2-13 植生
考えてみると思うことはまた多い。歩いてきた道のりは長く険しかったがこの2本の足でここまで踏破してきた。
基本的な方針は最も近い次の島影に進むことだった。この方針は間違ってはいないが実のところ正確でもない。
というのもあくまで見た目で一番近い島に進む以上向かう先の島が大きければ近くに見えても別の島影より実際の距離は長いといえる。もっともこの目的は来た道を辿って元の場所まで戻れるようにするためのものであった。
ここでも問題が生じる。到着した島から見える島影が多い場合、前にいた島がどれだか分からなくなる可能性もある。殺風景故に特徴も無い砂漠では迷いやすい。そこで前の島陰のある方角に島近くの砂漠に穴を掘ったり石を積んだりして進むこととなった。
植生はグラデーションのように徐々に変わっていく。白玉の木も黄花も進むごとに減っていく。変わりに固い表皮を持つサボテンもどきや丈夫な殻の固茶の実、そして色は毒々しい紫だが甘い根菜である紫カブ等々多種多彩なにぎやかにな食事を楽しむことができるようになっていった。たまには変なものを食べて腹を下したり痺れて寝込んだりしたこともあったが。
それでも、多種多様であった地球の植生と比べると植物の種類がずいぶんと少ないことが気にかかる。もっとも半分島々が隔離状態にあるからかもしれないが。
だがしかし、地球ではただの原っぱさえも名前の知らぬあまりに多種の草草により構成されていた複雑さと比べればかなりシンプルに見える。例えるなら容量の節約を図ったCG作品を見ている様な気分だ。
もっとも覚えることが少なくてすむし、競争相手のいないせいか食べられる植物の数自体は相対的に多い。恵まれているといえばそれまでではある。
・・・あまりに都合がよすぎることがあると疑ってしまうのは人間の性質なのであろう。社会で生きていれば理不尽や碌でもないことの波にささいな幸運など飲まれてしまうものだった。