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伝説のシャベル  作者: KY
138/203

5-10 輝く水面



 食糧及び物資の運び出しだが、ドリルワームによる襲撃を考慮すると中々に面倒だ。ある程度の戦闘力か、逃げ足でも持っていない限り輸送すらできない。さらにナックのさらに低層に位置するこの場所は学園や地上からかなりの距離がある。人足を集めるのもこれまた手間となるだろう。


 だがそれでもやるというのであれば、やらなければならない。その一方でこれらの情報をクイーンが精査した結果この近辺の領域のヒトビトを助けるのを止めるというのであればそれもまた一つの選択肢ではあるだろう。


 ナックで休養しつつ物資を運んできる輸送隊と会い、取り急ぎ情報を学園まで伝え早いところ回答するように指示を出す。獣人あたりの体力自慢がメッセンジャーとして急いでも10日以上はかかるだろう。女エルフは不満げな表情をしていたが、理性ではわかっているようで文句は言わなかったし多少なり騒ぐ赤妖精を窘めていた。






 クイーンからの連絡が来るまでの時間に以前気になったドリルワームの掘った穴が複数向かっている方向を探索することにする。奴らの本拠地と言ったものがもしかしたら存在するのかもしれない。そこを叩く事でクリスタルの通路内での安全をある程度確保できるのならば多少のリスクはあるが探索するメリットはある。フィアのレーダーがあるとはいえ、襲撃を気にしながら単純作業を行うのは案外しんどいものだ。



 『ヒージーエ交易都市』まで向かう、すでに道が出来ているので移動はかなりスムーズだ。道中では襲撃は無かったものの、クリスタル内の通路を進む間にもフィアのレーダーが遠くに蠢く複数のモンスター、おそらくドリルワームの気配を感じていた。


 その中でも良い発見があった。それは赤妖精の存在、まだ信用はしては居ないものの敵対関係には無い。その赤妖精にもレーダー機能が搭載されているようでフィアの負担がかなり軽減されていた。女エルフもある程度の魔法が使え、さらに剣も使えるということでファング程度から身を守る事はできそうだった。 





 都市内に到着、レーダーで探らせたところ以前殲滅したにもかかわらず僅かな数ではあるが再びアーススターが沸いているようだ。とりあえずその方向へ向かい再び都市内からモンスターを駆逐した。


 さらに先を目指す。幾つかのムラやマチへ向かう通路もすでに開通している為にキグルミと女エルフの体力を除けばすばやく移動することに支障が無い。途中で見つけた大き目のドリルワームの掘ったトンネルを拡張するようにその行き先を追う。




 案外、深いところまで来たようだ。進むにつれ徐々に襲撃の機会が増えてきた。基本はレーダーで接近する方向を知り、頭を出した瞬間に電流の魔法を叩き込むといった方法で順調に先へと進めている。それでも予想以上に穴は長かった。だが、終着点は見えてきたようだ。フィアも、赤妖精もかなりの規模のモンスターの反応をこの先に捉えていた。


 慎重に進みつつ、ドリルワームにより掘られた穴から先の空間を確認する。


「む・・・」

「オー・・・すごいネ!」


 そこに見えたのは、巨大な地底湖。クリスタルの光を反射し輝く湖面は光り輝き幻想的な景色を演出している。時折波打つ湖面が煌く、ゆらめく波紋が光り輝き芸術的な等身円を描く。後ろから追いついてきた女エルフ達も声を呑んでいる。小さな呟きが聞こえた。

「これだから旅はやめられない」

と。


 感動を覚えたまま、湖を囲むような岸辺に降り立ち改めて周囲を見渡せばその大きさを実感できる。直径3キロはありそうな大きな湖、ドーム状の空間の上からは細く注がれる水の帯が見える。絶景、まさに絶景だ。ピクニックにでも来たらそれはもう良い思い出となるだろう。


 ただし、ここでそのような真似をできるものはいないだろう。



 時折湖面から顔を出すドリルワーム、岸辺の周辺のクリスタルに開けられた幾多の穴、そして感じる圧倒的なプレッシャー。ぞわりとした感覚が水中深くより感じられる。


「フィア、赤妖精」


「ウン・・・アチャー、これはやばいネ!」

「ルヴィって呼んでよ!・・・うわ、来てるよ!!」


「女エルフ、キグルミ、下がってろ。邪魔だ」


「なっ!?・・・いや、わかった」



 背後に駆けていく足音を聞きながらも前方に現れるであろう脅威と相対する。


「・・・おじ様」


「来たか」


「ウムムムム・・・長くて気持ちワルイのが、20はくるヨ!!」



 湖面からドリルワームが鎌首を掲げこちらをめがけて進んでくる。アーススター並びにドリルワームは水陸両方とも生息できるモンスターであるようだ。地上のヒトデ先生は水から出ることは余り無かったが、いやもしかするとこのアーススターの方が原種に近いのかもしれない。地上のヒトデ先生はこのセカイがクリスタルに覆われてから長い期間を経てより水中に適応したのだろう。モンスターはセカイの果てからやってきたと聞いている、地上を荒らしつつ進んできたのだろう。


 だが、真の脅威はドリルワームではない、その更に深遠から感じる力。フィアのレーダーも自分の感覚でも分かるこれは。


―――魔王獣。

 

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