5-13 煩わしき羽虫のごとく
地底湖に侵入し、ドリルワーム達が頭を出したところで大爆発の魔法を放ち、侵入地点から急いで撤退する。追いかけてくるドリルワームを極力殺しつつ安全地帯まで逃げる。体力とオーラを回復させドリルワームが諦めて地底湖まで帰っていくのをフィアのレーダーで確認し、再びちょっかいをかけに行く。これを、繰り返す。そして繰り返し、さらに繰り返す。
兵糧攻めに近い。働きバチに相当するドリルワーム並びにアーススターの数を削っていく。しかしこれは波状攻撃でもある。モンスターといえど、疲労はあるだろう。いつ来るか分からないある程度の戦闘力を持った矮小な存在、これが五月蝿くも何度も何度も攻めてくるのだ。今までこの近辺の領域のトップであり、襲われた経験もほぼ無いであろう存在にしてみればかなりのストレスの筈だ。
相手の戦力は、極めて多い。正面からぶつかれば多勢に無勢、潰されて終わりだ。しかし数の力を有効的に発揮するには戦力の集中運用が必要だ。10対100の戦い、10倍の戦力差でありまともに戦えば少ないほうが負ける。ただし10人の側が100人のうち1人ずつ相手にしたのであれば話は変わってくる。10倍の戦力差の戦いを100回繰り返せば勝てるのだ。もちろんそう上手くはいかないだろうが、勝機は生まれる。
ちまちまとドリルワームを挑発し、少しずつ敵の戦力を削っていく。敵の食糧運搬役も兵士も少しずつ倒していくのだ。こちらは、一人。それに応じた戦いをすべきだ。無理に正面から突っ込み無駄死にをするのは、どうにも格好がつかない。途中でヘマをしでかして死ぬのであればそれは仕方が無いが。
この地底湖を無視して先に進むことも考えた、フィアのレーダーで宝具の反応が無いのだ。ただし、この魔王獣を無視しておいて先へと進んだ結果、背後から絶えずドリルワームが襲ってくるような事態にでもなれば気も休まらない。故に極力倒す必要のある敵だと判断した。
効果が直ぐに現れる訳ではない、しかし地底湖に現れるドリルワームの数が少しずつではあるが減っているのが確認できた。それでもかなりの数が残っているようだが。フィアに地底湖に潜む魔王獣の様子を注意深くレーダーで観測させる、やはりドリルワームが魔王獣から生えているようだ。いや、ドリルワーム並びにアーススターを生み出す怪物と言ったほうが正しいか、やはり女王蜂のような性質を持つのだろう。
だが、それほど大量にアーススターを生み出せるわけでは無さそうだ。そもそも、このクリスタルの地底においてはあらゆる資源が不足しがちだ。アーススターを生み出すにも勿論相応の対価が必要となる、その中で資源を集めてくる手足を削られるのはかなりの損失となるだろう。
ただ、問題は現状こちらから魔王獣に攻撃を仕掛けるのは難しいという点だ。爆雷のようなものでもあればいいのだろうがそんなものはある筈が無い。水中に突入し倒すか、もしくは敵から水上まで出てきてもらうか・・・。
一応、策はある。成功率はそんなに高くは無いだろうがほぼリスクも無いものだ。ただ、実行できるのは多少先のことになる見通しだ。これで駄目ならばひたすら穴を掘り地底湖の水を抜かなければならないのかもしれない、それは莫大な労力を伴うことになりそうだ―――まあ今はただひたすら反復攻撃を続けるのみだった。




