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伝説のシャベル  作者: KY
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6-11 来るべき今日~突入~



 シャベルを振り上げる。このクリスタルに覆われたセカイの始まりの地にして終着点。時が経ち数多の悲劇が繰り返されてもこの場所はかつての姿のまま眠り続けてきた。だが、そろそろ目覚めてもいい時間だ。目を覚まさせる一撃は眼前の壁へと振り下ろされた。




「・・・推定可能受付時間残り74356。FR負荷増大・・・」



 時間が動き出す、大魔王獣の姿は見えないがプレッシャーが感じ取れる。残り時間は既に24時間を切っている。作戦を開始、まずは大爆発の魔法を神殿にダメージを与えない程度だが、『ベヒモス』には多少影響を与える程度の場所に放つ。突入前に事前に吟味され決定された場所だ。


 轟音、熱波。それらの余韻が残るうちに叫ぶ。


「があああああああああっ!」


 ウォー・クライ。オーラを撒き散らしここに喧嘩を売る男がいることをアピールする。さらに後方では作戦に参加するヒトビトが太鼓やら鈴やらを全力で五月蝿く鳴らす。小柄な獣人が干し肉や果物をばらまき急いで逃げ戻っていく。一時的に向上した身体能力を使い所定位置のクリスタルの壁に急いで穴を空けていく、これは今日までの間にギリギリまで掘り進めていた通路が何本も作ってあり簡単に開通するようになっている。時間との勝負だ。


「ギャアギャア!」「グルルルル」「キイイイイッ!」 


 まずは近くに居た有象無象のモンスター達が集まってくる。大分それらが近づいてきたところでフィアがピーーーッと笛を鳴らす。


「ギエッ」「ガアアア!?」「キイッ!」


 開通した細い通路からは魔法が放たれてモンスターを吹き飛ばし、大きな矢がその胴体を貫く。今は極力大爆発の魔法とウォー・クライで消費したオーラの回復に努める必要があった。


 狭い通路からはエルフが魔法を撃ち、他の種族はバリスタとまではいかないが大きな石弓を製作して援護射撃を行っている。・・・正直なところ自分の背をこのセカイのヒトビトに晒したくは無かった、恨みを買っている自覚くらいはある。それでも細かいところに括り目的を達成できなければ本末転倒だ、これくらいのリスクは仕方が無いし自業自得。もっともこの身体能力と防具ならば致命傷を負う事はまず無いとは思っている。


 それでも半分ほどのモンスターは攻撃をすり抜け迫ってくる。大盾を、そしてシャベル構えて迎えうつ。雷槍はリーチはあるが振り回すよりも突くという特性上乱戦にはあまり向かない。この腕力でシャベルを振り回して当てれば大抵のモンスターの骨を砕くことが出来るのだ。なるべく頭部を狙いシャベルを縦横無尽に振り回してモンスターを悲鳴をあげる猶予も与えずに処分していく。


 違和感、ぞわりとした感覚に盾に身を隠しつつその場から飛び退く。爆発の衝撃と熱波、だがダメージは無い。頭の上のフィアが小さな杖を向けると反撃を行っていく。オーラが少なくなると勝手に補給してまた攻撃を始めるが回復量の方が勝っている為に問題は無いと判断した。威力は心許ないがフィアのレーダーを利用した正確な魔法攻撃は牽制には十分であった。



 オーラが9割方回復、完全回復ももうすぐだ。あとはなるべく疲労しないようにモンスターを片付けていく必要がある、穴掘りで鍛えられた肉体と体力はまだまだ大きく余力を残していた。



「うわああああ!助けてくれ!」


 モンスター襲撃の切れ間に何人かのヒトビトの集団が楽器の音を聞いたのか逃げてくる、『始原の大樹』の街に住んでいた住人たちだろう。勿論、優先すべきは接近するモンスターの殲滅、視線の先で逃げ切れずにモンスターの牙にかかり泣き叫ぶヒトが居ても先には進まない。勿論後方から援護するヒトビトも同じだ。このような事態も事前に想定されていた、そして積極的に救助する余裕は無いという結論になっていた。非情な様だがそれによりこの作戦が失敗した場合の損失は文字通り致命的な結果になるかもしれないのだ。


 それでも縋る様な目で近づいてきたヒトビトの前でクリスタルの壁にある1角を指差す。そこには通路、そして看板が立てられており、「非常口」と記載してあった。それを見たヒトビトがその場所をめがけて逃げていく。


 正面の破られた城壁を見る、おそらくこの先にある街跡ではもっと多くのヒトビトがこの瞬間にも食い殺されているに違いない。だが、そこまで助ける余力など無いしメリットも無いのだ。目的を見失ってはいけない、どうせヒトというものは出来ることが限られているのだ。その中で一番後悔の少ない道を選ぶほかは無い。



「おじ様!成功だヨ、向かってくるヨ!!」


「ああ・・・わかる」


 

 強大な力がこちらへと向かってくるのを感じる。まだここまでは前哨戦とも呼べない序盤の序盤が終わったに過ぎなかった。



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