2-18 オーラ
オーラ、そう名づけた未知の力、今まで遭遇したことのなかった五感では感じられない、しかし感じられる違和感。
この奇妙な世界に落ちてきてから常に感じられ、そして初めてモンスターを殺したとき、その奔流は排水溝に水が渦巻き流れていくように体の中に入り込み身を焦がすほどの熱と高揚感を与えた。
それから状況は一変した。体内にオーラを感じるとともに、身体能力の大幅な上昇が見られたのだ。それはモンスターの闊歩する世界では非常に重要なことだった。
大きく立って歩く二本足の人間が脆弱ならばどう考えてもモンスターの良い餌になるのは目に見えているからだ。生き抜くためには「力」が要る。それはどの世界でも同じ、精神的な強さや我慢、世渡りの上手さ、知識等々・・・だがここではまさに単純な「強さ」が必須だった。
モンスターを殺し、喰らう程オーラは流れ込んできたがそれらは最初程ではなかった。また、大型のモンスターを倒したときのほうがその量は多かったが、同じモンスターを倒しても流れ込んでくるオーラは少なくなっていた。
当初はモンスターを殺し食べることでオーラを補充していると考えていた。燃料のように使われ身体を強化しているものだと思っていたのだが。
今の考えでは自分の体がこの世界に適合したと考えている。この世界にはオーラが空気のように満ちている、それらはオーラを持たず保持機能もないこの世界に落ちてきたばかりの体に高いところから低いところへ水が流れるように入り込もうとしてきていたのだろう。だが世界に緩やかに満ちるオーラでは総量は膨大でも体に入り込むには勢いが足りないか、もしくは極めて僅かにしか染み入ってこなかったのではないかと思う。
モンスターは体内にオーラを取り込みその体格以上の力を発揮していたのだろう。それが死ぬことで体内のオーラが開放されたとき、高密度のオーラがこの肉体の壁ともいえるものを突き破り体に入り込んできたと思われる。体がオーラに適応するよう改変を受け、一度できたバイパスにより世界に満ちるオーラを使用できるようになり恒常的な身体能力の強化が得られたのだろう。
しかし、未だにモンスターを倒すごとにオーラが入り込み身体能力が上がっていくことを考えると体のオーラ保持限界はまだ先にあるのか、もしかしたら限界など無いのかも知れない。ただし最近の伸びの悪さや大型のモンスター程オーラの保持能力が上がることを考えれば保持限界を上げるために必要なオーラは加速度的に必要量が上がっていくのかもしれない。
つまり強くなるにはより強い敵を倒さなければならないのか、ゲームの経験値とレベルのようなものか、もっともこちらは段階的ではなく連続的なものになるだろうが。
巫山戯た世界だ。
だが、シンプルなのは嫌いではない。政治家の言い訳も、長ったらしい演説も、要約すればだいたい100文字には収まるではないか。




