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04-2 憑依された光喜くんと 獣化した俊夫くん

12/27 04話4-5をまとめました

 光喜くんが黒い影の前で立ち止まってゆっくりと両膝をついた。


 『コーキ、額ヲ出セ』


 「うん…」


 両手を地面につけて言われたとおりに額を黒い影に寄せた

 影は右前脚を額に乗せぐりっと脚の裏を支点にして何かを押し込むように2・3回、肘を使って回転させる。

 すると脚から額にゆっくりと影が移動する。

 そのまま横に広がってこめかみから耳の方を覆うと、ぐっと上に引っ張られ小さな三角形のものになっていく。


 「おい、お前!光喜に何すんねん!」


 この異様な光景にいてもたっても居られなかったのか俊夫くんが飛び出していった。

 普段スポーツをしていてガタイが大きいから影を吹っ飛ばせると思ったけれど、逆に手のあいた?前足を差し出されると衝撃波のような振動とともに吹き飛ばされて、俺の上に落ちてきた。


 その間にも光喜くんは何事もなかったように変化は続いて、鼻と口周りまで浸食すろと鼻が低くきゅっと小さくまとまり、口の距離が短くなっていく。

 フワッと口をあけ、口を閉じると人の字の形に変化して、顔全体が陰に覆われる。一緒に目が横に引っ張られながら瞬きした目は黒眼からぎょろっとした大きな赤い瞳のものに変わった。

 そしてあとは体中に黒い影がまわってすべてを覆うと、お尻からにゅーっと細い尻尾が生えてきた。


 『フフフフフ』


 光喜くんだったものが影に全身を包まれ、長い尻尾を持つ猫の化け物になって俺達を見て笑った。

 不気味な雰囲気の中に何か黒い闇のような力を感じる。その横では完全に力を吸い取られたクロが影から解放されて倒れている。


 光喜くんの影からゆらゆらと何かが漏れ出す。それに触れただけで寒気と体の中の何かを少しづつ吸い取られるような嫌悪感が走る。


 こいつは…森の敵!


 あわてて体制を立て直し、尻尾を立てて威圧する。一人で太刀打ちできるかわからない。場合によっては森のみんなを呼ばないといけない。


「光喜!?」

『俊夫兄ちゃん、ボクの名前はコーキだよ。間違エナイデヨ!』


 吹き飛ばされて俺の後ろにいた俊夫くんが黒い猫の何かの力によって軽く宙に浮かせる。

 俊夫くんの表情が苦しそうだけど、俺には何をされているのかわからない。

 見えないけれどどこか絞められているからなのか?

 そしてそのまま拘束から外れたのか着地できずに今度はお尻から地面に落下した。


『ボクは闇ノ子二選バレタ存在…我ハ闇、黒猫コーキ。』


 喋り方が変わっていく。

 よくわからんが中身も替わったってことなのか?

 苦しがってる俊夫くんを見ながらどうしたもんか考えていたら…いつの間にか黒猫は見えない力で俺の尻尾を掴んで自由を奪ってきた。


 ”オ前、ボク…俺ガ帰ル道ヲ作ッテモラウ”

 ”何言ってんだよ!俺にそんなこと出来るわけないだろ!だいたい、光喜くんを返すまではお前は返さない!”

 ”嫌ダト言ウナラ従ワセルマデ。”


 黒猫はてのひらから黒い紐のようなものを収束させる。

 まずい、あれはさっきの…体が考えと一緒に反応したけれど逆さに宙づりにされた体が動かない。

 もがくことしか出来ないまま、糸のような針のようなものがが俺の額にさっき光喜くんを操られる原因を作った黒い針が突き刺さった。

 冷たい感覚が一瞬頭を覆ってゆっくりと凍っていく感覚が広がる…

 目の前に黒い霧が現れて俺を…


「ブラウン!大丈夫か!」


 俊夫くんの声で黒い霧が晴れ、意識が回復した。

 凍った感覚が一気に突き抜けるように去って行った。


 ”何故、オ前ハ効カナイ!?”


