2-2 柱の島
遺跡とかは浪漫ですねー
―――驚愕した。
石柱に到着した。そして、これは柱であった。
風化が激しく、ひび割れや欠けてる所も多い。しかし、等間隔に刻まれた溝。明らかに太く設計された土台。綺麗な円形。まさしく誰かが「柱」として作った物である事は間違いないだろう。
人がいる、その可能性が高まったことは重大な事案だ。ある意味、もっとも危険な敵と成り得る存在だ。モンスターを狩るように問答無用で攻撃するわけにはいかない、倫理上の問題ではなく集団性と言葉による高度な情報の伝達が可能だからだ。その社会に部外者が1人乗り込んで行ったら、どのような扱いになるかは想像に難くない。仮にうまく取り入ったとしても自由に過ごすことが可能であろうか。
人が存在する可能性も実のところ考えなかったわけでもない、何よりも今人間である自分が此処にいるのだから。
もっとも柱を作ったのが人間であるかはわからない。こんな変な世界であるし、知恵を持ったモンスターの一種であるかもしれない。言ってしまえば人間も知恵を持つ哺乳類に過ぎないのだから。
この柱は随分と古いもののようで損傷も大きい、が、何にせよ知的生命体の存在を考慮して行動した方がいいだろう。具体的にはなるべく出会わないよう、発見されないよう野営の痕跡や靴跡に気をつける程度しかできないだろうが。万一遭遇したり、関わらなければならなくなったときは―――いや。
自分を押し通す。何も悩む必要はないのだ。難しく考えてもどうしようもない、立ちふさがるなら排除する。共存したいと思えばするだろう。裏切られたら倍以上に報復する。ただそれだけのことだ。
心にかかっていた暗雲がすうっと晴れていく。開き直りに近いのかもしれないが、ならばこそとことん開き直っていこう。まだまだ昔の癖が抜けていないということに苦笑する。道徳を守って上手に生きようとして失敗していた「前世」だ、真似をして一体どうなるものか。
次の島影は随分と遠そうだ、小さくぼんやりと見える。実際はこの島のようにただ小さいだけなのかもしれないが大きな島であることに期待しよう。
今日はここの柱の陰で野営だ、早めに寝て明日早く出発しようか。シャベルで土を集めて身を隠せるだけの壁を作る。槍を3本ほど自分の周りを囲うように地面に立て、前の島で見つけた蔓でつなぎ、空になった水筒と木片を吊るし鳴子にする。シャベルはいつでも振るえるように抱える。汗を流せないのは少々不快だが仕方が無い。
石柱に背を預け、土に隠れるようにして目を瞑る。なかなか寝付けないかもしれないが上手く寝るのも技術のうちだろう、慣れていくしかない。空には静かな青い光を放つ太陽がいつしか佇んでいた。