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伝説のシャベル  作者: KY
152/203

5-24 疎開集団


 境界を破り空間へと侵入する。そこにあったのは枯れ果てた木々、廃墟、骨。随分と長い時間が経過しているようだ。かつては緑あふれる場所であったのかもしれない。今は荒涼とし乾ききった荒地だ。


「アチャー、カッラカラだネ!」


「水源が無かったのだろう。ナコナコ何か分かるか?」


「・・・いや旦那、ここまで荒廃してるとどこのムラなのかは分からないよ。ただ、形状から獣人が主に住んでいた場所のようだね」


 獣人とエルフは共に森で暮らしていたため他の種族よりも同じムラやマチで共に暮らしていることが多かったようだ。それでも微妙に建築物等の形が異なるらしい。獣人はその身軽さのためかツリーハウスのような住居を好んでいたとのことだった。


 時の楔から開放され出会ったのが水の無い地獄、その状況を考えても見れば憐れに思う。


「次だ」



 幾つかの空間に侵入し内部を探ってみたが、多くの場所で残されていたのが乾いた廃墟だった。一部の空間には上部から染みて来たのであろう水により小規模な生態系が見られたが、その中でのトップは虫にすぎないものだった。


「下を目指す」




 


「ン?おじ様!ちょいと遠いけド、反応があるヨ!」


「え?ボクにはわからないけど、フィア、どこら辺?」


「アッチアッチ」


「んーっと・・・あ、ホントだ!」


 妖精たちの尻尾がくるくると回る。そして示された方向へ掘り進めると、ついに生存者を見つけた。その場所はクリスタルが劣化していない領域にありヒトビトは殆どがクリスタルに全身を覆われている状況であった。


 気になったのは建物等は存在せず、大きな荷物を背負ったヒトビトが必死の形相で歩いている途中の姿で時間が止まっていたことだ。総数は50人弱、獣人が8割程でエルフが2割程、ヒューマンとドワーフが1名ずつ混じっていた。


 とりあえずクリスタルを削りヒトビトを救出する。大分人数がいたためにそれなりに時間がかかったものの特にその中で語るべきところは無かった。ただ、相変わらずこのセカイのヒトビトはこちらの姿を見て驚き大声を上げることだけは確認できた。失礼な連中だ。




 全員を助け出し現状を説明、落ち着いたところで事情を聞いたところ、この集団は住んでいたムラからエルフの首都『フーリル・ユーキー』を目指し移動していた集団と聞いた。元々のムラは小規模なモンスターの襲撃を受けて何とか退けたものの施設が半壊、少なくない死傷者を出しムラを放棄することを決意したらしかった。


 彼らの言うには他にも首都を目指し移動する幾つかのグループが存在していたとの事、そしてその中には獣人の首都『アルカ・キレハ』を脱出してきた小集団もいたらしい。若くて体格のいい者で構成されていたその小集団はモンスターが侵入したことにより混乱の極みにあった『アルカ・キレハ』から王の命令によって創造神から託されていた宝具を『フーリル・ユーキー』まで移す使命をもっていたらしく急いだ様子でここの集団を追い抜いていった事があったらしい。他にも『アルカ・キレハ』から逃げてきたような集団ともすれ違ったことがあると代表者が答えた。多くの負傷者を抱えていたこの助け出した一団は足が遅く、他の多くの集団に追い抜かれていった様だ。だが、そのおかげで今助けられたというのも皮肉な話だった。



 幸いにして食糧などはそれなりに携帯していたようだったのでその集団を引き連れ一度引き返す。気分に任せて穴を掘っているので幾つかの分岐が出来てしまっているので案内役が必要だった。あまりぞろぞろ歩くのも面倒だと思い『ナック』に元王女やロッカー達を置きっ放しにしていたのが仇となったようだ。ゆっくりとした動きの集団に合わせて来た道を戻るのが案外苦痛だった。だがこれも自業自得なので仕方が無い。自分の行動の責任は自分でとる、これはマナーというよりも信念に近いものがある。


 酸いも甘いも自分の行った全ての事柄は自分に帰結させる、他人に渡してなるものか。


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