を目指し進んでいた男の前に目や鼻の変わりに宝玉のような機関が顔についているサーベルタイガーのような牙を持つ犬型のモンスターと遭遇し殺されかかるがあまりの理不尽さに激怒した男のシャベルを用いた捨て身の攻撃で辛くも勝利する。
モンスターを殺したことにより謎の違和感が男に流れ込み、とてつもない熱を感じた男は自分の身体能力がとてつもなく強化されていることに気がつく。後にこの違和感にして力ある存在を「オーラ」と呼ぶことになる。このオーラにより身体能力が向上し、敵モンスターを殺すほどオーラ量が増えていき強くなっていくことも知る。
大きな岩にシャベルで穴を掘り住居とした男は木の実や花、モンスターの肉などの食料を集め、皮をなめしたり槍や水の濾過機等の道具を作って快適なサバイバル生活を目指す。
この世界の太陽は沈まず、夜になると光が弱まり青く薄っすらとした光で世界を照らす。さらに結晶質の砂漠は暗い中で光るため夜間も闇が訪れることは無い。さらに5日周期で晴・晴・曇・晴・雨と天気がきまっているようだ。
安定して生活できるようになっていった。しかしそれでは余りに詰まらないと思い、一番近い島影を目指して進む事とする。そうしてこの世界を旅して回ることにした。
二章
砂漠を進む男は様々な島に立ち寄りながら旅を続ける。文明の後と思われる朽ちた柱を見つけた島もあり、新たな食料を見つけた島もあり、危険なモンスターから命からがら逃げ出した島もあり、大きな湖をもつ島もあった。
その最中、男は結晶砂漠の特性を知る。それは表層は細かな結晶が砂のようになっているが深層では樹脂のようにぎっちり固まっているということであり、さらに深層の樹脂状の地層に入れたものは時間が止まってしまうという驚くべきものだった。
また、普通の物理法則では説明できない「魔法」を武器とするモンスターとも遭遇した。特定のモンスターの感覚器である宝玉にはオーラを流すとプリズムや偏光板のように反対側からオーラを特定の形に投写し文様を作る。これがどのような作用かは知らないが魔法を発現させる条件となっているようであった。またオーラを体から放出しこの文様の形成を妨げてやれば魔法は失敗することもわかった。
魔法を発現させる宝玉は取り合えず3色見つけた。橙は特定の距離に火を伴う爆発を起こす。緑は着弾すると爆裂する衝撃弾を真っ直ぐ放つ。黄色は近距離から前方へ放射状に電流を生む。さらにはモンスターから奪った宝玉を使えば魔法がこちらも使えることが判明した。
モンスターを狩り、その牙、角、毛皮、骨、そして魔法を放つ媒体となる宝玉を奪うと装備を整える。オーラを故意に放出したり、魔法を使いすぎたりすると体内のオーラ量が減少し身体能力が低下してしまうが使い様によっては極めて便利で強力な戦う術を手に入れた。
力を得た男は魔法の検証のため長らく留まっていた大湖の島を出発すると先へ向かう。砂漠を進めば進むほど島の規模は大きくなっていき、モンスターも強力になり今まで魔法を使ってこなかった種にも変異体として魔法を使い襲ってくるものが現れる。しかしこれらをも退けて進むと世界の中心ともいえる場所に到達する。
そこには巨大で深遠まで続く穴が開いており、砂漠を飲み込みながら拡大しているようだった。淵まで行き下を覗き込めば、今までのモンスターとは比べ物にならないほどの凶悪なモンスターが穴の底に犇めき合い喰らいあっているのが感じられた。
自分の弱さを確認すると今度は世界の果てを目指して進むこととなる。来た道を戻り大岩の島に着くと一時休みを入れた後、遠征の準備を行う。
世界の中心に背を向け、徐々に島影もモンスターの影も無くなって行く結晶砂漠を進む。そして、これ以上は本能的に進めないという場所まで達する。目の前には霞みのようにぼんやりとし輪郭を失っていく世界が見えた。
周期的な天気、あまりに種類が少なく人間の食料となる種の植物が多いこの箱庭世界を「クリスタロイドガーデン」と呼ぶことにした。
