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10-6 シロップの変化

 シロップは口に中に入った球をごっくんと飲み込んだ。

 食べやがった。なんでそんな訳の分らんもんを食べるんだよ!


 ”おい!はき出せ!”


 そんな言葉は聞いちゃくれないのか、のんきにちぎれて口の中に残った物を噛んでいる。


 ”ん?おいひい”

 ”おいしいじゃない!はき出せ!”

 ”無理、食べちゃった”


 そして残ったものも飲み込んでしまった。

 それを見ていた狼男がシロップの頭をポンポンと叩いて視線を上に向けさせた。


 「どうだ?うまかったか?」

 ”ん?おいし…かった。げぷ…"


とゲップした瞬間もう一つの球をくわえさせる。


『おまえ!いい加減にしろよ!』

「おっと、やっと追っかけっこしてくれる気になったんか?」


俺が威嚇してもへいぜんとスルーするように少し遠くへ離れて行くのが腹立たしい。

シロップは…相変わらずそれを食べようと口をもごもごしている。


”何、これ、中で、膨らむ”


口の中でもごもごとしながら吠えたからはっきり聞き取れなかったけどたぶんそう言ったんだと思う。

なんでも口の中に入れるからそうなるんだと呆れて…いたらなんか様子がおかしい。

シロップの口にくわえたものが風船のように膨らんでアワアワしてたかと思ったら、小さな破裂音が聞こええて、口の中が白く光って…その周りから白くて今までよりも少し長くふわりとした被毛に変わっていく。

目の前の狼男よりも綺麗な白い被毛がゴールデンレトリバーの垂れた耳を覆うと、飛び跳ねたように耳が上がると、それが髪の毛のように背中の方に伸びていく。

両脚も少し太くなって指が少しづつ伸びると、後ろ足の膝あたりから少しづつ逆のくの字に曲がっていって完全に地面についてしまっているのと逆に、つま先がかかとの関節に引っ張られて短くなって足に近づいていく。

背中のたてがみっぽいものが前脚を覆って、適当なボリュームを作ると掌の肉球がすっとしぼんで平らに大きくなって綺麗な四本指が生えそろう。

あっけに取られて何もできずにいたら、シロップはすくっと立ち上がると、大地ぐらいの背丈の白い犬の獣人に変わっていた。

最後に口と鼻の周りがぐっと顔に引っ張られて短くなると、表情の乏しかった犬の顔の中に驚きの表情が生まれた。


「何?これ?どうなってるの?」


吠えることしかできなかった口から出るものが、普通の日本語を喋れるようになってる。

自在に動く前脚をほっぺや髪の毛のような被毛をすりすりと触りながら視線をキョロキョロさせて複雑そうな表情をしている。

あっという間の出来事で俺も驚いている…ってかあいつなにやったんだ?勝手に変えやがって…ってか俺も人のこと言えないけど…


『おい、ちょっと、どうしたんだ、何したんだ!』


俺が狼男の方へ文句を言おうとしたら、シロップが俺の方に寄ってきた。そして、俺を抑えるように両手で持ち上げた。


「何?私?どうなったの?」

『知らないって。あの狼男がなんかしたんだろ!文句言うから手を離せよ!』

「手?」

『前脚のこと!俺を離せよ!』


ああ、そうかという感じで、俺を持ち上げた手を下げて下ろそうとしたらいつの間にか狼男が俺の後ろ、シロップの目の前に寄ってきた。


「 ふーん、結構しっかりと変化したんや。犬が変化してもちゃんと喋れるのがよくわからんけど、とにかく成功はしたみたいやし…」


まだ不思議そうにしている両手の塞がったシロップに近づいて右手の人差し指で鼻の頭を軽く押える。

その指の先を2、3回嗅ぐとシロップの顔に少し笑顔が現れた。


「これ、これ、いい匂い…知ってる匂い。」

「これは俺ん家に伝わる香料の匂い。この匂いが分かった奴は俺みたいな姿になるんやって、始めて変身した時はびっくりしたんけど…。まさかシロップが分かるなんて思っても見んかったから…、分かるんやろ?」

「うん、分かる。前も、その前も、新月になったら、感じる匂い、私が知ってる匂い」

「やっぱりお前はじいちゃんが言ってた特別なやっちゃ、さっきの玉の中に香料をたくさん染み込ませて見たら成功したみたいや。」

「うん?よくわかんない、でも、私、人間の言葉、わかる!」


シロップは俺を捕まえた手をぎゅっと力を入れて嬉しそうに横に揺らしてきた。

そんなに大きく揺らすなって、気持ち悪い!俺を掴んでること完全に忘れてやがる。

試しに抜け出せないかやってみたけど全然ダメ…ってかいい加減にしろよ!


『おい、お前ら!いい加減俺を離せよ!。』


俺が叫んでるのがうるさいとばかりに狼男は頭をポンと軽くこつくと、首にかけてあった巾着の一つの中身を取り出した。

薄い銅を磨いたような光ってて綺麗な丸くて平面の板…引っ掛けるとこがあるから首輪にするネームプレートのようなものを取り出して俺の頭の上を通り越して、シロップの首輪に引っ掛けた。


「すまんけど、ちょっと制限させてもらうな。悪く思わんでな…」


ちょうどそれが俺の目線にぶら下がった時、白っぽく色が変化してさらにLEDのように眩しく光って俺にとって目潰しのような感じになって視界がなくなった。


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