2-24 単純≒制約
翌朝目が覚めると体の状態をチェックする。概ね問題ないが少々体が重い気がする。昨日の影響かもしれない、調子に乗ってしまったことは事実で言い訳の仕様が無いが、それでもただ魔法を使うだけでなく様々な検証を行っていた。
まず分かったのは魔法の性質は良くも悪くもシンプルだということだ。
オーラを宝玉の決まった方向に一定量以上注げばオーラは宝玉に自然と吸われていき通過する際に濃縮、プロジェクターのように、もっともこちらは3次元の複雑な形だが空間にオーラの文様が投写され現象が生じる、といったものだ。
構造としては実にシンプルで分かり易いが、いくつか問題点もある。
まず決められた方向以外からオーラを注いでも不発に終わる。これは案外シビアであり最初に1発で魔法が使えたのは幸運だった。ヒトデ先生の足についていた方向のまま宝玉を持ち上げたのが良かったのだろう。手で弄んだ後しばらくのあいだ魔法が不発だったのは正直慌てた物だ。ヒトデ先生が足先にわざわざ宝玉をつけていた理由もわかるというものだ。とりあえず今は木炭で宝玉に注ぐべき方向を書いておいた。
次に、発動すれば威力、射程、オーラ使用量は一定となる。敵が遠くにいるからと爆発範囲を遠くにしたり複数倒すために爆発範囲を広げるというのが不可能なようだ。だがこれはある意味安定しているといえ必ずしも欠点とはいえないだろう。
また宝玉は一定以上体から離れた場所からオーラを注ごうとしても魔法が発動しない。棒の先に宝玉を括り付けどれくらいの長さまで魔法が使えるかを調べたところ、精々20cmが限界だと分かった。これはそれ以上はなれると体から発せられたオーラの宝玉に吸収されない割合が増え、宝玉を介して描かれた文様状のオーラと干渉作用を持ってしまうためではないかと思われる。
この干渉作用は別件にも関わる。橙と黄色の宝玉を左右の手に持ち同時に魔法を使おうとしたところ不発に終わった。これも描かれる文様同士が混ざり、干渉しあうことで目的の効果が得られなかったためだと思われる。魔法は同時に使うことができない事が判明した。さらに魔法が成功し発動した際も機関銃のように撃ち続けることは難しいようだ。
爆発の魔法を連続で使い続けようとオーラを込め続けたが、連続的でなく一定のスパンで魔法が発現した。1発目に続き宝玉を介して投射されたオーラだが最初の魔法の影響か文様がかき乱されてしまい少し経たないと発現しなかった。
魔法の簡単な性質をまとめると以下のようになるだろう。
1、魔法はオーラを決められた方向から宝玉に注がなければ発現しない。
2、魔法の威力、射程などは常に一定である。
3、宝玉は体より20cm以上離すと魔法は発現しない。
4、魔法を同時に、また連続的に使うことができない。
5、文様が完全に描かれなければ発動せず干渉作用に弱い。
案外制約は多い、使い方は簡単ではあるがその分自由度はかなり低いように思える。このような性質を考えるとまるで昔の火縄銃のようだ、外的要因に弱く連射も効かないし制約が多い。だが貴重な高威力で遠距離攻撃が可能な手段だ。
デメリットだらけではない、これはモンスターにも同じことが言えるからだ。この魔法という得体の知れぬ攻撃が万能のものでは無いのであれば、今後付け入る隙もあるだろう。