10-3 匂い
もう夜の8時だっていうのに小学生1年生の子供2人が息を切らせて俺を迎えにきた。
『え!?なんで?かなちゃんほっといてどっか行っちゃったの?何で?』
「わかんないよ、散歩から帰ってしばらく遊んでたらしいんだけど、日がくれる前にいつの間にかいなくなっちゃったんだって。」
『だからってなんで俺を呼びに来るんだよ!』
「どこ行ったかわからないし、ブラウンはシロップと仲がいいからどこに行ってるか聞いてないかなぁって思って。」
『あのなぁ、そんなこと俺が知るわけないだろ!だいたいそんなこと聞いてたら俺が止めてるって。』
「あ-ごめん、怒らないでよ。そんな大きな声出したらみんなに聞こえるよ。」
『あ…』
さっと辺りを見回したら誰もこっちを見ていない…ってかパパが同じふうに周りをきょろきょろと見回してる。
さっきからそわそわして落ち着かない。それに少し酔ってるからちょっと注意力が散漫になってるみたい…気をつけなきゃ。
それよりおかしいなぁ、シロップはかなちゃん大好きっ子だから困るようなことはしたことないのに…
今日も特に変わったことなかったと思ったのになぁ…うーん…
「お酒臭いね…ねえ、お楽しみ中で悪いんだけど、シロップ探すの手伝ってくれない?」
『俺が?どうやって?』
「ブラウンならボク達より鼻や耳が利くでしょ。」
『俺が鼻があまり効かないの知ってるでしょ…ってそんながっかりしないでよ…もう、しょうがないなぁ。』
うーん、大地の頼みごとは断りづらいなぁ…大地とべったりってわけじゃないけどなんだかんだ言ってママの子だから俺の主人みたいなもんだし。
他の犬から見たらシロップと同じように見られてるんだろうなぁ。
そういうわけで、父親会を途中退席させてもらって大地とかなちゃんと一緒にシロップを探すことになった。
とりあえずシロップの臭いがはっきりと残ってるかなちゃんの家からたどっていくことにした。
「ねぇかなちゃん?シロップなんか変わったことなかった?注射打ったとかさあ。」
「うーん、そう言えば今日の学校から帰ってきたらなんか落ち着かなかったような気がする。私の周りでぐるぐるまわってなんか吠えてたの。」
落ち着かない?
俺も落ち着かない。
お酒のせいで余計に…って言い訳するようだけどかなちゃんの家を出た瞬間に匂いが一気に弱くなっていろんなものと混ざって…ヤバい、風向きが変わると車の排ガスの匂いでぶっ飛びそうなほど弱い。
犬の威厳は何とかして保ちたいけどダメ、集中できない。
お酒って感覚を鈍くするんだよね…なんだろう、時間がたてば経つほど酔いがまわっていくような気がする。
ってかなちゃんの顔を見てたらそんなこと言ってられないし。
かすかな匂いが途切れないように交差点の所まで早足で歩いて、大地達が追っかけてくるまでに一生懸命シロップの匂いを嗅ぐ。
幸いよく遊んでることもあって、しっかりと覚えてるから何とか嗅ぎ分けられたみたいで今のところ切れずに匂いを追っていけている。
でもなんか気になるなぁ。進めば進むほど嫌な予感が大きくなっていく。
何が気になるんだろう?
落ち着かないってそわそわしてるってことだろ?なんだ、どっかで聞いたような…
そんなことを考えているうちに、いつの間にか山に向かう前のたんぼ道に出ていた。シロップは山に向かったのか?
こんな暗い中、山に慣れてないシロップが入っていったなら危なくないか?
なんで山なんかに…
あ!狼男!
そう言えば前の時にあいつを感じてそわそわしてるって言ってた。
落ち着かないって言ってたのは前の時と同じ感じだったってことか?
それでかなちゃん家から抜け出して会いに行ったってことか。
ということは…いつもの場所に行ったのか!