 同時に俺の拘束が解かれた。なんだよ今の、凍るかと思った。

 なんとか無事みたいだけど今ので体が冷えて体が硬い。いつものちょこまかした動きができそうにない。

 黒猫がまた黒い紐を作り始めた。

またあんなものくらったらたまらない。でもまだ体が温まらなくて脚が動かない。

ヤバい、と思った瞬間、飛び出してきた俊夫くんに強引に横に引っ張られた。


 「あほか!なにボーっとしてるんや!」

 ”ボーっとしてるんじゃないやい!”

 「そうか、吠えれるんやったら大丈夫やな。すまんな。」

 『ソレデ逃ゲラレルト思ウナ!』


 黒猫が今度は俊夫くんのほうに向かって黒い糸を打ち込んだ。でもそれは当たる手前で消滅した。

 それを見てもうひとつ作って撃ってきたけどそれも同じく消滅した。

 当たると思っていたのが当たらなかったので黒猫は一瞬不思議そうな顔をしたけど、すぐに納得したように元の雰囲気に戻った。


 『思ヨリ力ガ有ルナ。オ前、何歳ダ?』

 「お前!15のガキだと思って馬鹿にしとんのか!」

 『15カ…モウ少シ早ケレバ伸ビシロノ大キイ、コノ体ヨリモ素晴ラシイ素材ダッタノニ』

 「お前!ふざけんのもいい加減にしろよ!」


 俊夫くんは俺に唾が飛ぶくらい大声で怒りながら俺を抱いたまま黒猫に突っ込んだ。

 けど、簡単に俊夫くんの体を手のひらだけで受け止め…押し返している?



黒い霧が黒猫の手のひらから俺たちの周りを包んでその勢いで吹き飛ばそうとしている。

 でも俊夫くんの周りを何故か黒い霧は避けて空気の膜ができて、吹っ飛ばされずに突っ込んだ態勢を維持している。

 でも時間がたつにつれ、俊夫くんの勢いがが黒猫の黒い霧の流れに負けはじめ、じわじわ後ろへ下がっていく。

 霧が膜をすり抜けて少しづつ体にまとわりついて寒気がする。


 『人間ノ癖二俺ノ、闇ノ力二対抗出来ルト思ウナ!』


 黒猫が一気に力を解放したのか霧の流れが速く強くなって俺達のまわりを取り巻く。

 抱かれていても足が浮きそうな力と真冬の風のように寒い風に体がだんだん硬直していく。


 「ふざけんな!こんな力に…負けるかぁ!」


 気合いで寒さを吹き飛ばそうとしたのか大声で叫んでいる。

 体を丸めて重心を低くして手のひらで受け止められている肩に体重をかけようと頑張っている。

 俊夫くんの顔が抱いている俺の尻尾にひっつく。それに邪魔しないように尻尾を顔から離そうとしたとき、膜の隙間から黒い霧が漏れて俺たちの顔の周りにまとわりついてきた。

 それを俊夫くんはまともに吸い込んでしまった。


 「くそ!…寒い…寒い…」


 俺の尻尾の毛を噛みながら歯をくいしばって寒さを我慢する。

 でもだんだん俺を抱く手のひらの体温が下がっていく。

 この感覚…さっきの光喜くんと同じ状態、まずい!


 ”俊夫くん!しっかりして!”


 これ以上黒い霧を吸い込まないように握力の弱った手の中から抜け出して俊夫くんの鼻と口を体で覆う。

 でも目の焦点が合ってない。


 ”闇ノ霧ヲ吸ッテヨウヤク洗脳ガ利イテキタヨウダ。サアトッシー、大人シクナッテモラオウ”


 空気の膜が薄くなって霧の風が直接俺達の体に触れる。

 寒さで俺の全身の茶色い被毛が逆立ち、尻尾が丸まって動かない。


 「大人しく…オトナシク…うぁぁ!」


 頭が混乱したのか俊夫くんは体と頭を大きく揺らしながらもがきだして俺は吹き飛ばされた。


 クシュン!


