2-25 修練
宝玉を如何に使うか、棒の先端に付け相手に向ければ当たりやすいだろう。魔法といえば杖、サイズ的にはスタッフではなくワンドといったものになるだろう。実に分かりやすい魔法使いの装備だ。
なめした革を腕に巻くように固定し篭手のようにする、その篭手に宝玉を埋め込んだ。右腕に橙、左腕に黄色の宝玉だ。杖なんかにしたら槍もシャベルも構えられない、片手を占有してしまうではないか。しかもこれ見よがしに宝玉を見せびらかす必要は無い。ポケットの中に入れていてもオーラを注ぐ方向があっていれば魔法は発現するのだ、日の光に反射する宝玉をチャラチャラとつけてサバイバルに臨むなど自殺行為だ。もっともモンスターの宝玉が光を反射するのはこちらからしてみれば居場所が分かり今までかなり助けられている。
篭手をつけ終わると練習を行う、右腕の橙の宝玉の魔法は、「約3m前方に小爆発を起こす」ものだ。左腕の黄色い宝玉は「約30cm前方から前方向へ拡散する電流を生じる」ものである。後者のほうは電流がすぐに拡散してしまい射程は極めて短い、実際にヒトデ先生が使っていたような使用法になるだろう。
シャベルや槍を振りつつ魔法を放つ訓練をひたすら行う、特に電流の魔法は白兵戦と関わることが多くなるだろう。動きながらも確実に魔法が発現できるようにする。
また今日の目的はもう1つある、それは魔法をどれほど使うことができるか、副作用はあるのかという事だ。故に限界まで体を酷使する。限界を知ることで自分のパフォーマンスを十分に活かせることになるだろう。
青い夜が来た、疲れた体をシェルターの底まで運び横たえ今日の回想を行う。
魔法を使いすぎるとブーストを使ったときのようにしばらく身体能力が落ちた状態になるようだ。だが魔法の一発二発程度であれば気にするほどの身体能力の低下は見られない。そうかんがえればブーストというものは非常に燃費が悪いといえる、いや逆に魔法というものが精錬されているのか。多少のデメリットで大きな力を得られる魔法、今回ここで長期滞在を行ったことは非常に有意義であったといえる。
気になることもあった。ブースト中は魔法が使いにくい、これはオーラをうまく注げないせいかと思ったがどちらかといえば干渉作用に弱い魔法の性質のせいではないか。今のところモンスターの放つ魔法に対しては先制攻撃で先の先をとるか、クールタイムをねらうか、射程外から攻撃するか。回避が、喰らわないことが前提となっている。それは間違いの無い方法であるが避けられぬ状況もあるだろう。
ブースト中に魔法が使いにくいのであれば、それは敵も同じはず。上手くオーラをぶつけて文様をかき乱してやれば魔法を止めることができるかもしれない。ブーストの強化や調節も今後の課題になるか。
後はもっとサンプルが欲しい、ヒトデ先生の中には緑色の宝玉を持っていたものもいたはずだ。これも手に入れたいし、個体によって同じ色の宝玉でも魔法の効果は異なるのかもしれない。準備を行いまた狩りにいく必要があるだろう。
翌朝、残り少ないヒトデ先生の身を穿って食べつつその素材を見る。今までの旅で今着ている毛皮の服もずいぶんと傷んできた、藪の中や戦闘中に爪や牙を受け止めてきたのだから当然といえば当然だ。そろそろ更新時期かもしれない、また皮をなめすのは楽しい作業ではないがさぼって死ぬのはいろいろと格好が悪い。さいわい今回の長期滞在中にいろいろな素材を手に入れることができている。ここらで一旦装備を整えるのも必要かもしれない。




