2-26 スマートな野蛮
今までの装備の主な素材は牙付きと野犬の毛皮をなめし、重ねたりして強度を増していたものだ。しかしそれよりも丈夫な牛角さんの毛皮や骨、ヒトデ先生の素材もある。どちらも時の凍る砂漠の深層へと保管してある。砂漠深層は水を通さない性質もあるから脳漿漬けも可能だろう、砂漠で燻すときは目立つため周囲の警戒を密にする必要があるだろう。だが、まずやることはひたすら、噛む事か。苦行が始まる。
身体能力が上がっていることもあり最初皮をなめした時に比べると遥かにマシだろう。しかし素材自体のサイズが大きいのと強固な牛角さんの皮を噛み続けるのはやはり疲れるものだ。ヒトデ先生の表皮組織にいたっては固すぎて噛めるものでもなく早々に脳漿に漬けている。素材が素材なのでそもそも腐りにくいだろう。
長い作業の末、ようやく装備が完成した。以前のものに比べるとかなり重装備となっている。
頭部には簡易な皮製ヘッドギア、二層構造で間には弾力性と強度の高いヒトデ先生の組織を挟んである。完全に頭を覆うと蒸れて仕方が無いので競輪のヘルメットのようになっている。
胴体は牛角さんの革を貫頭衣のように加工し膝あたりまでカバーする。こちらも2層構造でヒトデ先生の組織や牛角さんの骨を仕込んである。さらに前面には牛角さんの頭蓋骨を使った胸当てを用意した。
上腕、前腕ともそれぞれ皮でできた二層構造のプロテクターを装備、前腕のほうは敵の攻撃を受け止められるようかなり丈夫に作り、そして宝玉を埋め込んである。実のところこの宝玉を埋め込む位置に苦労した。たとえ魔法が発現しなくとも、体に満ちたオーラを宝玉が吸収する性質があるために体に直接つけず、且つ離れすぎないよう皮の一層目を厚くして二層目との間に挟んである。ここの調整に苦労をした。そう考えれば杖という手段も複数人数で役割分担するとしたら有りなのかもしれない。
手は柔らかく動かしやすい野犬の皮で手袋を作る。あまりに固いと動かしにくい、いくら丈夫でも野球のグローブのようではまともにシャベルも握れない。
今まで使っていた皮の服は頭蛇袋として活用する。
装備を体に取り付ける、いままでの猟師のような姿に比べると随分と攻撃的な姿となった。まあ、あえてたとえるなら蛮族だ。
しかしこの文明も無いサバイバルには丁度いいのかもしれない、そもそもなにをもって野蛮と呼ぶのか。ただ自分たちの価値観に合わないものを見下し、野蛮だと言い張り正当性をアピールしているだけに過ぎないと思う。その現状にもっとも即したものがどんな形でありスマートなのだ、現状スマートフォンを持っていたとしても充電も何もできない路傍の石に同じ、文明のぶの字にもなるまい。