表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/49

03-2 覚醒

12/12 内容修正と短かったので前後の話をまとめました。

 今俺はクロと名乗った犬人?獣人?に抱きかかえられている。

 顔は一緒だけれど体つきとか喋り方たとかがさっきまでとは全然違うからホントに同じ奴なのかよくわからない。


「すまん、俺達の内輪もめに巻き込んだみたいで。」


 上から覗き込むように俺を見る目が犬なのに猫のようなものなのが違和感を感じる。


『変身?したのか。同じ奴じゃないような気がするけど…』

「変身?少し違う。説明するの難しいからあと…しまった、もう起きたのか。」


 風圧でひるんだ犬たちが態勢を整えだした。そして次々とクロのほうへ向かって飛びかかってくる。俺を抱えているのにそれをひょいっと軽く避ける。

 最初は1匹づつ来ていたのに時間がたつにつれて2・3匹連携しながら飛びかかってくるようになった。

 それをこいつはうまく前後しながらなんとか避けている。俺を抱いていて反撃できないみたいだけど。


 野良のくせに連携がいいのは…動きが違う犬が2匹、一番後ろで唸っている。

 あいつがこの集団のリーダーっぽいな。威圧感が他の奴と全然違う。俺の知らない言葉で唸ると、フォーメーションを次々と変えながら襲いかかってくる。


『さっきから避けてばかりなのは俺が邪魔だからなのか?』

「邪魔ではない、この場から逃げるために様子を見ているだけだ。」


 連携が厄介なのかなかなか進まない。攻撃を加えてやればいいのにと思うところもあるけどクロは意図的に避けるだけにしているようだ。

 リーダーをどうにかしたら他の奴らは連携できなくなる…かな?


『おいクロ。あの2匹のどっちかがリーダーなのか?』

「リーダー?ああ、そうだ。あの右の奴。」


 2匹とも他の奴らとは一回り大きな体つきで左の犬は黒っぽい中型犬、右のリーダー犬は灰色の中型犬。どっちも俺よりも大きい。

 でもあの2匹だけを相手するなら俺でも何とかなりそうだな。


『俺をあいつらを相手にしてもいいのか?』

「どういうことだ?」

『あそこのリーダーが連携を指示してるんだろ?だったら指示できないように俺が奴らの相手をしてやるよ。その間にこいつらをどうにかしてやれば…』

「しかし、俺はあいつ等には手を出せない。」


山の主って言ってた割に何で手をだせないんだ?主だからか?


『お前、山の主って言ってたよな。なんでお前が手を出せない?』

「俺が山の主に選ばれたから…あいつ等は山の生き物だ。俺が手を出すのは立場上まずい…」

『じゃあ俺が何とかしてやるよ。俺なら大丈夫なんだろ?』

「あいつら俺等でも苦労している。お前が何とかできるとは思えない。」

『連携を崩したら逃げられるんだろ?お前が雑魚の相手をしてくれたらなんとかしてやるよ。』

「雑魚…この体なら、あの2匹以外なら力を借りれば、まとめて引き受けること出来る。」


 どういうことか言っている意味がよくわからんけど、雑魚ども全て引き受けられるのか?

 本当にできるのなら俺は2匹に専念できる。でもなんかむちゃくちゃだなぁ…ほんとうかなぁ…

 そう思ってクロを見ると一回跳ねるように背筋が伸びて、猫のような瞳が猫の目になった。


「わかった、クロは嫌がってるけどこっちは手を出せない。こっちも力を使いたいがまだ未熟で無理そうだ。飼い犬の君には迷惑かけるけどお願いできるかい」


「いいかい。僕は今から力を使ってボスの2匹から他の犬達を引き離すから君はあの2匹をなんとか頼む。」


 !?

 急に話し言葉が変わった。こいつは2重人格なのか?

まあそんなことはあとにして、隙をみて俺はクロの腕の中から飛び出した。


 目の前に2匹、子分たちが俺に襲い掛かってくるが2・3回切り返しすと2匹の連携は簡単に崩れて、お互いにぶつかって倒れたところを後ろ足でふんずけてリーダーズのところへ向かった。

 クロのほうはそのふんずけた犬と、近くにいたもう一匹の犬を捕まえてなにやら呪文のようなものをぶつぶつと言い聞かせている。

 そして…その2匹を解き放つと、その犬は猫のようにクロの足もとでゴロゴロと顔をすりよせている。

 それを見た12匹の犬(2匹はダウン中)は動きが止まった。


 なんでそんなことになってるのかわからないけど、そんなことを気にしてる場合じゃない。とにかく本当に雑魚を引き受けてくれているのでそれは任せて俺はリーダーズに狙いを定めて合図を出している黒いほうへ向かった。