●モンスター図鑑
――野犬
サイズは約30~50cm、褐色の毛皮をもつ。中型犬に似ている。感覚器である宝玉はくすんだ赤色で小型。特殊能力は無い。
極めて一般的なモンスターであり5匹ほどの群れをつくり活動する、時には30匹ほどの集団を作ることもある。短いが鋭い牙を持っていて肉食性。不利を悟るとすぐに逃げ出す。小動物を主に狩っているが自身も他のモンスターに捕食されていることが多い。
装備を整えれば1番狩りやすい獲物である。どこにでも見かけ夜間に砂漠を群れで移動していることもありある意味動物性タンパクの主食となっている。
――牙付き
サイズは約60~90cm、黒色の毛皮をもつ。大型犬に似ているがサーベルタイガーのような大きな牙を持つ。感覚器である宝玉は赤色でやや小ぶり。特殊能力は無い。
最も最初に遭遇したモンスターであり特徴的な大きな牙と足にも鋭い爪を持つ。大体1匹で行動するが体の小さな固体は大きな固体と行動をともにしているときがある、親子と推測。小型の動物や群れからはぐれた野犬を食べているようだ。その大きな牙は脅威ではあるが攻撃に使う際にはその大きさが邪魔でかなり無理して口を開かないと噛めないようだ。牙は硬質だがやや割れやすいようだ。削って槍の穂先などに利用している。そこそこ丈夫で大きな毛皮、肉、大きな牙と使用用途が多彩で便利。また、基本的に攻撃性が高く逃げることが少ない為準備がしっかりしてあればある意味1番狩りやすい。ただし大牙以外の牙も野犬に比べれば長く顎力も高く注意が必要だろう。
――蝙蝠
サイズは約15cm、黒褐色の毛皮をもつ。蝙蝠に似ている。感覚器である宝玉はくすんだ青色で極小さい。空を飛ぶ。
夜間にどこでも見かけるが襲われたことはないし狩っても食べられる部分が少なく骨や皮も軽くてもろく労力には見合わない。虫を口にくわえているのを見たことがある。群れは作らず1匹で行動していることが多い。わざわざ捕まえるにも大変であるし近づいても来ないため基本的に無視。
――大口
サイズは約2m~3m、灰色の体表を持ち毛は無い。カバに似ている。感覚器である宝玉は大きく澄んだ緑色をしている。魔法として炸裂する謎の衝撃波を放ってくる。
水深が浅く広い水場を好んで生息している。極めて大型で数等の群れを作り活動している。魚や小動物、他のモンスターを食べているようだ。カバに似ている形だが口の中には大きく鋭い牙が多く生えている。放ってくる不可視の衝撃波は着弾すると炸裂し目標物を破壊する。衝撃波を受け破裂した野犬を食べる姿も見られた。静かに潜水しつつ水を飲みにきた小動物に接近し小さい獲物ならそのまま噛み付き、大型の獲物であれば衝撃波で倒れたところを捕食するようだ。その大きな口に挟まれれば一巻の終しまいだろうし衝撃波をまともに受ければ重傷を負うだろう。見晴らしのよい水辺に群れでいることから倒すにもリスクの高い危険なモンスターだ。
――牛角さん
サイズは約2m~2.5m、黒色の毛皮をもつ。牛に似ている。感覚器である宝玉は大きな赤色。特殊能力は無い。
水牛のような大きな2本の角が特徴、群れを作って砂漠を移動する姿が見られる。島にて植物や虫を食べる姿も見られるが、野犬も食べていた事があり雑食性と思われる。積極的に襲ってくることは無いが1度攻撃するとその固体は怒り狂い群れから離れてでも報復を行おうとする。その巨体と硬い皮はかなりの脅威となりえる。しかし得られる皮は大きく丈夫で加工しやすく肉にいたっては生でも美味しく、モンスターでは珍しく焼いても非常に美味しい。角も加工すれば牙付きよりも上等な槍が製作可能。大きな島から島へと移動しているようであり辺境には住まず遭遇したのは最近となる。
――先生
サイズは約数㎝~1m。様々な体色を持つ。ヒトデに似ている。感覚器である宝玉は透明。放射状に伸びた腕には小さな宝玉がついており色によって様々な魔法を使用する。