 吹っ飛ばされながらくしゃみをした俊夫くんの口元から何か黒と白の何かが膨れ上がっていくのを見ながら、背中から着地して後ろに一回転して止まった。


 白と黒の毛皮のようなものが出来上がって白いのが両足首から上に、黒いのが首下から体の中心に向かって服の上から巻かれていく。

 それがギュッと締め付けら、服で隠れていた体のラインが現れると、そこに毛皮が定着して体に適した長さに伸びていく。

 首から下がる黒い毛皮は、両手と背中、尻より少し下がったところまでを巻き込んでいく。


 足もとの白い毛皮は、股から腹、胸へと上がって首から口元をおおっていく。

 苦しそうに目ををギュッとつむっで歯を食いしばりながら唇を歪ませていたのが、下から上がってきた白い毛皮によって口元を覆われると強制的に口を開けさせられ、大きく空気を吸い込みながら毛皮に切り込みが入り口元に定着する。

 それが唇を隠すと黒く細くなりながら前に鼻と一緒に少しづつ伸びていく。

 眼の下周りまで白い毛皮に覆われ、布に穴が開いてむき出しになった鼻の頭が黒く染まっていくと、一気にそれを頂点として前に引っぱり出される。


 こめかみから後ろは黒い産毛に覆われながら耳を上に引っ張りながらスポーツ刈りの髪と一体になりながら覆われていく。

 三角に形を変えながら耳が上にぐっと引っ張られると一気に顔の被毛が俺と同じぐらいの長さにまで生え揃う。

 最後に尻から丸まった白い短い尻尾が生えて変化は収まった。


 そこには秋田犬の顔をした黒と白の被毛で全身を覆われた俊夫くんが立っていた。



 黒い犬の獣人と化した俊夫くんは、目をゆっくり開いきながら耳を動かし、手のひらを開いたり閉じたりして今の姿を確認している。そして黒猫と俺を確認するように首だけを動かしてあたりを確認する


”俺…命令を…”


 黒い犬の獣人に変化した俊夫くんが犬語で吠えた。

 どうもさっきのことを考えると黒猫の糸に操られているようだ。

 まずいよ、これはパパにどう言い訳したらいいんだ…

 じゃなくて、それよりここをどうやって乗り切ればいいんだ。

 目の前には黒い犬と黒い猫の影、2人の獣人?とどう戦ったらいいんだよ。

もとはどっちもご近所さんだし…


 ”何故獣人ニ変化シタカハ知ランガ、ソノ歳デ変化二耐エタトハ中々素晴ラシイ肉体ノヨウダ。洗脳モ完了シタヨウダ。ソレデハ貴様、望ドオリ命令ヲ伝エル。ソノ犬ト共二、俺ニツイテコイ。”


 これは大変まずい。このままじゃ光喜くんも俊夫くんも連れ去られちゃう。

 あ、俺もなのか。

 まずいよまずいよ・・・


 ”俺…命令を…”


 あれ?こっちに攻撃してこない。それもさっきから立ちっぱなしで動きもせずに同じこと繰り返しているし。

 違和感がある中、俊夫くんの方を見てみると…

ぴんと立った大きな耳が特徴の秋田犬のような雰囲気の顔がクロにそっくり。


”なんかクロみたい…”


思わず口に出した時、俊夫くんの耳がぴくっと動いた。


 ”何故動カン?コッチニ来イ”

 ”お前…違う。”

 ”ナニ?”

 ”命令、お前、ちびっこ、犬!”


 え、ちびっこい犬って俺!?何で?

 黒い犬は俺に命令をするように命令してきた?

 どういうことかさっぱり解りませんが…


 ”俺の名前、クロ、今、お前、くれた!”


 なんなんだ?俺がクロって名付けたからって…刷り込みがどこかおかしくなっているんだろうか?


 ”お前…ブラウン、命令、しない、俺、動けん。”

 ”じゃあ…、あの黒いのをやっつけて…ください。”

 ”あいつ…倒す…”


 クロは何か言葉を探すように単語の間に時間を空ける。

 俺の犬の言葉は通じているようだけどテレビの衛星中継みたいな妙な間が開く。


”ナンダオ前、何者ダ。”

”俺、クロ、ブラウン…従う。お前…敵!”


 2人とも知り合いなのにまるで初めて会ったような言い方…

 光喜くんも俊夫くんも別人になってしまったのか?


