2-9 水と砂漠とその行方
この世界、見渡す限り結晶の砂漠が広がるが、気候はほぼ一定で常に温帯の初夏のような過ごしやすい気温、湿度が続く。実際の乾燥地帯の砂漠であればこのように旅をするのも、そもそも生活することすら難しかったであろう。
さて、時間がたった汚物の状態を見てみる。適当に砂を被せただけの汚物はかなり水分が飛んでいる、まあこれは当たり前のことだ。次に体力が無い時に浅くしか掘れなかった方でもある程度水分がなくなっているのが結晶越しに見える。そして最後に深く掘った物、これは前の状態からの変化が少ないような気がした。
ここでは5日に1回雨が必ず降る。もちろん大部分は砂漠に降るのであるが、土が水を吸うのを当然と思っていたので疑問に思うことも無かった。しかしながらその実は異なっているのではないか。
ほぼ体調が普段どおりに戻った後、検証のために砂漠に幾つか穴を掘っていく。大体だが1cm、50cm、1m、1.5m、2m程の深さの細長い穴だ。
まず掘っている時点で砂漠の表層と奥では性質が異なることが実感できた。
砂漠の表面、1cm程は乾いた結晶が砂のようになっている。深さ50cm程までは、乾く固い土のようだ。それを超え徐々に深くなっていくにつれ粘り気が出てきたような感覚があり掘りづらくなってくる。1.5mを越えるころにはもはや砂や土などとは呼べない、まるで途轍もなく固い寒天のような、樹脂のような地面が広がっている。シャベルで掘るには土のように攫うのではなく岩を崩すように塊として削っていく必要性があり大いに骨が折れるものであった。
体力をずいぶんと消費し疲れてはいるが検証は行う。それぞれの穴底に一定量の水をいれしばらく様子を見てみることとする。
結果発表の時間だ。まず1cm――残水なし。50cm――残水なし、1m――残水2割、1.5m――残水8割、2m――残水9割以上。
つまり、この結晶砂漠。水が流れるのは表層だけらしい。いや、言うなれば鉄板の錆び、アクリル板の汚れ、樹脂表面の劣化。おそらく元は同じ物だが機能を保てなくなったものだと思われる。降った雨水は大部分が川の伏流水のような形で流れやすい場所に集まり最終的には水を吸う、例えば島々の土や、地面の深くまで劣化しているような場所に流れ込んでいたり、もしかするとどこかにため池のようにもなっているのかもしれない。
仮にこの水脈を見つけることができれば、綺麗で十分な水の確保が容易になるかもしれない。しかもそれが表層にあるとすれば発見と利用も不可能ではないだろう。