09-3 些細な変化
山が襲われてからそろそろ1週間、今のところ手がかりは全くなかった。
俺が実際に襲われたわけじゃないから、話で聞いただけで探せって無茶な話で、手がかりすらつかめていない。
大地に協力してもらって散歩がてら飼い犬たちに聞き込みをしても、実際に見た者はいないみたいだし、徹や遥に聞いても分かんないだろうし…。だいたい人間に見られたらその辺で大騒ぎになっている。
今回は解決したわけじゃないからやまぶきも警戒していたみたいだけど、今のところ気配すら感じないようだ。
一度街を一緒に歩いたけれど、似たような感じの人間はいないみたいだ。
そんな中、徹が最近公園に来ていない。
しばらく、虎姫さんの道場で集中して稽古をするらしいという事で、学校が終わると直行するように言われているらしい。
だから最近多加美っちがうるさい。
言い合いする相手がいないからなのかやけに俺に何かと言ってくる。愚痴とか文句とか…そんなこと犬に言うなよ。
遥ちゃんには仲はいいけどそう言うことは言いにくいみたいで、大地にはあまり反応してくれない、奏太はマシンガンのように喋られるとおろおろして話が出来ない。
で、俺が標的かよ!
確かに俺にならきつく言われても性格もわかってるし、どこまで言ったら怒らないかもわかってるから平気だけど他の人に俺が喋るのわかったら大変なんだから勘弁してほしいよ、全く…
まあ、そんなこんなでいつもの日常に戻っていったんだけど…
そろそろ一か月が過ぎようとしていた時、ちょっとだけ変化を感じた。
”そわそわ、する、前の、遠吠え、時、感じ”
かなちゃんとこのシロップがちょっとした異変を訴えた。
誰か違う人がいるのかと思ってまわりを見てみても変わった人はいないし、気配も感じない。
”なんでそんなふうに感じるんだ?”
”気候?、感覚、なんか、同じ。押される、感覚、似てる、気、する”
感覚?うーん分らん…シロップは何かを感じてるのか?
それとも俺が鈍感なのか?違いがさっぱり解らない。
なんかそんなこと言われると気になるなぁ…
今日は山で寝泊まりしてみようか、なぁ…でも…
公園からみんなと別れた後、家に帰ってみるとやまぶきが俺の帰りを待っていた。
野良なのに大人しくて人懐っこくて賢いと家では評判はいい。
だからたまに家に来ても、ママが機嫌よく相手をしてくれる。
ただ、俺の前以外では日本語は喋らないので、ここではただの犬という扱いになっている。
”今日は、ギンさんの検査入院の日だったノデ、送ったついでに寄ったのデスガ…途中で気になることを聞いたので寄ってみまシタ”
”なんだよ、気になることって?”
”せんせいの所で入院している猫に聞いたのデスガ、この間の狼が現れた日、覚えてイマスか?”
”ああ…俺がよっぱらた日か”
”そう…デシタネ…忘れてマシタよ…”
ああ…ちょっと冷たい目で見られたよ。
やっぱりあの時無視したの根に持ってるのか…
”そんなことはどうでもいいのデスガ、その猫があの時のことを覚えていてくれたミタイデ…”
”なんかヒントでもあったのか?”
”ちょっと気になったことがアリマシテ。その猫が言うには、その時と毛艶がにている、みたいナンデス。”
”は?”
毛艶って…そんなのでなんかヒントでも見つけたのか?
そんなの調子や体調で変わってくrんじゃないのか?
”その話が、ここへ来る間にも何匹か同じことを言っている猫がイマシタ。”
”なんで猫なんだよ!”
”ボクが野良ですカラ、飼い犬に聞くのは難しいのデス。大体人間と一緒のときが多いデスし…その点、猫の方がその辺にふらふらしているカラ、聞きやすいんデス。”
”そんなんで何がわかるんだ?”
”ちょっとした些細なことでも変化があるんです。そういうところから照合していかないと…対策のとりようがありません。”
”そうか…そうだな。で、何を対策するんだ?”
”ちょっとした武器をせんせいに作ってもらいマシタ。それと、鉱石を小さいものに変えて、もし蓄電気を壊されても被害が少ないようにして準備します”
小さい鉱石。
結界が一日持つか持たないか位の力しか入れられないから取られても悪用しにくいらしい。
敵も連続してこなければ、クロ一人の力でどうにかなるし。
ん?クロがいる限りは鉱石はいらないんだよな…まあ鉱石の力はクロが何かあった時の予備だから、何かなければ全くなくても大丈夫…なんだよなぁ。
それに何でせんせいのとこには鉱石がたくさんあるのにそっちへ行かないんだろう?
よくよく考えたら何かおかしいよなぁ…
次回更新は3/8 1時の予定です。
よろしく願いします。




