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07-2 青狐と流れ狼と俺の変化

 やまぶきの話は急ぎのようなのであのあとすぐ公園から家に寄らずに、山に向かった。


 山についたら、勝手に獣人になったやまぶきが貯蔵装置をいじっていた。どうも分解しているようだ。

 確かに獣人にならないと手が自由に使えないからしょうがないけれど…


 「ブラウンさん、ごめんなサイ。勝手に獣人にナッテシマッテ。」

 

 いや…勝手にって言っても俺は別にダメとか言ってるわけじゃないからね。


 「それより、この装置なんですケド、電気を止めているハズなんですケド、勝手にいろいろなところから力を吸収しているみたいデスネ。」

 『勝手に?』

 「そうデス。小さい力が集まってデスネ、鉱石の中にかなりの力が溜まってイテ…これだけ強いデスと力に吸い寄せられて…あ、触ってはいけマセン!」


 ギンが鉱石を触ろうとしたところをやまぶきが止めた。


 「きれいに圧縮したノガ仇になったようデスネ。ボクたちの世界でもこんなに奇麗に圧縮することはできまセン。あっちがほどほどな技術らこっちの技術は完璧のようデスネ。完璧のものにしてしまうのには技術的に無理があったようデスネ。」


 またよくわからない説明をしだした。

 要するに技術が追いついてないということか?

 強制終了をするために配線をいじっている。


 やまぶきは頭は良いので機械と電源、鉱石と吸収制御の配線を強制切断する方法は覚えているらしい。

 せんせいのとこでたまに作業を見せてもらっているので、それを思い出しながら一生懸命分解しようとしている。

 しかしここずーっと犬で過ごしていたやまぶきの作業は手際が悪く、うまく工具が使えない。というか道具自体を使ったことがないのでゆっくりと感触を確かめるために慎重に、時には考えながら作業は進んでいく。


 始めて使った割に、正確に使えるのは手先も器用なんだと感心する。

 あとは普通の犬としては十分な力はあるけど、あとは獣人のクロみたいに攻撃力の上積みがあればいい獣人になれるのになぁ…。



 ”これか、あいつが言ってた異常な力ってのは”


 その声が聞えた瞬間、やまぶきの作業をのんびりと見ていたギンが立ち上がって、尻尾を立てて威圧しはじめた。


 ”誰だ!、知らん、匂い、”


 ギンの声にやまぶきが作業を止めようとして、それに加勢しようとしたので、ギンは作業を続けるように、その機械を守るように命令した。

 俺は…ギンがけん制している声の主の方へ、3・4歩前に出て脅しをかける。何か仕掛けて来るのなら…体当たりしてここから無理やり追い払う…

 その考えに声の主は分かっていたように争いを避けるために、俺の動きを見て同じように3・4歩下がって様子を見ている。

 相手は…狐!?


 ”だれだ!お前”

 ”そんな、威嚇、しない。この辺、大きな力、感じた、見に来た、それだけ…”


 狐は俺の向こうの、やまぶきの方をみながらもう一歩さがったのでおれも狐が鳴きやすいように警戒を少し解いた。


 ”お前、この辺じゃ見ない顔だけどどこから来た?”

 ”知らん!、目が覚めた、ここに…、俺、いたところ、もっと、涼しい、…。”


 睨みながらけん制するギンを気にしながら鳴く。

 もしかして飛ばされてきたとか…そんなことあったら大変なんだけど。


 ”俺、居たとこ、同じ、力、感じた、だから、ここ、来てみた”


 まずいな…もしかしたらあの機械のせいで呼び出されたとかそんなんじゃないだろうな…


 ”よそもんならここに来るな。大人しく帰ってくれ!”

