09-4 夜の森
昼間あんな気になること言われたら行かなきゃいけなくなくなっちまった。
今日の夜は、山で泊まり…別に楽しくないんだけど。
黙っていったらあとでうるさそうなのと、勝手についてこられるのも困るから大地には絶対ついてくるなと釘をさしておかなきゃ。
あと…ママには理由を言わないといけないけど、まさか狼男が出るなんて言えないから適当に理由をつけておかないと。
夕飯後、ひつこくついていきたがる大地をママに押さえてもらって、久々の夜の山に向かった。
狼男って満月の日に出るんじゃなかったっけ?
満点の星空…って天気がいいけど、今日は新月なので月は全く見えない。
そんな梅雨前の暖かな夜中、真っ暗な森をひたすら登っていく。
流石に真っ暗な茂みの中は何にも見えないので、せんせいに貰った首輪につけられるLEDライトで前を照らしながら静かな山の中を慎重に歩きながら奥へ奥へと進んでいく。
で、ようやくいつもの場所についた。と思ったら暗い先に何かがごそっと動いたからそっちに向いてLEDを照らしたら…
先の生き物が草木を分けて俺の方に突進してきたような気がしたからびっくりして横に避けたら…クロが俺を威嚇していた。
"ブラウンか、急に、眩しい、驚いた。すまん”
俺だと気づいたので威嚇をといて急に眠たそうな眼で俺を見る。
こんな暗い時間に明るいものが近づいてきたら驚くわな…
ついでにあくびなんかして緊張感が一気に吹っ飛んだみたいだ。
まあ、このあたりじゃ野良の天敵はいないので何もなかったら日が暮れると寝るみたいな生活だから当然か。
それよりやまぶき達がいない。俺を呼んでおいて…とは思ったけれど、ギンと見まわりに行ったんだろう、付近に匂いがしないし。
さあてと、俺はいったい何をすればいいんだろう。
”なあ、クロ?”
”ナンダ?”
”俺は何をしたらいいんだ?”
”知らん”
あのなぁ…まあ、クロが呼んだわけじゃないからしょうがないか。
まあ、良く考えてみたらどっちかといえば俺は老犬の部類に入るわけだし、体力も力もやまぶきやギンには勝てるわきゃないし…
同じ老犬でもクロは俺よりもでかいから力もあるし、ここの力のおかげで歳もあまりとっていないような体つきをしている。
それになんてったって森の番人だから、いざとなったら結界を使って最終的な目的だと思われるこの力の充電機だけを守ったらいいんだから。
俺なんか 狼男と出会ったら闇の力が発動してくれってに祈るぐらいしかできないんだろうなぁ。
完全に足手まといだな、こりゃ。
まあいいか、この間の話を聞いてたらいつもみたいに敵意を持って攻撃してくるわけじゃなさそうだし、もし機械が潰されても治せばいいだけだし。
ん?あれ?どういえばそんなことができるのになんでこの間は中の鉱石を取られたんだ?
”ん!誰か、違う力、ここに、入る、来た!”
ここ最近出来るようになった侵入者監視用の広く張った結界の中に誰かが入ってきたようだ。
眠そうだった顔を引き締め、侵入者がいると思われる方向を向いて耳をぴんと立てて何かを感じている。
”あいつ、来た、気をつけろ!あいつ、気配、薄い”
”気をつけろってどうしろって”
”俺、ここ、動けない。あいつ、ここ、来た、かき回す、いいか?”
”え、かき回すって、俺が?…あ、まあ、やってみる…”
うーん、気配も匂いも感じない中、どうしたらいいのか正直分らないけど、とりあえずクロが見てる方向に行ってみるか。
って、あてもなく走ってみると風向きが変わって、匂いが…
「お!こいつもなんか変わった犬やんか。面白い力が湧いてる。」
いつの間にか俺の後ろに気配とともに、やまぶきが言っていた大地のような徹のような匂い…どうも洗剤の匂いがしたと思ったら…
『イタイ!イタイ!尻尾引っ張んな!』
俺の…俺のしっぽを誰かに引っ張られて宙に浮いた。
次回更新は3/12日 1時の予定です
よろしくお願いします。




