4-16 遁走、力の限り
「奴らは?」
「まとまって動いているネ・・・多分追って来ているヨ!」
「ちっ・・・」
通ってきた道で脆そうな部分に大盾を叩きつけ崩落させ、また走る。自分の直上が崩れたら洒落にならないが仕方が無い、運を天に任せるしか無いだろう。もっとも、ここは地底の中のさらに地下都市の中なのだが。細い通路には都市の名残であろう器具やその朽ちた道具を乱雑に積み簡易バリケードを作る。そんなに時間はかけていられない、別ルートから追ってきている可能性も高いのだ。幸い、身体能力に関してはこちらのほうがゴブリン達を大分上回っている、今も追いつかれていないのはそれも1つの理由となるだろう。
「おじ様キズは大丈夫かナ?」
「マシにはなってきているが・・・当分は使えんな」
モンスターを倒し向上した身体能力、自然治癒も格段に早くなってきてはいる。ただしよくあるゲームのような回復魔法というものも無く、血が早く止まったり単純に傷の治りが早くなるだけだ。傷は相変わらず痛む、だが痛いといってどうにかなるものでもないので我慢するほか無い。泣き喚いてもどうしようもないのだから、随分と痛みには我慢強くなった。もっとも精神的には直情的になっているが。
右手も多少は動くようになってきているが、これは治ったというよりは雷撃による麻痺が解けてきたのと痛みへの慣れだろう。しかしながらまだシャベルをまともに振るえる程ではない。仮に握力が戻ったとしても掌の火傷により思い切り握ることも出来ないだろう。人間足の裏に釘が1つ刺さっているだけでまともに動くことが出来なくなる、これだから傷を負うというのは厄介だ。パフォーマンスの低下は免れない、ピンチでより強くなるなどという事は無いのだ。ただ窮地に至っての開き直りは体験しているが。
後退し始めてから今までに関しては大分運がいい。崩落や無理な行軍により、多少石や岩が崩れて当たることはあってもさほど大きなダメージは無かった。またフィアも頭上から鎧の隙間へと押し込み安全を確保する。
倦怠感も回復してきており痛みはともかく体は動く。基本道中に出会うゴブリンに関しては邪魔な奴だけ盾で跳ね飛ばし後は無視している。フィアのレーダーが有り難い、少なくとも自分のいる場所が着実に上へと向かっていることは分かる。自分だけであったら出口の見えない地下でどの程度の深さにいるのかさえ分からない。
ゴブリン達も基本は地上に近い上層部で生活をしているらしく石器時代程度のモノだろうが石や骨でできた簡単な道具などの生活が感じられる風景が多く見られるようになった、明かりはクルスタルの粉が道に撒いてあり仄かに周囲を照らしている。ゴブリンは案外分業化が進んでいるらしく立ち向かおうとしてくるのは一部の、いわゆる戦士の役割のモノであり他は住処であろう個別の穴に逃げ込んだり遠目に静観していたりする。ゴブリン達にも社会があり、そして家族があるのだろう。
だがそんなものは関係無い。逃げ惑うゴブリンを跳ね飛ばし、子供のゴブリンを踏み潰し、立ち向かってくるゴブリンを殺す。所詮敵に過ぎない、だが感謝すべきことはそれらの存在がもうすぐ地価都市の出口が近いことを教えてくれることだ。明るい光が見える、そのまま駆け抜け地底都市から飛び出した。
地上に出る、ドワーフ達の側とは異なり乱雑に植物が生えており、3本ほどの細い水の流れが天蓋より落ちてきているのが見える。出口には数匹のゴブリンがいたがその脇を足を止めずに駆け抜ける、呆気にとられているようで抵抗は無かった。藪に入り走っているとかなり小柄の野犬が見えた、毛が妙に長く体系も丸い。これも独自の進化を遂げたせいなのか?一目散に逃げていく野犬さえ無視して走る。体の限界を超えても走る、今だけでも保てばそれでいい。
目的地は辺縁部、地下都市はドワーフの側と2分されている。その出口から近い辺縁部はそう距離は無い。
たまに投稿をした筈なのにうまく反映されないときがあります。一体何が原因なのか?
仕事の一環でシャベル(ショベル)使ってきました。肩と腰が痛い・・・最近の運動不足が気になる今日この頃。




