6-22 シンワ~凍結~
さて、大分昔の話となるがただ真っ直ぐに進んでいた巨人の数体は何とかセカイの果ての領域まで到達する。普通の生き物であれば知性が無くともその先へは行けないと本能的に感じ引き返すものであったが、プログラムにより進む巨人は前進し続け、そしてこのセカイと外部の魔力に満ちた空間との間に嵌ってしまった。そこは物を分解したり劣化させたりする物や法則が存在せず、巨人もまた歩くべき地面がなくなったことで休眠状態となった。そうして長い間静かに眠り続けていた巨人たちであったが、セカイ同士のぶつかり合いにより通常の空間へと戻り再び動き出す。
そこでモンスターと遭遇、攻撃を仕掛けてくるモンスターに対して問題には自動的に対処するという命令を履行するために多くの巨人は戦闘、といっても手足を振り回す程度のものだが鎮圧を開始しようとする。そしてごく一部の巨人の簡単な思考回路は自分たちの処理能力を超えていると判断しサンプルとしてモンスターの死体を捕獲した後、創造主であるその『モノ』の元へ、セカイの中心へと全力を持って足を進める事となった。
だが、かつて放逐されセカイの果てまでに至るまでに消費したエネルギーや蓄積したダメージがそれを許すことは無かった。巨人は結局ヒトの暮らすムラまで何とかたどり着いたところで力尽き、敵性生物の来襲をその命が尽きるまで淡々と口から発し続けていた。
すでに処理能力の極度に低下したその『モノ』は予想外の事態に満足に指示を与えることも出来ずにいた。一般的な助言とも言える通達を行ったのみで具体的で効果的な対処法を提示することが出来なかった。外部の情報を収集する機能は比較的順調に動いておりモンスターが近くまで迫ってきている事を把握する。
逼迫した状況と、動き続けることで機能を停止してしまう自己の機能。その『モノ』の思考回路はとある決定を下す。
それが、可逆的な『時間』という法則の凍結だった。なお、永続的な時間の凍結は、結局は自己の放棄と等しいとみなされて実行することは不可能だった。かつて法則まで再現したこの『モノ』にとって機能が極度に低下した人工知能でもこの現象を引き起こすことは可能と判断、エラーの蓄積も已む無しと判断され一時的に現状持てる機能をフル稼働して魔力に働きかけ、この現象を引き起こす。
そうしてこのセカイを覆ったのは『クリスタル』。閉ざしたものの時間を止め、その機能が損なわれるほど劣化すれば脆くなり空気を通して閉じ込められたヒトビトの生存率を僅かだが上げるであろう苦肉の策。そして、このセカイは長い眠りにつくことになる。
かつて空間に与えた影響は遥か先にて思わぬ結果をもたらす。とあるセカイ、とある座標、そこに空間に歪みを作り出した。気が遠くなるほど低い確率、たまたまその時間、そこへ向けて穴を掘っていた愚か者の姿があった。
そう、それが―――。
「・・・俺か。」
シルバーウィークに彼女もいなくて何やってんだろうなーワタクシorz