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伝説のシャベル  作者: KY
111/203

4-15 退路


 不覚だ。そう言うしか無い、モンスターが自分のものではない宝玉を使い魔法を使う知能があるとは思わなかった。さらに、今の魔法は電流の魔法だったか、こんな長射程の電流の魔法は初めてだった。握られていた宝玉はきわめて大きかった、大盾についている橙の宝玉と同じくらいに。せめて、爆発や衝撃弾ならば盾で防げたものを―――同種族さえ罠とするその知能と凶悪さを甘く見ていた。


 痛む体を律し何とか踏みとどまる。不幸中の幸いとして後ろへ引こうとした体勢であったため、右足で地面を蹴り左足を上げた状態であったため電流が右腕に持ったシャベルから右足へと抜けたようで致命的な内臓の損傷は防げたようだ。さらに地底は案外暑く完全防備の下の体は中々に汗ばんでいた。だが、痛い。極めて痛い。防具の下の皮膚は焼け爛れているかもしれない、右半身に痺れる様な痛みが走っている。そして、特に右腕が酷い、握力が入らないどころか麻痺したように動かし難い。


 取り落としたシャベルが半回転し剣先が床に刺さる。こちらの様子を見て笑い声を上げる巨大なゴブリン、ゴブリンロードと呼ぶ。その側近と思われるホブゴブリン達が奥からゴブリンの群れを引き連れ突撃してくる。そのホブゴブリンの手にも緑と橙の宝玉が握られていた。


 魔法にはクールタイムが必要だ、基本的に連射は難しい。ゴブリンロードの電流の魔法が再び発せられるまでの繋ぎかあわよくばそれで止めを刺そうと言うのか。


「があああああああああ!!!」


 ウォークライ。オーラを搾り出し放射、魔法の形成を妨害しつつ一時的に体の身体能力も向上する。だが後に訪れる一時的な虚脱状態を考えれば必要最低限の時間にしなくてはならない。ホブゴブリン達は魔法が使えなかった事に慌てて手に持つ宝玉を確認している。


「おじ様!大丈夫!?」

「さっさと乗れっ!!」


 その隙にシャベルを脇まで使い抱えるようにうまく動かない右腕で持つと身を翻し後退、ここは自分の負けだ。右脚にも刺すような痛みが走るが無視して全力疾走し逃げる。後ろから騒がしくも追いかけてくるような気配、首を横に曲げ額の緑の宝玉から衝撃弾を壁に放つ。自分も埋まってしまうリスクもあるが今はそれどころではない。走りぬけた瞬間後ろのほうで何か崩れるような音、降りかかる砂、だが足を止めずに走る。肩が当たり壁を削っても、頭をぶつけ衝撃が来ても足は止めない。


 先程の反動が来る、体が重くなるがそれでも走らなくてはいけない。来るときに付けてきた目印を逆走していく。一度体勢を立て直さなくては。


「ダメだヨおじ様!!待ち伏せされてるヨッ!!!」


「・・・っ分かるのかっ!」


「通ってきたところにスゴイ数の反応ダヨ!!」


 まだ見ぬ道の情報は分からなくとも通ってきた道に関する頭の中の地図とモンスターの反応を重ねれば位置を特定できる、誘導役としては有り難い情報だがグッドニュースでは無い!地の利も無くこの消耗した体での敵の大集団突破は難しいだろう。



「・・・上だ」


  

 入り口に戻れないのであればせめて敵のホームグラウンドから離れる必要がある。迎え撃つにしても十全に魔法が使え気兼ね無く動ける場所でするべきだ。この地下都市にも外への出口が必ずあるはずだ。地上、フィアのレーダーにも生命反応は有るしゴブリン達も食糧や水をそこで得ている筈だ。敵に意図が悟られる前に移動をする必要がある、痛む体に鞭打って進路を変え走り出した。

 

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