 黒犬と黒猫の獣人が目の前で争いはじめた。

 黒犬は身体能力だけで攻守し、黒猫は何か見えない力で守りながら攻撃する。

 2人とも本気で殺しにかかっている。

 違うって、光喜くんを元に戻さないとダメなのに…

 やめろと言いたいけど、今の2人とも人間離れしすぎて危なくて近寄れない。


 ”俊夫くん!そいつ攻撃したらダメだって。中身は光喜くんだんだよ!”


 その声は届かなかったのか、2人の争いは止まらない。

 なんだよ、こんな時には命令は聞かないのか?そう思ってたらこっちに黒犬が吹き飛んできた。

 あっちも吹き飛んでるみたいだから黒犬に近寄った。


 ”俊夫くん!殺しに行っちゃだめじゃないか。光喜くんが中にいるんだよ!”


 …返事がない


 ”俊夫くん!”

 ”俊夫?…誰?”


 あ、ああそうか。クロって言わなきゃいけないんだった…


 ”クロ!相手を倒せって言ったけど殺せなんて言ってないからな!”

 ”倒す、殺す…一緒、命令、守る”


 言葉の問題…犬語で吠えてるけどまだ全部理解していないのか。

 やっかいだなぁ、どう伝えたらいいんだ?


 『くそ!どうしたらちゃんと伝わるんだ!』

 ”伝わる…話す…ん?”


 クロが何か気づいたのか俺の体をもって体を揺らす。


 『なんだ!ブラウン、日本語喋れるんか?』


 へ…?


 『日本語喋れるんなら始めから言えよ。犬語は今覚えたばっかりやから使いにくいし、単語少ないし、喋りにくかったんや。』


 ???


 今、日本語喋ったよね?それも俊夫くんの大阪弁に近い喋り方そのまんまで喋ってるし。


 『あの…俊夫くん?』

 『俺はクロやって言ってるやろ!』

 『じゃあ…クロ。』

 『なんや。』


 いつもと同じような喋り方をされているのになんでこんなに偉そうに聞こえるんだ?

 俺に命令してくれって言ってたのに逆に俺に命令してくるみたいなの何とかしてくれないかな。


 『光喜くん…黒い猫ををあそこの結界装置のとこまで誘導してほしいんだけど…』

 『コーキを?どういうことだ?』


 今、パッと思いついた作戦を言ってみる。

 結界装置の前に黒猫を誘導して結界を張って閉じ込める。

 それで機械の出力を上げると上下左右全周を結界で囲むことができるから 閉じ込めて、竜王せんせいを呼ぶ。

 光喜くんの戻し方がわからないから最後は人任せだけど俊夫くんが俺の味方と考えるとそれができれば被害は少ない。

 それが作戦かと言われたら反論できないけど今はそれしか考えられない。

 俊夫くんがうまく誘導できなければとか俺が結界を張ったことがないから張れるのかどうかなんて不安的要素なんか考えてはいけない。

 そういうことを犬語でうっかりクロに説明すると…


 『だから犬語は難しいって言ってるやろ!日本語で言えって!』


 また怒られた。パッと見犬の姿だからつい犬語で喋ってしまった。


 あわてて日本語で言い直したけれど、たぶん俺は自信なさげに喋っていたんだろう。

 クロは俺の頭に手を乗せながら俺の目を見ながら、


 『大丈夫や。その作戦でいこう!俺は役割をこなしてちゃんと誘導してやる。お前も結界を作れる。できる…俺は結界の張り方を知ってる。俺はクロ、お前の従者、結界、張り方、伝える”


 段々と犬語に変わっていくクロから俺の中に結界を張れる力を引き出す方法がイメージとして入ってくる。

 百聞は一見にしかずとはこういうことなのか…どこに力を入れたらいとかを感じとれる。

 クロに教えた方法とは少し違うけれど、俺の中にある結界を張るための小さな力の引き出し方が初めてわかった。

 今教わった方法はうまくつかえば光喜くんを元に戻せるかも…


 全く…何が従者だよ。俺が操られてるみたいじゃないかとか思いつつ、作戦のほとんどをクロに任せて俺は結界に全力を注ぐ準備をした。



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