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伝説のシャベル  作者: KY
132/203

5-4 モンスター・ワーム



 物事というモノは、得てして唐突に始まる。それは単に予想外の出来事だからこそ記憶に刻まれるのかもしれないが、それが何であれその新鮮な刺激に対処する以外に無い。



「・・・大分近づいたか」


「ウンおじ様」


「例の変な反応は?」


「・・・相変わらずダヨ、動いているし少し近くを通るカナ?」


「そうか」  


 

 細いトンネルに沿うように進み続ける。この先の都市にはある程度多い生命反応があるらしい、『ナック』を出てからは殆ど生存者と遭遇してはいなかった。フィアは頭の上で寝息をたてている、他の後続組も疲労の感が出ている。そろそろ今日の作業も終了か。


「んー・・・ッテえええん!おじ様っ何か来てるヨッ!正面斜め上ダヨ!!」


「!?ぬっ!」


 何かを削るかのような音、ここはクリスタルを掘ってできた細い通路。フィアの示した方向、靄の先に何かのシルエットが映る。案外大きい。パラパラとクリスタルの欠片が僅かに通路に降って来る。


 そして、それは姿を現した。



 ギュルルルッルッと音を立て姿を現したのは、節を持つ巨大なミミズのような存在。新手のモンスターか、全長は3mを超えそうだ。その頭部をドリルのように回転させながら穴を掘った勢いのまま突っ込んでくる。劣化しているとはいえクリスタルを掘り抜けるほどの威力を持つ存在、相対するこの場所は満足に動くスペースも無い。腰を落とす、盾を構えシャベルをやや短めに持ちその頭部に叩きつける―――軽い、そして硬い!


「おじ様危ないヨ!!」

「なっ・・・おおおっ!?」


 シャベルは見事頭部に当たったものの、それは一番先端の節を弾き飛ばしたに過ぎなかった。やや衝突の衝撃で進路を曲げながらも次の節の先端部が回転を始め間近に迫る。咄嗟に構えていた大盾を横に振るう。幾つかの節が空中でまた分離し―――その内の数個が大きく跳ね飛ばされたままの勢いで元王女に迫る。唖然とし硬直する元王女を引き倒すようにロッカーが飛び込み引き倒し、兵士Aが守るように前へと出る。


 分離した節は、それぞれが紡錘状の形状をしていた。それを迎え撃とうとする兵士Aだが慌てて振られた槍は虚空をきるに留まる。紡錘状の節が空中で蕾から花が咲くように開く、その花弁は5枚、そして感覚器である宝玉が姿を現す。その開いた形は、まるでヒトデ、ヒトデ先生の亜種のようだ!巨大なミミズかと思われたのは驚くことにヒトデ先生亜種の群体だった。


 余所見をしている暇はこちらにも無い、あえて空中で分解したヒトデ亜種はある個体は紡錘状の体でドリルのように回転しながら、ある個体はその体を開きながら散弾銃のように迫り、掲げた盾にぶつかってくる。魔王獣の強固な頭蓋はドリルの形状で迫ってきた個体を跳ね返す。しかし開いたヒトデ亜種が盾にくっつき、その5本の足を動かしながら盾の表面を這うようにジリジリと迫ってくる。



「ああああああああああああっ!!!」


 

 兵士Aの肩にヒトデ亜種がくっつきゴリュゴリュッとした音を立てている。ヒトデ先生は、獲物の上に覆いかぶさり底部の口で捕食をしていた。この亜種もそこは同じらしい。兵士Aの肉が削がれ骨が削られる音、それが悲鳴にかき消されること無く不思議と耳に聞こえた。盾の淵までにじり寄ってきたヒトデ亜種達は盾を持つ手を目指し進んでくる、たとえ強化された身体とはいえ、その掘削機のような捕食行為に完全に対抗することはできまい。劣化しているとはいえクリスタルを削るほどの力を持ったモンスターだ、侮れない。


「ぐっ!!」


 ヒトデ亜種が張り付いたままの盾を前面に投げ捨てる、先程弾き飛ばしたヒトデ亜種も地面を這うように接近してくる、対応が遅れれば体中にまとわりつき溶かすように咀嚼され地獄の苦しみの中死んでいくことになるだろう。


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