2-12 ある到達点~大湖の島のはずれにて~
目を覚ます。四方八方を囲うは透明な壁、広がるは座れる程度の高さを持つ3畳ほどの空間。立って半畳寝て一畳という言葉がある、もっとも贅沢などしようの無い場所ではある。半分ほどは物を置くスペースとして使用している。壁の一角には埋められた食料や水が見える―――ここが今の拠点だ。
屈みながら居住スペースから出ると地表に続く縦穴がある。背伸びをして柔軟体操をする、手足を踏ん張りつつ穴をよじ登っていき蓋を跳ね上げ外へと出る。
目の前に広がるのは今まで見た中で最も大きな島だ。拠点である地下から透明な土越しに見ても、その根というか底は見えずどこまでも地中に広がっている。サイズは直径30kmはあるだろうか。
地上から島を見ればまず驚かされるのは島の中央に位置する70%程の面積を持つ大きな湖だ。もはやオアシスとかそのようなレベルではない。琵琶湖ほどのサイズに相当するかもしれない。その湖岸から少し離れて囲うように草木が生い茂っている。
近頃、用があるのはこの湖であるしこの湖があるからこそ長期の拠点としているともいえる。
広葉樹のような木に生っている茶色く固い木の実をもぐと使い古したリュックに入れる。これは殻が非常に固く歯で噛み砕こうとしたところ割れずに痛くなってしまうほどだ。シャベルを使って砕くと中から黒くて小さな種のようなものが取れる。これはピーナッツのような味がしてなかなかに美味しいのだが、いかんせん脆くて殻を割るときにその衝撃で砕けてしまうことが多く殻の欠片にまじった割れた種をちまちまと取り口に入れることになる。固茶と個人的に呼ぶこととしている。
食べるには面倒な実であるが、この島にはかなり多く生えており入手が容易、そしてそれなりに栄養価もありそうなのだ。だから主食の1つとしてカウントしている。ここらでは見ない白玉の種も島の一角に植えてはいる―――それは地球の植物に比べ驚異的な速度で成長している。とはいえ収穫するにはまだ時間がかかるだろう。
さて、目も覚めた。今から先生に会いに行こう。湖に暮らす先生の存在こそ今この島の付近に暮らしている1番の理由だ。
この島に来るまでにはかなりの日数を経て多くの島を巡った。先ほど出発する意志を掲げたばかりだが回想を始めると感慨深いものがある。思い立ったが吉日、考えをまとめる時間も無駄ではないだろう。