 奴はあせっている。俺を待ちかまえながら合図を送ってもほかの犬たちはクロのせいで動いてくれないからだ。

 俺が近づくと奴も覚悟を決めたのかこっちへ突進して、大きな体を反動させて前足で俺をはたきにくる。

 スピードをゆるめてそれをかわすと、黒い体が足の振りの方に流れたので逆側から後ろに回り込んで後脚で奴の後ろ脚を払ってやると簡単にひっくり返りやがった。

で、ちょうど仰向け倒れていたので起きあがる前に縦に一回転全して勢いをつけながら腹に着地した。

体重がうまく乗ったのかそのまま泡を吹いて痙攣をおこして動かなくなった。


 こいつ弱い…


 案外ちょろいなと思った瞬間、後ろから灰色の奴の気配が…

 なんとか噛みつきは避けられたけれど、後ろ脚で蹴られて吹き飛ばされた。

 ボールのように転がって、やっと止まったと思ったらこっちに突進してきやがる。

 それをなんとか横回転で避けたがあいつはすぐに反転してこっちへ向かってくる。俺より倍ぐらいの体つきなのに小回りが利いてとにかく速い。

 リーダーという名の通り、他の犬と比べると強さが突出している。

 攻撃はすごい瞬発力と力押しを駆使して俺を襲ってくる。

 でもこいつもただの犬。俺がちょこまかと動き回って思ったとおりに攻められないので、段々イライラしはじめた。

 動きにキレが無くなって、単純に力押しだけで攻め始めた。

 動きが読みやすくなったので不意に出る瞬発力に注意してあいつの攻めで反撃できないふりをしながら後ろへ下がっていく。


 あいつを気にしながらちらっと遠くを見ると、クロにすり寄っていた犬たちはクロの命令どおりに動くものになって雑魚たちを翻弄している。

 残りの雑魚たちはサブリーダーの指示が無くなって何が何だかわからないまま2匹に翻弄されている。

 本当にクロが雑魚すべてをきちんと引きつけてくれていることに感心しながらふとリーダーを倒す簡単な作戦を思いついた。


 わざと隙を作った。それを見てあいつは隙を見つけたとばかりに距離を縮めて襲いかかってきた。

 こいつ…力押しばかりで直線的な動きしかできない。さっきから動きを見ていた俺の感想。

 だから俺の前に来た時に簡単に横移動で避けてやったら、雰囲気が変わった。

 ちぎれた、そう思って俺は逃げるように全速力で走りだしたら、あいつも追っかけてきた。

 レーダーのように俺にひっついて追っかけて来る。怒りにまかせて走ってくるあいつはもう俺しか見えていない。

 あとはあいつをうまく誘導して、障害物をうまく利用して…

 俺がうまく気絶した犬を低い位置で飛び越えると、あいつはそれに気づかづに直撃して倒れた犬を吹き飛ばしながら大きく転倒した。


 あいつが起き上がらないので、近くに寄ってみてみると痛みを我慢しているのか苦しんでいた。

 匂いか音でで俺が近づいたのが分かったのか動こうとしても体が痛くてもがいている。

 あとは俺がこいつに勝ったということを刷りつけれるために噛みつこうとしたら、


”まいった…俺、負け…”


 灰色のリーダー犬は負けを認めた。勝てたんだ…

 ゆっくりと勝利の喜びが浮かび上がってくる…


---覚醒シロ---


 なんだ?どこからか声が聞こえる…覚醒ってなんだ?


---獲物ハ仕留メタ---


 獲物?なんだよそれ?


---ソイツハオマエノ獲物---


俺の獲物?


---弱者ハ強者二従ウ---


なんなんだ?この声は?

まるで俺をなにかに導いて…


---コイツヲ支配シロ---


それを聞いたとたんなんだか体の奥が熱くなって、興奮して、気持ちが高ぶって…俺の中に今までなかった考えがわき出てくる。


支配…こいつは俺の物…


---ソウ、オマエハ主---


”俺、勝ち、オマエ、負け、俺に、従え”


 俺の口から犬の原語が出る。それ…当然。俺、犬。

 灰色の犬の額に前足を添え、勝利で興奮した力が奴の体に入っていくのを感じる。これはこいつを俺の物にする儀式…

 この力をすべて注入すればこいつは俺のもの…


---ソウダ、ソレガオ前の力---


 俺の中にあったすべての力を注入し終わった。

 負けた奴を支配下に置く。そんな考えなんか今までなかったはずなのに… 

 もう一度こいつの頭をふんづけて俺が上位だということを認識させる。


”ああ、わかった、俺、お前に、従う”


 これでこの集団のリーダーは俺になった。

 形はどうあれ勝利して初めて子分ができた喜びに興奮が抑えられずに遠吠えをすると、今までクロにあしらわれていた雑魚どもが動きを止め、リーダーがやられたことを悟ると、俺に答えるように遠吠えを始める。

雑魚どもも俺をリーダーと認めたようだ。


 クロだけは何が起こったかよくわからないようでそれを見ながらキョロキョロしている。


 そのあと俺はクロに無理やり正気にさせられるまで遠吠えを続けた。

 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