10-1 久しぶり
あれからシャワーを浴びて眠たかったから同じ毛布に入ろうとしたら、毛布やシーツを泥だらけだったことに気がついて、それでママに怒られた。
だって知らない間に帰ってきたんだもん、って言いたかったけどそんなこと言っても信じてもらえないのはわかってるし。
後で窓にカギがかかってなかったからここからやまぶきが入って俺を籠の中の寝床に入れたんだなとわかったんだけど、どうやって2階に上がったんだ?
寝床は俺の匂いがついてるからわかるとして、なんで毛布に包まれて寝てるってわかったんだ?
俺、そこまで詳しく話はしてないのに。
ひと眠りして、久々に昼間にママと喋った後、大地が学校から帰ってきたので、散歩に出かけていつもの公園に行ったら久々に徹が来ていた。
徹は俺達を見つけるとこっちに近づいてきて、開口一番俺の頭と耳のあいたに手を乗せてわしゃわしゃと俺の長めの被毛をいじくりまわす。
で、そのまま背中に手が伸びて…背中がぞくっとして反射的に体が跳ねて徹から少し離れた。
「なんだよ、いつもは喜んで触らせてくれるのになんで逃げんねん。久々やのに冷たいなぁ」
『いや、そういうわけじゃないけど…背中触られると気になっちゃって…ほら、そろそろ抜け毛がひどくなる季節だろ、だからあんまり触られると抜けちゃう…』
「いいやん、どうせ生え換わるんやし、なあ大地?」
「そうだよ、今朝から触らせてくれないの。なんかおかしいよ。怪我でもしたの?」
『そういうわけじゃ、ないんだけど…』
ダメ、気のせいだと思うけど、もしあの夢の通りに背中さすって俺の力dが発動したら大変なことになるし。
気のせい、気のせいだってわかってるんだけど…
そんな俺に少し不満そうな徹に大地が嬉しそうに声をかけていた。
「徹、久しぶりだね?稽古も一段落したの?」
「あ、あれか…まあな、しばらくは大丈夫やから…今朝はぎりぎりやったから…」
「ぎりぎり?」
「あ、いや、な、なんでもない。だから久々に遊ぼう!」
徹が声を上げると、大地と奏太たちはブランコの方に走って行った。
ブランコで遊ぶなら俺は遊べない、乗れないし押せないし…
だからついていくのはやめて、砂場の方に遥達と一緒にいるかなちゃんとシロップの方へ向かった。
かなちゃんはみんなと学年が2つ上だけど、遥と仲がいい。
友達だから大地たちともよく遊ぶ仲なので、俺がリードなしで近づいても怖がらないから近づきやすい。
かなちゃんの飼い犬のシロップはたまに多加美っちのいたずらで俺が彼女に追っかけまわされることもあるけどゴールデンレトリバーの彼女は大人しくて人懐っこいから俺が近づいてもにむやみに吠えないから喋りやすい。
でもなんせでかい。俺の2倍はある。
”どう?昨日、異変、感じた?”
”いいや、俺にはシロップが言ってた感じは分らなかった。でも、山に行ったら狼男がいて散々な目に会ったよ。”
”狼男!、ね、いる、昨日も、そわそわ、した、やっぱり”
”何でわかったんだ?”
”わからない、感?、それより、狼、どんなの?、かっこいい?、吠え方、良かった、姿、見たい、今度、山、一緒、行く”
”いや…いかないほうがいいかも。それに勝手に外に出られないでしょ?”
”だから、ブラウン、かなちゃん、説得、する、人語、喋って、ね?”
"ダメ。かなちゃんとは喋ったことないの!”
”うー”
うーん、ここにもめんどくさい奴がいたのか…
確かにシロップは雌だから、気になるのかなぁ。俺にはそんなそぶりも見せたことないのに。
”連れてく、嫌、じゃあ、今度、そわそわ、した、教える、嫌”
”いや、俺も知らないほうがいいんだけど…”
あ、シロップがすねた。
まあ、でかいけどまだ2歳だからそういう話が好きなんでしょう。
ああ…若いっていいなぁ…って、俺そんなに年とった覚えないけど年齢的におじいちゃんだって言われてるからつい言っちゃうんだよな。
そのあと、他の犬とも少し話したあと、大地達がブランコから帰ってきた。そろそろ日も沈みかけてるから今日は解散という事でみんなと別れて家に帰った。
大地に後で聞いてみたら一か月前に徹が夜に無断で出ていったから罰として一か月間、学校から帰ったらみっちり稽古させられてたみたいだ。
で、今日から謹慎がとけたけどきっちり門限が決められて、破ったらまた家から出してもらえないと約束したらしい。
虎姫さん厳しいからなぁ…




