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伝説のシャベル  作者: KY
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2-33 世界の果て

 歩けば歩くほど、進めば進むほどに消えていく。島影も、砂漠を彷徨うモンスターも。


 小さな島からより小さな島へ。旅は続く。



 世界の中心へ向かう旅はある意味で容易だったとも言える。進めば進むほど大きく豊かな島へ着く可能性が高かったこともあるし、モンスターがどんどん凶悪になってくるといっても資源や食料の確保は容易であった。


 今はどうだ。水は5日ごとに降る雨を必死になってかき集めて糊口を凌いでいる。草木の生える島も随分と減ってきている。ただの岩や乾いた砂だけの小島も多い。もちろん例外的にやや大きな島も見えることがある。だがヒトデ先生や大口がいたような島には遠く及ばないものであるし生息する動物も小さな虫ということも多い。


 先に希望があれば困難を進むのも難しくない。しかしどんどん減っていく島に緑、ゴールは本当にあるのか、無駄なことをしているのではないか、果てというものは永遠に続く砂漠なのでは無いのか。思考は悪いほうにループしがちだ。



 だが元より決めてある備蓄の消費量までは歩き続けよう。何も無いために危険も少ない。野犬ですら時折単体で我が物顔で闊歩しているのが見えたくらいだ。もっともそれを見たのも随分と前になる。だが警戒を緩くしその分進行スピードに当てているため随分な距離をすでに進んでいるはずだ。




 備蓄が心もとない、あと数日の間に見つからなければ撤退するしかないだろう。どう考えても苦しむであろう餓死だけは勘弁したいところだ。焦る足は速度を出すが体力もすり減らしていく。心なしか進むにつれて降雨量も減ってきたように思える。熱中症や脱水症状になってもここには自分だけだし解決方法も無い、自分を労わるのは長く生きる秘訣だろう。


 疲れてくればどうしても視線は下を向く。気をつけることは目印が乏しい中でも真っ直ぐ進むことだ。定期的に結晶砂漠の土を掘り目印とする。振り返ってみればどれほど自分が曲がって歩いているのかが分かる。効き足ほど強く大地を踏みしめるのはどうしようもないことだ。



―――足を止める。


―――いや、止めずにはいられない。



 進めないのだ、これ以上は。本能が囁く、これ以上は何も無いのだと。目の前の景色は徐々に霞み、そして認識できなくなっている。小石を投げつけてもぼんやりと境界が見えないほどゆがむ風景に溶け込むとその先は分からない。進もうにも、目をつぶって突っ込んでやろうと思っても駄目だ。進めないのだ。これ以上進めば存在が否定される。だからここに今存在している以上先へは決して行けないのだ。



 あったのか。ここが世界の果て。




 この世界は閉じられた世界か。一定の範囲の中に閉じ込められ、そこでしか生きていくことができない。だが一定の温度、定期的な天候の変化、少ない植生だが食用や有用な植物の多さ。動物も牙を人間に向けるような凶悪なものはいないし虫も種類があまりに少ない。例外はモンスターだ、これだけがこの世界のイレギュラーに思える。仮に奴等がいなく、砂漠に浮かぶ島々ではなく大きな大陸であったとすればここは極めて過ごし易いぬるま湯のような世界であったはずだ。



 人間に都合が良すぎるこの世界に少々の不快感を感じる。水槽の中の魚か、よく言えばビオトープに飼われた小動物か。



 この世界の名前を思いついた。世界が1つで無いと知った、なら名前を考えるのも不自然ではないだろう。




―――――「クリスタロイド・ガーデン」



 この世界の名前。結晶質の砂漠に覆われた、壊れた箱庭。



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