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10-9 檜の樹木

 「じゃあ、シロップ。お前鬼な!」

 「うん!ところで、鬼ごっこ、なにするの?」

 「『えっ!!』」

 

 シロップの返事に俺もそうだが、狼も驚いたようだった。口を開けてポカーんとしている。よく見ればこの狼も結構表情が顔に出るよな。怪しい奴かと思って警戒はしてたけど、こいつ実際は間が抜けてるけど純粋そうでいい奴なのかもしれない。


 「おい、知らんでやりたい言うたんか?」

 「だって、二人、やるって言った、私、のけもの、嫌、つまんないもん。」

 「まぁ…そうやな。仲間はずれは嫌やもんな。じゃあ教えたるから…」

 

 はぁ、やっぱりシロップは知らなかったんだ。基本家犬は本気で追っかけることはあっても追っかけられることってないからなぁ。てかなんでそこまでして鬼ごっこをやらなかきゃいけないんだ?


 なんだか2人で打ち合わせして俺はのけもの?ってかなんで大人しく待ってなきゃいけないんだろう。なんだかバカバカしくなってきた。だいたい夜中なんだし眠いよなぁ…

 俺が大あくびをして丸まって休憩していたら何か声が聞えてきた。

 

 ”主よ…この犬の主よ…”

 ん?誰だ?どっから声が聞えてきたんだ?

 あたりを見渡しても目の前には打ち合わせをしている二人しかいないし…

 ”どこを見ておる、もっと右じゃ”

 右?なんて誰がいるんだ?どう見たって誰もいないし、って今何か木の枝の方が動いた。あそこに誰かいるのか?


 『誰だ?そこに誰かいるのか?』

 ”そんな大きな声を出さなくていいじゃろう。犬の主よ。”

 そのどこから聞こえるのかわからない声とともにその木の枝が風もないのにゆらゆらと揺れる。まさか…

 ”そう、そのまさかじゃ。ワシはお主が見ている檜の樹木じゃ”

 『え!樹木!』

 ”だからそんなに大きな声で喋らんでもよい。お主なら念ぐらい出来るじゃろ? いつもの若いのとやり取りをしとるじゃろうに。”

 若いの?ああ、やまぶきのことか。ということはこいつにはすべて筒抜けだってことか、あいつだけしか聞こえてないと思ってたのに。

 それよりなんで今まで黙ってたんだ?

 ”なんでワシが喋るか不思議そうじゃの?教えてやろうか?”

 『…一応聞いておこうか、気にはなってるし・・』

 ”それはな、お主が今、そこであの雌の子が変化した時に覚醒したというかのぉ。急にお主の中の何かがはじけたようじゃが…なにかあったようじゃな?”

 雌の子の変化?…ってもしかしてシロップをかわいいとか思った瞬間じゃないのか…あの瞬間なんか俺、おかしかったし…

 ”もしかして好きになったとかそういうことか?”

 『い、いや…そんな…そうなのかな?』

 ”よくワシの周りにもおったのぉ、雌のために雄が頑張ろうとしてのぉ、一回り大きくなった奴なんぞたくさん見てきたぞ。いいのぉ、動物は刺激があって。ワシらなぞ、そんな出来事などないでのぉ。”

 『え、あ、そんなとこで僻まれても俺、困るんだけど…』

 ”これはすまなかった…そんなつもりはなかったのじゃが…その時にいろいろなものの中に、樹木と意思が繋がるような状態が出来るようになったようじゃな。まぁワシの様に意思を持つ樹木は少ないから、たまたまそこにいたワシに意思が通じただけじゃがな。”

 

 『べつにあいつが好きとかそんなんじゃ…』

 ”だれもそんなこと聞いとらん。って何を恥ずかしがっておる。けったいな奴じゃ。”

 『うるさいな…そんなに俺を攻めんなよ…』

 ああ、駄目だぁ。思いだしただけで耳が熱くなる…俺にとってもまさか獣人のシロップを好きになるなんて不覚だった…

 ”からかって悪かったのぉ、機嫌をなおしてくれや”

 『もうその話は忘れてくれよ…ってそんなことはどうでもいいって。そうだ、樹木さんよ。勘違いしているようだが俺は主じゃない。主はいつも山の中腹にいる奴がいるだろう』

 ”それは知っておる。奴はここの仕事をよくしてもらっておる。じゃがお主がここにいるといろいろなものが動く。お主を中心にして、他の物も動いている。この山でお主の言うことを聞かぬ奴はおらんのではないか?実質的なこの山の主とワシは理解しておる。今もまた変わった奴に絡まれているのじゃろ?そいつに一泡吹かせればまたお主の好きにできるのではないのか?”

 それはそうだけど…あいつ等は別に遊んでるだけでなにをしようってわけじゃないし。迷惑かけてるのも俺ぐらいだからできればほっときたいと思ってる。ただ何かびっくりさせてやりたいとは思うけど…


 ”だからワシが手助けしてやろう。”




 

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