2-27 その威力は・・・
装備をつけ終わると最後にモンスターの固い骨や牙の部位で作られたナイフをプロテクターに作られた切れ込みに収める。ブッシュナイフで削り、先端を入念に尖らせたものだ。刃の部分は石にこすりつけ削ったものの碌に物は切れないだろう。
だがそれでいい。そもそもナイフというものは突いて使うものだ。振り回し相手を切りつけたとしてもその傷は浅い。
西洋剣のように叩ききることも刀のように薙ぎ切ることもナイフでは難しい。逆手でナイフを持つのは刺すという行為では中々理にかなっている。ナイフは槍の穂先としても使えるよう柄に溝が彫ってあるし投げて使うこともできる。
切れ味を二の次で厚く丈夫に作ってあるために差し込んでいるプロテクターの追加装甲としても機能する。中々に万能な装備だ。
シェルターの蓋を開け地上に出る。今日の目的は新装備の性能試験及びヒトデ先生の持つ緑の宝玉を奪うことだ。シャベルを背負い槍を片手に取って島へと歩き出した。
島に上陸し先日狩ったヒトデ先生のいた湖岸まで気配を極力消し移動する。道中に仕留めた野犬の死体を湖岸へ投げ木陰に身を隠す。しばらくするとゆっくりと星型の影が接近してきた。
丁度1m程度のヒトデ先生だ、縄張りを求め空白地帯となったこの湖岸付近にやってきたのだろう。宝玉の色は橙、黄色が1個ずつに透明が3個。前と同じだ、やれる。
初手はスリング、石を振り回して投擲。同時に木の束の楯を片手で突き出しつつ走り出す。
岸辺に来ていたヒトデ先生は爆発の魔法で迎撃、細かな石の欠片を受けつつも突進。右手をやや下に下げ篭手にオーラを注ぐ。
ヒトデ先生の直上で爆発、傷を受け体を震わせているヒトデ先生だが感覚器である宝玉は健在。しかし生き物である以上動揺し僅かに判断が鈍っているようだ、その一瞬で十分。足を止めずに接近し木束の楯を地面に投げ捨てると左の篭手にオーラを流し電流を放つ。さらに激しく体を震わせるヒトデ先生に近づくと槍を逆手に持ち中心部を深々と貫いた。
今回は前回に比べあっさりと終わった。やはり魔法の効果は絶大だ、窮地に陥ったときどんな狡猾な生き物でも動揺し、行動がおのずと限られてくる。たとえ反骨心あふれる凶暴な獣でも、こちらへ我武者羅に襲い掛かってくるという行動パターンに縛ることができる。戦いの流れ、それをこちらが持ち続けるにあたり魔法とは極めて役に立つものだ。
ヒトデ先生の死体を頭陀袋に入れると歩き出す。まだ今回の目的である緑の宝玉は得られていない。
本番はこれからだ。