10-8 常識では?
「なんかこいつ見て耳が赤くなった奴がいるみたいやけど」
狼男がこっちに寄ってきて俺をからかうようににやけている。そんなこと言われると恥ずかしいし…
「それよりお前も混ざって鬼ごっこして遊ぼうや、こないだの続きで。」
「遊ぶ?鬼ごっこ、私も、やる!」
『何で鬼ごっこなんだって!それよりシロップは元に戻るんだろうな!』
「私、この格好、かわいくて好き。ブラウン、気に入らない?」
『いや…別に気に入らないわけじゃ…』
「心配しんでも、朝になったら戻ってるか戻ってるって。それより早く遊ぼうぜ。」
「うん、やる。ブラウンもやる?」
『え、あ、や…やる…やるよ!もう、やってやるよ!』
なんか調子が狂う。どうしてもシロップの言うことを聞かないと…なんだか不安になってくるような気がする。これもあいつのせいなのか?それとも本当に好きになったせいなのか分らなくなってきた。
「それとね、ね、ね、ね、かなちゃんも、誘っていい?」
『うへぇ!』
急にとんでもないことを言いはじめた。さすがにシロップの頼みとはいえそれは駄目でしょう。いつもと違う自分の姿をわかってる…ハズなんだと思うんだけど。そんな犬の獣人の恰好で人前に出たら絶対いいことないって。
「近くにいるなら行ってもいいでしょ?ねぇ。」
「かなか…あんまりおもしろくねぇなぁ…人間は力が違いすぎるからなぁ…それに見られるのはやばいかもしれんなぁ。」
『そう!ダメ!絶対反対!獣人の姿で人前に出たらダメ!』
「なんで?」
『なんでって…二本足で立ってる犬なんて普通いないでしょ?』
「じゃあなんでお前は犬のくせに喋れるんや?おかしいやないか。」
『それは…俺は知らない人には喋らないし、見かけは普通の犬だからいいの!』
「じゃあ、私ってわからなかったらいいんだ。」
『いや…そういう意味じゃなくて…』
「そうやな、見られるのはまずいな。」
「えー、まずいの?なんだ、つまんないな…」
俺達が駄目だと言ったのをシロップは不満げにしているので、駄々をこねるのかと思ったら意外とあっさりと引き下がった。俺も大地が近くにいるのは気になったけど、やまぶきが近くで見張っているから怪我することはないはずだ、きっと。
「よし、じゃあ気取り直して鬼ごっこといこか。」
「うん、やる!」
結局やるのか…はぁ…




