2-4 沼の島~脱出~
木陰に紛れ体勢を低くしてなるべく大口から遠い沼の淵に近づき穴を掘る。以前のように染み出てきた泥水を濁りが無くなるまで捨てて携帯型ろ過に通し水筒に移す。
加熱処理をしたいところだがとりあえずは後回しだ。せっせと手を動かし空の水筒を満たすとリュックに入れなおす。
かなりの量の水を補充することができたが、どうやら少し欲をかきすぎたようだ、僅かな水音に気がついたときには1匹の大口が沼に潜りつつこちらへ向かってきているのが見えた。
沼は案外深かったようだ、完全に見つかっている。
手早く荷物をリュックに詰めていると大口は何故か10m程の距離で止まるとつけたあだ名の通りの「大口」を開いた。
生き物の中には口から毒液を飛ばしたりとんでもない長さの舌や触手を持つものもいる。何をするかはわからないがリュックを手でつかむと横っ飛びに藪に突っ込む。
このとっさの行動が功を奏した。
跳躍の最中、ぞわりとした、もう最近慣れっことなった違和感が、強烈でまるでらくがきを書きなぐったかのように大口の感覚器に集まったのを走馬灯のように一瞬で感じられた。大口の口内から何かがこちらに迫ってくるのを感じ―――
地面に体がついた瞬間、先程まで屈んでいた場所の真後ろの木が轟音を立てて弾け飛んだ。その衝撃の余波でさらに藪の奥まで吹き飛ばされる。
痛む体を無理やり動かし木々が密集して生える方向へ後ろも見ず飛び込みひたすら走る。炸裂音が後ろから響く。
枝や葉が顔や体に当たっても勢いを止めずに何とか沼の周辺から逃げ出した。
あの巨体ならばなかなか追ってはこれないだろうがそのまま島を飛び出し砂漠まで走り抜ける。周囲に何も見えず、大口が追ってこないのを確かめると地面に大の字に倒れこんだ。