5-12 社会性
体力及びオーラの消耗は少しの休息により回復した。戦いの興奮による気だるさは多少は残るものの問題の無いレベルだ。それより今後どう攻略していくかが問題となりそうだ。
暫く胡坐を組んで思案していたが、どうにもブンブンとフィアが顔の前を飛び五月蝿い。飯をくれと言っているようだ。仕方なく薬指を差し出すと尻尾を巻きつけてご満悦の様子だった。
「ンー、今日も美味しいネ!」
「前から疑問だったが、味があるのか?」
「アマーい果物とかも、美味しいケド。デモそういう舌ベロで感じる味とは別なんだヨ!!ウ~ン、表現ムズカシイケド・・・デモ美味しいモノと不味いモノは何か、こうあるんダヨ!!」
「・・・そういうものか」
虫にどういう感覚で空を飛んでいるか、複眼ではどのような世界が見えるのか、魚にえら呼吸はどうやるのか、仮に聞けてもどうにもならない事は多い。フィアのコレもその一つだろう。
赤妖精も何か興味を持った様子で飛んでくる。
「ねえ、フィア。ボクにもちょっと味見させてくれない?」
「エー!?おじ様、どうするカナ?」
「・・・お前達は自分のシドとかいう不気味なものを埋め込んである場所からしか満足に吸えないんじゃないのか?」
確かそのせいで指を切り落とそうとしたときフィアが慌てふためいていた筈だが。
「ンン~、他の妖精のシドでも、使えない事はないんだヨ。デモ、なんていうかいつも普通のストローで吸っているとしたらネ、他の妖精のシドだト、スッゴク細くてあんまり吸えないんダヨネ~」
「ねえねえ、大きなヒト、吸わせてよ!」
正直この怪しげな行為は許可し難いものであった。赤妖精はまだ完全に味方とは言い切れないところもある。だが、試しに吸わせてみてどのような反応をするのかという奇妙な好奇心が湧き上がり、許可を出した。
「ありがと!・・・うわっ!これ凄く濃厚で美味しっ!!それでいてくどく無くて口当たりもいいじゃないか!!」
どこぞの料理番組のようなコメント、フィアに比べて赤妖精の方が話し上手のようだ。しかし、美味いのか。何とも不味いといわれるよりかは良いのだろうが、何とも筆舌にし難い微妙な気持ちとなった。
「いいなーフィア!これだけいいもの食べていたら大きくなるのも分かる気がするよ。偶にはまた食べさせてくれない?」
「ダメですヨー!おじ様のは基本的にフィア専用なんだからネ!」
「えー、けちんぼ!少しくらいいいじゃないか!!」
ブンブンと飛び回る妖精達、まあ遊び半分なことは分かる。しかし目の前を飛び回るのは邪魔だ。ああ、そうか。
「・・・蜂か」
「ン?」
「へ?」
アーススター並びにドリルワーム、こいつらは水中に潜む魔王獣の働き蜂や働き蟻のポジションに位置しているのではないだろうか。食糧を散開して集め、地底湖まで戻って何らかの方法で魔王獣にまで献上する。そのせいで地底湖のある空間周囲には細いトンネルが多数存在しているのではないだろうか。仮定に過ぎないが、そうであるとすれば。
方針は決まった。