 ”そうする、俺、知らん、力場、荒す、暮せない”

 

 そう狐に伝えると大人しく体の向きを変えてもと来た方へ帰って行こうとしたら…


 ちりりりん


 狐のしっぽに鈴が付いているのに気がついた。


 ”ギン!、ブラウン!、その狐、捕まえて、早く”


 やまぶきが犬語で吠える。

 その声にギンが反応して狐に全力疾走で体当たりをかける。そして上に乗って狐を拘束した。

 よくわからんがやまぶきは何を気づいたんだ?


 ”おいら、そっち、行く、鈴、外す、それまで、押さえて、お願い”

 ”何!、俺、大人しく、帰る、言った、何が、不満”


 ギンの下で狐が怒りながらジタバタしている。体格差もあってギンの下からは抜け出せない。


 作業を中断したやまぶきがあわてて狐の方へ駆け寄る。そして嫌がる狐の尻尾をつかんで根元に巻かれた鈴を取ろうとしている。

 鈴が気になっているのか?何があるんだ?

 あれだけじたばやしているにもかかわらずあれ以来ならない鈴。確かに不自然だけど…


 ちりりん


 しっぽを振った回数と関係なく鈴が鳴る。

 やまぶきが狐を持ち上げて、尻尾の鈴を触ろうとしたら・・・


 ”鈴、触るな、俺、入れ替わる、嫌だ!、ああ、もう、獣人・・・関わる、ろくなこと・・・ない・・・あ、いぃぃ!” 


 狐はやまぶきの手から弾き飛ばされたように飛び上がり、空中で1回転すると黄色かった毛の色が少しずつ濃くなっていく。

 いやな予感・・・は確信に変わる。


 着地すると、フゥー、フゥーと荒い息づかいに変わって、まるで腕立て伏せをしているように肩から先を上げたり下げたりしている。

 

 ”やめろ!、俺、入るな!、違う・・・土地・・・問題・・・起こる・・・やめ・・・”

 ”オイ!どうしたんだ。何一人で鳴いてるんだ?”


 ギンが慌てて狐に駆け寄ろうとしたが、何かの力で途中で足が止まる。

 やまぶきは何が起こったかわからないのか固まっている。

 このパターン、見覚えがある。

 狐に変化が起こる。

 中身が代わる・・・

 俺は…状況をみてたぶん何をしても無駄だと理解した。


 ちりりん


 鈴の音に耳をぴくっと動かすと息遣いが静かになる。

 何かを鳴きたそうだった口がぽかんとしたように動かなくなる。

 ビンと立っていた尻尾がたらんと地面に落ちると体中の力が抜けたよ言うにゆっくりと前後に振れる。

 黄土色かった毛の色が青っぽく変色していく。

 前後運動から体をゆっくりとのばしていく。

 気持ち良さそうに首元から顔を上に反らして口元を上に突き上げるとマズルが少し縮んでいく。

 尻尾をゆっくりと上に持っていくと、そこからゆっくり背中にかけて青い毛が豊かに伸びて…突然一気に全身がぶわっと大きくなったように見える。

 狐の姿のままひょこっと立ち上がり前足を上にあげて大きく背伸びをすると、脚と前足だった腕がゆっくりと伸びていって小学校高学年生ぐらいのところで止まった。

 

 「ふわぁ-」


 大きなあくびのあと瞬きを2,3回した後、手と足を確認するように自分の体を確認する。

 切れ目の鋭い眼をした青い獣毛の狐獣人がやまぶきを見ながらにやっと笑った。

 


 「あんたかい、ここの守り人は」

 「ボクじゃな…ボクだったらどうするつもりデスカ?」

 「じゃあ…さっきまで感じてた力の正体をくれないかなぁ。」

 「嫌と言ったらどうシマスカ?」

 「俺、争うの嫌いなんだけどなぁ…」


 狐は俺の上を軽くとび越え、やまぶきの前に接近する。

 あまりにも突然に、素早い動きに俺はなんとか首で狐を追いかけることしかできなかった。

 ギンはなんとか反応して狐の前へ出て抵抗を試みる。

 狐の足に噛みつこうと着地点を狙って突進するする。

 狐はリズムを変えてそれを回避する。

 空振りしたギンの体が大きくバランスを崩しながら後ろ脚でなんとか狐をひっかけようと大きく伸ばしたが届かない。

 そのまま地面に倒れこむと、狐は急に反転して倒れたギンを持ち上げる。


 ”放せ!”


