5-3 取り囲むモノ
ナコナコの示した方角へとしばらくクリスタルを掘り進める。どうにも、目的地の大まかな方向は分かっても先が見通せない為にどれほどの距離があるのかが分からない。さらに大体の方角があっていたとしても、その角度がずれていただけで目的地の脇を通り素通りしてしまう可能性もあった。これが、中々のストレスともなるのであるが、焦る必要が無いことを再認識しフィアに歌を歌わせ気を紛らわせればそれもまた大した事ではなかった。
だが、ある程度の距離を掘り進めたところで再び奇妙な細いトンネルにぶつかった。それはある程度目的とする方角へと伸びていたがしばらくすると折れ曲がりどこかへ向かっていくようだった。興味を覚えその細いトンネルに追従するよう進んでいく。すると、再び現れたのは似たような形のゴーストタウン。地名を示す表札は発見されなかったもののこれもまた『さかえマチ』周辺のムラだと思われた。
寄り道から元の分岐へと戻り目的地である交易都市を目指す。しかし、しばらく進めば再び細いトンネルとぶつかる。そしてそれは自分たちが今から進む方向へと伸びているようだった。
さらに時間が経過する。ここでフィアがレーダーを最大出力で展開、するとどうにも戸惑った表情を浮かべた。
「どうした?」
「ウーン、このずっと先に結構な反応があったんだヨ!それはいいんだけどサ・・・」
腕を組みブンブンと8の字を描くように飛び回り思案顔をしている。
「ナーンカ周りにもチョコチョコっと幾つか反応があってネー」
「・・・間抜け領域のようにヒトやモンスターが散らばって埋まっているんじゃないのか?」
「デモおかしいんだヨおじ様!ソレ、何か動いてるのサ!!」
周囲を見回す、いや、白く濁った靄に覆われており確認することは難しい。モンスターが生息できるような空間が相当数周囲に広がっているとでも言うのか?いや、劣化したクリスタルの層が多いこの周囲の空間であればそれも有り得なくは無いのだが。
「どの様に動いている?」
「ウーン・・・ムチャクチャだヨ!色んな方向、反応が小さくてあんまり細かくは分からないけれド」
ナックにいたゴブリンたちのように幾つかの層を持った住居で生活をしている生物が存在しているのか・・・兎に角、誤って大きな空洞を掘り当て落ちてしまわないように気をつけて先へと進むしか無いだろう。釈然とはしないが、考えてもどうにもならないのであればそれは仕方が無いことだった。