ヒトデのような形をしている、腕の数は固体により異なるが5~8本程度が多い。透明度の高い水辺に生息し、水に浮かびながら腕を動かし優雅に泳いだり緩慢に地上を這ったりする。体の中心上部に透明な感覚器を持ち。下部には細かな牙をたくさん持った口がある。棘皮動物門の「ヒトデ」とは異なり感覚器で周囲の情報を把握しより能動的に行動を行う。特質べきは腕の先端についた小さな宝玉であり橙色の宝玉周辺からは火を伴う小爆発が、緑色の宝玉からは大口の1割ほどの威力の衝撃波が、黄色の宝玉からはスタンガンのような電流が走る。体に複数の宝玉を持つ珍しいモンスターであり、魔法により水辺に来る小型の動物、モンスター、水中の魚や虫を気絶ないし行動不能にさせ覆いかぶさるように獲物を捕食する。なぜ先生と呼ぶか、それは魔法の使い方がこのモンスターのおかげで判明したためだ。先生がいなければこの先大変な苦労をしいられただろう。ちなみに素材としては使い難い、皮質はゴムのようで渋みが強く、毛の無い角質のような表皮は硬いが脆くて剥がれ易く加工には向かない。ただし柔軟な組織は緩衝材として有用。身は極めてうっすらと蟹のような味がする。
尚それぞれには魔法を使えたり身体能力がやたらと高い亜種も存在する。
●魔法発現成功の条件
魔法の簡単な性質をまとめると以下のようになるだろう。
1、魔法はオーラを決められた方向から宝玉に注がなければ発現しない。
2、魔法の威力、射程などは宝玉により常に一定である。
3、宝玉は体より20cm以上離すと魔法は発現しない。
4、同色の宝玉でも距離や威力等で微妙な個体差が生じる。
5、魔法を同時に、また連続的に使うことができない。
6、文様が完全に描かれなければ発動せず干渉作用に弱い。
●男の装備・特殊技能(魔法)
○ブースト
オーラを体中にみなぎらせ一時的に身体能力が上がるが一定時間後反動がきて身体能力がしばらくの間低下する。
○ウォークライ
ブースト以上にオーラを全身にみなぎらせた後、叫びながら敵に向かい放出することで魔法の文様が乱れ発現を防ぐことができる。周囲のモンスターに自分の存在を気づかれる。
・シャベル
敵モンスターの血を吸いまくり、もはや黒光りしているシャベル。丈夫で剣先の切れ味も悪くない。血を吸えば吸うほど重量と破壊力が増していく。作業にも戦闘にも重宝するメインウェポン。
・ブッシュナイフ
鉈とナイフの間の子のようなものでこちらも数多のモンスターの死と血で重く、頑丈になっている。
・スリング
皮製の投石紐、片方に指を通す輪があり中央に石を入れるポケットがある。石を中央に配置、紐の両端を持ち振り回して手を離せば石だけ飛んでいき紐は指に引っかかり手元に残る。訓練によりかなり遠くでも当てることが出来る。
・6スター・リボルバー
リボルバーの銃弾の変わりに、6つの爆発する射程距離が2~7mと異なる橙の魔法の宝玉を円形のシリンダーに埋め込んだもの。魔法は20cm以上離れると発動しないことを逆手に取りシリンダーの一番下に位置する宝玉のみ反応し魔法が発現する。距離に応じシリンダーを回し適切な宝玉を一番下に来るようにする。銃身は不要のため骨で作ったナイフを代わりに配置し急な接近戦に備える。
・ヘッドギア
緑の宝玉が額の部分に埋め込まれたモンスターの皮と骨で作られた頭部用防具。実用性は無いが角も付けている。
・篭手
右腕用には射程距離3mの橙の宝玉、左腕には電撃を放出する黄色い宝玉を埋め込んである。
・鎧
なめした皮を貫頭着のように簡単に加工した胴着の上に牛角さんの頭蓋骨で作った胸当てや骨や厚い皮でできたプロテクターで補強。
・腿あて、脛あて
皮と骨で作られている。骨のナイフを差し込めるようになっている。
・その他防具etc。
モンスターの皮や骨、牙などで不恰好ながら防具やナイフ等の小物を作ってある。運搬用の袋なども皮を利用して作られている。