 狐の腕の中でバタバタ暴れている。

 やまぶきが助けようと機械の前を離れ、狐の方へ向かおうとした。

 それに合わせて狐はギンを強く拘束する。


 「おっと、こいつは俺の中にいることを忘れるなよ!」


 ギンを人質に取られ俺とやまぶきはその場から動くことはできなかった。

 ギンだけが手の中から逃げ出そうとバタバタしている。


 「俺は、ここの力の調査をしにきた。隙あれば力の元を持って帰れって命令も出ている。」

 『さっきの狐の姿は…囮か』

 「あいつは俺の憑依先、あいつがいないと無警戒でここに近寄れないからな。あいつ気が弱いからここに来る時に入れ替われって言ってあったんだけどなぁ…」

 『入れ替わるって…お前も影の類なのか?』

 「影?ああ、闇のことか。あんなバケモンと一緒にすんな!」


 違うって、やってることは憑依して操って…一緒じゃないのか。


 「そんなことより急にここの力の反応が無くなった…どっかに隠したのかは知らんが大人しく力の元を渡せば何もしないで帰ってやる。」


 偶然やまぶきが配線を切ったのが良かったのか。

 こんなわけのわからん奴が来たってことはやっぱり余計な力は変なやつを呼ぶ。あの機械はお蔵入りになってもらわないと…


 「いてっ!」


 そんな中、ギンは拘束が弱まったのか顔周りが動けるようになって狐の腕を思いっきり噛んでいた。


 「お前は…邪魔そうだ。少し黙っててもらう…」


 噛まれた片手を強引に振りほどいて、血がにじんだ腕に…いつの間にか緑色の鈴のようなものを取り出して、ギンの首にぐるぐるっと紐を巻いて無理やり固定する。

 そしてギンの頭を軽く触る。

 そしてまるであやすように背中を何回かさすってやると、ギンは段々大人しくなっていく。

 それと一緒に鈴がもやっと光っていく。


 ”何!、なんだ、俺…、何してる?”

 「その鈴に力を吸わせている、もうすぐお前は大人しくなる。」


 その言葉どおりに蒼い光が増えていき、ギンは抵抗をやめた。

 吸い取られて力なく四脚をだらんと重力に任せて下に垂らす。

 それを見ながら、狐はギンの頭を軽く撫でる。


 ”やめろ!、俺、何した、力、入らん、離せ!”


 言葉とは逆に体の抵抗はまったくない。

 なでられるままに頭を手の動きに合わせて動かしている。


 「いい子だ、いい子。お前はいい子だ。」


 ちりりん


 ”いい子…俺、いい子…”

 「ふぅん、こいつ鈴に反応しやがった…」


 鈴の音と共に尻尾が少しずつ揺れはじめ、手に合わせて耳をペタンと倒して気持ち良さそうな顔に変わっていく。

 狐は切れた目をより細くしてニヤけたような顔をした。

 何かを企んでそうな…そんな顔。

 見ただけで背筋が凍りそうな感じがする。


 「こいつは…なかなか。つかえそうだな。」


 今なら…突撃できそうな隙があるのに変な雰囲気に圧倒されて動けない。

 やまぶきも同じものを感じているのか被毛を逆立てている。


 「俺は蒼…お前は?」

 ”俺…、ギン”


 蒼と名乗った狐はギンの目の上を撫でて目を閉じさせる。

 そして蒼の右腕に胴体をぶら下がるように寄りかかる。

 全く抵抗しなくなったギンに何してるんだと苛立ちながら、これから始まる嫌なことが頭の中にこびりつく。


 蒼が俺とやまぶきを交互に見る。

 その眼が俺達をけん制…まるで術にかかったように体が固まっていく?!


