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伝説のシャベル  作者: KY
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2-29 縮められたバネ。飛躍

倒したヒトデ先生から流れ込むオーラの熱、普段は気を高揚させるが妙なハイテンションとなっていた今は逆に冷静さを取り戻させた。


―――何たる様だ。


考えれば反省点は多い。まずルーチン通りにいけると妄信した安易な思考。非常時の保険。撤退のタイミング。もう少し上手くやれただろうという思いは強い。


そして先ほどから本能が警鐘を鳴らしている。周囲の生物がこちらへとにじり寄ってくるような気配。野生動物がその気配を隠し生きているこの島で大声で叫びつつオーラを垂れ流しにしていればそれは目立つ。住宅街を歩くチンドン屋のようなものだ。


さらに先ほどのブースト、いやウォー・クライの反動がじりじりと来ており体が徐々に重くなってきている。ヒトデ先生の緑の宝玉だけ穿り出すと本格的に体が動かなくなる前に体に活をいれ身を低くしつつ砂漠の拠点まで撤退することにした。




なんとか砂漠のシェルターまで撤退することに成功した。体は重い、反動だけでなく疲労も随分とたまっている。装備を脱ぐことすらせずに安全な場所で横たわると瞼が降りてくる。


眠りに入ってしまう前に今日の事を考える、命題はもちろんウォー・クライだ。


感覚的にはブーストの出力を全開にしたようなものだ。一時的に力が漲り今回窮地を脱することができた。しかし今回は敵モンスターの魔法を阻害できたところに一番の価値がある。


ある程度のオーラの流れをぶつけてやれば魔法の発現を阻害することができる、もっとも自分もその間は魔法を使うことができなくなる。干渉に弱い魔法の性質が明らかになっているところだ。上手く訓練しオン・オフを切り替えれればタイミングよく相手の魔法を阻害できるようになれるかもしれない。どれくらいのオーラで魔法を阻害することができるのか、放出の開始と停止のタイミングなど考えるべき事は多い。


景気よくオーラを垂れ流せば確実に魔法を止められる、しかしその反動で今は疲労困憊だ。拠点が近くに無かったり連戦が予想される場合ではこれは危険だ。効率的に魔法を阻害し、かつ反動を最小限に抑えられるよう努めなければなるまい。理想は振るわれた剣の切っ先を逸らすかのように一瞬のみ放出を行い魔法を止めることだ。


今回新しく見つけたこの技術、ブーストの発展系で内容的にはジャミングのようなものではあるが、「ウォー・クライ」という名前でいいだろう。鬨の声を上げ相手を怯ませつつ突っ込んでいく、しかもオーラを放出すれば周囲のモンスターも何事かとこちらを向いてくる。蛮勇に近いかもしれないがそれもまた一興か、もとより死んだ身と思えば危機的な状況の時くらい楽しんでいきたいものだ。


奇妙な確信であるが死の影が濃く自分を襲うほどより猛り、死中に向かい突き進んでいくのだろう。だがへたに逃げるよりは活路が見えるのかもしれない。運命というものは案外捻くれ者だと思っている。




翌日起き上がれば随分と寝坊していたようで昼のようだった。少々体がだるいが喉を潤し腹を膨らませると手に入れた緑の宝玉の性能試験を行う。


緑の宝玉、不可視の衝撃弾を放つ魔法だ。射程距離は30m程度、しかし少しずつ衝撃弾の威力は減衰していくため距離が短いほうが破壊力は高い。着弾すると圧縮されていた空気が解き放たれるように爆裂する。爆発の魔法に比べれば殺傷力は低い、だが決められた距離しか爆発を起こせない橙の宝玉に比べ自由度と命中率は高い。


他の2色についても考えてみる。


橙の宝玉、火を伴う小さな爆発を約3m先に起こす魔法。破壊力は高いが融通が利かない、また爆発予想地点に密度の高い障害物や生物が存在する場合不発に終わる。


黄の宝玉、30cm先から前方方向へ拡散する電流を流す。こちらも丁度30cm前方の発現開始地点に密度の高い障害物や生物が存在する場合不発に終わる。拡散する電流は1m程度までしか破壊力が期待できず長距離戦には不向きだが拡散するため命中率が高く急に接近された場合の牽制や近接武器で止めをさす前に動きを止め隙を作るのに重宝する。


尚、緑の宝玉はヘッドギアの額の前あたりに装着した。両手が自由なのも強みだ。それに爆発や雷撃では視線がふさがれるが不可視の衝撃弾ならその心配は無い。



―――装備は整った。先へ進む術も手に入れた。ならばそろそろこの島にも別れを告げよう。




あくまでも経験則にすぎない。だが歩いていくと必ずではないが、島からより大きな島へと進んでいく傾向があることに気がついた。いくつか小さな島を経由することもままあったが、大きな島というのは遠くても存在感があるし近く見えるためだと思われる。


進むごとに大きな島へと徐々に近づいていく。統計をしっかり取ったわけではないが、多少右往左往ふらついても進んでいる方角は実は1箇所なのでは無いかと思う。



それはすなわち、この世界の中心だろう。

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