5-23 天と地の狭間で
「・・・またか」
掘っていた足元に大きな穴が空く。ミルキーフォグ、先の見えない靄を抜けたかと思えば再び劣化したクリスタルの領域にぶつかる。しかも劣化が進み崩落、空洞となっている部分も多くて危険極まりない。大分後方にナコナコ、キグルミ、そして勝手についてくるミレイを置いておき先行しているが掘りやすさを差し置いても気が抜けない作業は辟易とさせる。それも頻繁に起こるのだ。
「おじ様~どーするのサ」
「ちっ・・・止めだ、一度上まで戻る」
「今までの作業がムダになるケドいーのかナ?」
「・・・このままでは逆に時間がかかる」
比較的劣化の進んでいない層まで上る。フィアの指す方向に最短ルートで行こうとしていたのだがどうにも上手くはいかないものだ。敢えて、劣化の進んでいない比較的透明度の高い部分を掘り進んでいく。シャベルを刺し、掬い、押し固めて道を作る。向上した身体能力に物を言わせた力技ではあるが、安全性と何よりもある程度先を見渡せるという安心感の方が心強い。
周囲の様子を確認しながら掘っていくのだが、どうにも気になるところがある。それは靄に包まれた空間、光を透過しなくなったクリスタルの領域が増えてきたようだ。局所的に、偶々通過してきた場所がそのような傾向にあるのかとも思ったが今までの軌跡を思い返してみればそれもまたおかしい。
そもそも、地底を貫かんとする滝の周囲に沿って掘ってきたのは周囲が強固なクリスタルの層であり当時の自分では少々掘り進むのに骨が折れる場所であったからだ。地上付近は確かに劣化している部分も多かった、そしてそれは掘り進んでいけば劣化の無い層ばかりになるだろうという予測があり、概ね道程の途中まではその通りだった。
だが今はどうなのか、大分地上から離れた。深く、深く掘り進んできた。その上で見渡せば劣化した空間が余りにも増えてきている。これは何を表しているのか、近くに巨大な空間があるのか、それとも―――地底が近いのか。
外気に触れている部分から劣化していくのであれば、それは地上だけではない。その底部もまたクリスタル以外の系と接しているのは当たり前だ。何よりも、そのような現象の存在は今まで立ち寄ってきた地底の『島』が証明しているではないか。
先を見通そうと均した足元を睨む。だが、その先にはいくつもの靄の様な領域が転々と視線を阻む、気泡を含んだ水がその先の風景を見せないように。
詰まるところ推測でしか無い、結局はその場へ行って見ないと分からないのだ。
周辺に生命の反応は無い様子だ、だが付近にやや大きい領域の靄が存在する。何か情報を、もしくは面白いものが見られるのかもしれない。行ってみることとしよう。