 しまった!こいつも幻術使い?…まともに目を…

 動け、体よ、動いてくれよ…

 ギンを…俺のかわいい弟を…

 助けにも行けないのか… 


 蒼がギンの額をゆっくり撫でる。

 尻尾を大きく振って完全にリラックスしている。


 「俺はここの力を持っていこうとここに来たが…そんなことはどうでもよくなった。こいつ…ギン。いいものを見つけた。」


 ギンを放すとなぜか体が宙に浮いている。

 ゆらゆらとゆれながら相変わらず体の力をぬいて尻尾を振っている。


 「ギン、お前、俺の元に来ないか?」

 ”ん…、…、…、俺、ブラウン、…、…、一緒、…”


 なんか嬉しいこと言ってくれる。俺はギンを弟のように思っていたけど、ギンもちゃんと俺のこと大事にしてくれたんだ…

 普通なら抱きしめてやろうかと思う言葉も蒼の一言で消えてしまった。


 「お前は俺のもの。こっちへ来るんだ!」


 今度は狐が尻尾につけてあったのと同じ鈴を取り出してギンの首に巻きつける。

 普段は首輪をつけるのも嫌がるギンは抵抗することもなく、蒼に鈴を簡単に取りつけられた。。


 ちりりん


 俺にとって嫌な音が鳴り響いた。

 それは…きっとギンの変身の合図…認めたくない!


 ”何?、俺、呼ばれた、蒼…”


 なでられた所の血の跡がギンを覆う。

 それがギンの被毛に吸収されると…そこが鮮やかな銀色に染まっていく。

 それが体中に広がっていくと体がそのまま大きくなって…


 地面を掴んでいる脚が縦に伸びるように変形して爪がはっきりと見えるように生えてくる。

 胴から首にかけて前に押し出されるように伸びていく。 

 マズルがさらに前に出て、鼻筋が額までまっすぐになるように高くなる。

 目が鋭く細く…そこの狐のようなものに整えられて…耳も高く大きくなっていく。

 短かった獣毛が犬としては考えられないような長さに生え揃い、頭から首、背中辺りにたてがみと言っていいような長さの獣毛がきれい生え揃った。


 体が人間の子供の大きさをはるかに上回り、狐獣人ち同じぐらいの高さまで成長して尻尾まで豊富な獣毛で覆われると鈴が首輪に変わり、変化が収まった。


 特に吠えることもなく、大人しく狐に頭を撫でられると、その場に座り込んでしまった。


 「いいものを拾った、こんなとこに流れ狼の末裔がいたなんて。」


 座り込んでも腰のあたりまであるギンを撫でながら嬉しそうにしている。

 それに抵抗もせずに、気持ち良さそうに尻尾を振る…あれ?


 なんで…なんで、俺の知らない奴にシタガウ…


 あいつ…ずっと俺の後を追って…俺を慕ってたのに…何であんな奴に簡単に…


 俺の中の何かもやもやとした嫉妬というか支配心というかなにか訳の分らない感情が俺の中に大きく広がって、心が落ち着かなくなっていく。

 


「さあ、ギン。俺の手元へ来い。」


 姿の変わったギンは奴に大人しく従うように耳をぴくっとさせて声を拾っている。

 そして奴の言うとおり俺に背中を向け、奴の後ろをまわって横へ…飼いならされた獣のようにじっと奴を気にしながら俺達を何か冷たい目で見てくる。


 姿は変わっても俺が知ってるギンのハズなのに…


 「あなたはギンさんに何をしたんデスカ?」


 先に動けるようになったのか(動けなかったのは俺だけ?)やまぶきが珍しく声を荒げてる。


 「こいつを手に入れられただけで俺は満足した。」

 「答えになってまセン、答えてくだサイ。それとも力ずくで聞かせていただいてもよろしいデスカ?」


 ”やまぶき、やめろ、蒼、俺の、主、侮辱する、許さん”

