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伝説のシャベル  作者: KY
147/203

5-19 一転攻勢


 無様に凍土を滑り転がる。無理やり体を起こし状態を確認、体は打ったが問題はないようだ。


 ただし、今まで多くの攻撃から身を守ってきた牛角さんの頭蓋の胸当てが大きく抉られ縦に皹が入ってしまっており次に衝撃が加えられればあっさりと壊れるだろう。骨である以上、素材の方向というものがある、均一な金属製の道具が骨角器よりも優れている部分だと思う。ただ、重量の割りに強固なこの胸当てには今まで世話になった。



 この濃霧、不安定な足場、多数の敵、見えない強敵。この状況は極めて不利だ、多少のリスクは承知で腹を括る必要がある。オーラの消費が極めて激しい事は承知で大盾を構え、大爆発の魔法を放つ。



 轟音、爆炎、そして熱波を伴う衝撃波がこの閉ざされた空間を嘗め、反響する。目を細め盾の陰から顔を出し効果を確かめる。



 ―――霧は、晴れた。


 足元の凍土は全て溶けてはいないものの一部は泥濘の様相を呈している。それでも進みにくいものの多少汚れてもスケートリンクよりは遥かにましであった。


 そして見える。少し離れた地点に大きな影、『テンタクル』は太いドリルワームの触手をスキーのストックのように用いて凍土を滑っている。これが高速で移動していた方法のようだ。周囲に散開しているアーススターの姿も把握できた、それなりにいるが思ったよりは数が少ない。魔法を使うと宝玉にはクールタイムが必要となる、これはこちらも敵も同じ。厄介な霧と冷気をもう一度吐き出されないうちに勝負をかけたい、大爆発の魔法の燃費は極めて悪く多用は不可能だ。


 『テンタクル』に向けて駆け出す。その巨体の疣からこちらに向けてアーススターを勢い良く射出してくる、この攻撃により先程は不覚を取った。紡錘形態でかなりの速度で射出されたアーススターはそのまま回転し体を深々と抉ろうと突っ込んでくる。


 動きながらも呼吸を整える、見えていれば何という事もない。バッティングセンターで最速の球、これに当てて前へと送り出すには慣れが必要だ。卓球の全力のスマッシュ、反応することさえ容易ではない。だが、今飛んでくる球はあまりに大きすぎた。


 右手に持ったシャベルを振るえば簡単に当たり進路を大きく逸らしながら後方へと飛んで行く。重量の有り威力の高い球ではあるが方向を逸らす程度であればそう力は要らない。接近するこちらを見て距離をとろうとアーススターの砲撃を続けつつ移動を開始する『テンタクル』、初動は遅いものの加速していくにつれ距離が縮まらなくなってくる・・・が、『テンタクル』は泥濘の部分に突っ込みその速度が災いしたのかその巨体が横に倒れた。



 『ブースト』、オーラを全身に漲らせ一時的に身体能力を向上させる稚拙な魔法と呼べるかも怪しい技。だが宝玉無しで使える貴重な手段では有る。凍っている部分を避けつつ飛び跳ねながら接近、体が軽く力が漲る。混乱した『テンタクル』が振り回す触手を潜り、露となった底面、そしてその中央に位置する『テンタクル』の口ごと全力で振るったシャベルで深々と抉る。


「ギギギギギッ!!」


 眼前で響く悲鳴を無視し、その巨体の脇を走りぬけ今度は頭頂部付近へ。シャベルを大きな蒼い宝玉の脇に深々と突き刺し、釘抜きを起こすが如くその巨体から蒼い宝玉を抉り出した。


「ギッ!!!!」


 最大の悲鳴と共に力が無くなっていく『テンタクル』の傷口に攻撃魔法を放ち、武器を振り回して追撃をかける。もはや力なく暴れるだけであった『テンタクル』は、ついにその力を失い息絶えた。周囲に散開しているアーススターは混乱しておりバラバラの方向へと蠢いて逃げていく。



 荒い息を吐き、全身を襲う虚脱感に耐える。シャベルを杖に立って感慨に耽っていると唐突に来た強大なオーラの奔流に飲み込まれていった。  




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