2-14 モンスター概論
モンスターについても回想する。そもそもモンスターと自分が定義したのはその相貌があまりに異形だからだ。
まずこの世界、哺乳類に似ている小型の生物はいくつか存在する。だがそれはネズミのような生物が多くすばしっこく利用用途も無さそうなので別段狩ったりはしていない。
遭遇した中では耳の短く顔の平たいウサギのようなものが最大だ。こちらは上手く仕留める事ができたので食べてみた。肉自体は中々に美味しい、しかしモンスターを倒したときのような体に入ってくる熱いオーラの奔流は無い。これはこれで何か物足りなく、皮等の強度もかなり低いため遭遇率の低さと相まりあまり積極的に追う獲物ではない。総じて草食が主体な印象を受ける。
虫のような生物もいる。ダンゴムシ、いや丸まったところを見たことが無いためワラジムシというべきか。最大3センチほど、灰色から白に近い色をしており4対の羽で空を飛ぶものもいる、この種しか見たことは無いが、亜種として水の中にもややザリガニに似た細長い形状と鋏のような腕を持つものが生息しているようだ。魚に類似した生物もいる、髭のなく銀ブナを大きくしたような鯉のような魚だ。大きな水源の周りはモンスターの巣窟となっていることが多くそれらを無視して漁はできないためあまり詳しくは探していない。
爬虫類や両生類、鳥類に相当する生物は今のところ見たことが無い。存在しないのか、進化の過程で淘汰されたのだろうか。
さてモンスターについての考察に戻る。
まず特徴的なのは目も鼻も耳もなく、代わりに顔の部分には宝玉のような器官がついていることだ。また口は大きく裂け、鋭く数多い牙が覗く。毛皮の色は暗めの色調であることが多い。
種類がいくつかいて多様性を持っているようだが遭遇したことのあるものは全て肉食であると思われる。また、集団性を持つものと持たないものがおり群れを形成している種もいる。
倒したモンスターを解体してみたところ、どうやら血に相当する黒い液体と黒い肉が見える。内臓はかなりシンプルだ。環状生物とまではいかないものの口から入ったものは胃兼腸のような紡錘状の袋に入るようだ、袋の中は細かいひだや、小さな牙のような突起も数多く見られる、口で噛み、内臓でもよくすり潰し噛むことができているのだろうか。そして排泄機関は存在しないように見える、消化できなかったものは口から出すのか余程消化吸収効率が高いのか。
血管というものは見えない。だが黒い血は肉から染み出すように出てくる。骨まで黒く、均一で軽く硬い樹脂のようだ。よく見れば中心と側面にはごくごく小さな穴と細い筋がある、神経だろうか。骨は黒いが牙は白いものもいる。
頭蓋は宝玉がある部分に窪みと小さな穴が開いており、神経のような黒い筋は頭の中の黒くて球体をした機関へと繋がっている。これが脳に相当するのだろう。神経は黒い筋のようで骨を通し全身に行き渡っているのだろう。
忘れてはいけないのが宝玉から魔法を飛ばしてくるということだ。オーラが宝玉から模様を描くように放出されるとそれが現象として変換されるようだが、詳細はわからない。また魔法を使ってくるモンスターと使ってこないものがいる、数では後者が多いようだ。
そして生殖器は見られない、いったいどうやって繁殖しているのかは謎でわからない。小さな個体を見たこともあるし何かしらの方法はあるのだろうが。