10-10 鬼ごっこ 再び
手を貸してくれる?
気持ちは嬉しいけどどうやって?見たところある程度、枝は動かせそうな感じなんだけどそれではあまり役に立ちそうがないし…
”お主はあの狼の脚を止めれば勝ちなんじゃろ?ワシに自在に動かせるところは枝ぐらいしかない。じゃがお主が得意そうな生き物を操る力、それをワシに向かって打ちこんでくれれば…そうじゃな…根の一、二本ぐらいならお主の力で伸び縮みさせることはできるじゃろう。”
『でもそれじゃぁもしかしたら引きちぎられるかもしれないぜ?』
”ああ、それでもよい。それよりお主のその力がワシにも欲しいのじゃ。最近幹の中に虫食いが入ってのぉ…このまま何もしなければ中に穴が空いてしまうんじゃよ。少しでも強い力を吸収して中の虫を追い出して、穴を回復したいのじゃ。お主のその力、わしには回復に利用できそうなんでな。”
『根の一本や二本なら安いってか?』
”まぁ、そう言うことじゃ。幸い、お主しか意思疎通は出来ぬから奇襲にはもってこいぞ。”
『そうだな…あいつの動きを止められたら俺の勝ちみたいなもんだし…』
”ワシを練習台だと思ってもらっていいぞよ。他にもワシのような樹木がいるのは確かなのだからな。それにお主にはこれからもこの森を守ってもらわねばならぬしな。”
うぁぁ、なんかすごいこと言われてるような気がするけど、これで鬼ごっこが終わるなら、利用させてもらおう。
ようやく打ち合わせ?が終わって鬼ごっこが始まった。まず鬼はシロップから…ってお前捕まえる気あるのか?無駄にうろうろと楽しそうに俺を追っかけるなって。俺が必死で逃げるの見て楽しんでるだろう?手を抜くのはわかるけど…
露骨になめられてるの腹が立つ!こうなったら練習がてらシロップを罠に引っ掛けてやる。
動かせる範囲がいまいちわからないから檜の木の近くまで誘導しないと…と真剣に考えようとした俺がバカだった。単純に俺の後を追っかけてくるシロップは簡単に樹木の近くまで誘導されてきた。俺に集中して周りをいにしてないように見えるシロップの足もとに、俺が檜に力を与えてやると、思ったより大きく、早く動いた。そのおかげでシロップの右脚にくるっと巻き付くと、簡単にバランスを崩して、顔面から派手に倒れこんだ。
「あ!しまった!やりすぎた!」
あわててシロップの方へ飛んで行ったら、ひょいっと起きあがって、なんだか楽しそうに笑っていた。身体には土がいっぱいついていた。少し気にはしていたようだが、俺が目の前にいるのに気がついて、そのままシロップについた土が俺の体にくっついた。
「やった!捕まえた!あーびっくりした。でもブラウンも捕まえられた。」
さっきまで半分遊んでたじゃないか。やっとってなんだよ…ってなんでシロップは逃げないんだ?俺が鬼なんだろ?
「それじゃあ、ブラウンも鬼、狼を捕まえにいく、いい?」
『へ?鬼は俺だけじゃないのか?』
「狼が言ってた、わたし、ずっと鬼。わたし捕まえた、ブラウンも鬼、あとは狼、つかまえにいく!」
『ちょっと、ルールがちがう…』
「狼が言ってた。二人で協力、捕まえてみろって。捕まえたら言うこと聞いてやるって。」
どういうふうに説明を受けたのか知らないが、とにかく根の動かし方はわかったし、頑張って捕まえられるようにやってみようか。
そしてシロップに簡単な作戦を教えて、奴の囮になってもらうようにして行動を開始した。