 「ちょっと…”ギン、冗談、やめる、おいら、狐に、用、お願い、黙って”」

 ”黙らん、やまぶき、黙れ、さもないと、俺、攻撃、する”


 やまぶきは俺をちらっと見ながら困ったような顔をする。

 様子からして人質ではなくなったギンの方へゆっくりと歩いていく。

 その行動にギンは威嚇を始める。体を前かがみにしていつでも飛びかかれるように…

 その行動は本物だと悟ってやまぶきは途中で立ち止まった。


 「ボクはギンさんには何もする気はないんデス。お望みの力の元を差し上げマスから…大人しく鈴を外させてもらえマセンカ?」

 「それは無理!それにそっちは興味が無くなった。これで俺の立場は逆転するしな。それよりこんないい個体は絶対にみつけられないからな。見てみろよ、こんな大きくて立派な流れ狼。それも改竄かいざんの鈴のおかげで自在に操れるとなれば手放す奴はいないだろう。」


 狐はギンの後ろに回る。そのついで?に頭をポンと叩くととたんにお座り状態になって大人しくなった。

 俺たちにギンは俺のものだと見せつけるように…


 「改竄の鈴ですか…。あなたがそんな魔具ものを何故持っていたのかは知りまセンガ、ギンさんはあなたの支配下にあるのデスネ。」


 やまぶきは少し間を開け、上を向いて両手で頭の獣毛を掻き揚げた後、大きくため息をついた。


 ”仕方ないデスネ…ボクが暴れてもギンさんには勝てそうにナイですカラネ。下手に荒されても困りマス…。”


 またやまぶきは俺の方を今度はじっと見た。

 今の流暢な犬語は俺に向かって?

 ゴメンナサイ…そんな顔をしてた。


 「ギンさんはあなたが連れて行って下サイ。その代りここにはあなた達が求めた力はそこの流れ狼のモノとして処理して下サイ。そしてここには二度と来ないと約束して下サイ。でなければ、ボクはあなたをここで相討ちになってでもあなたを仕留めて見せマス。」


 やまぶきは覚悟を決めた?ようだ。

 普段からギンは皆の一つ上の強さなんだからあんな大きな化けののみたいなのになったらきっと格段に強くなったんだろう。

 狐の命令に従うようにはなってしまったけれど…あいつがいなくなってしまえば解放できると踏んだのか、そんな知識を持っているんだろう。

 やまぶきも幻術が使えることを考えるとなんとかギンを回避して狐となら…


 「わかった、ここは大人しく帰ってやろう。どうせもうここには来る必要はないし、約束も守ってやるよ。ただ…俺達が帰るまでじっとしてろよ。じゃないとギンにお前たちを攻撃させるからな。」


 狐は右手にはめていた腕輪を上にかざすとそこから黒い穴が現れて少しづつ大きくなっていく。

 きっとそれの中に入るとあいつのいたところに瞬間移動できるんだろう。

 そうなればもうギンには会えない…


 俺は…体は動けるようになったのに動けなかった。何が起こったかは分ったけど、なんかいろいろな思いが交差して…頭の中がまとまらない。

 あいつは俺に一番なついて…物覚えが良くて…町に下りるのに交通ルールとか、車の死角とか、野良はなんて思われてるかとか、獲物の取り方とか、食べれられる野草やきのことか…

 今のまだ体のだるい状態じゃ突撃してもたぶんギンに吹きとばされてそのまま俺の前から消えていく…嫌だ。

 お前が俺から自然に独立して去っていくなら俺は何も言わんのに…操られて去っていくのは嫌だ。

 俺の手の届かない所に行ってしまうのは嫌だ。


 やまぶきも…なんで俺のために命を捨てなきゃいけないんだ。

 あいつもただ、俺の変な力に巻き込まれてこんな世界に来ただけなんだぞ。

 それが何でか俺になついて…獣人のくせに犬で過ごすって言って…

 あいつの判断は間違ってないとは言えないけど…

 立ち位置は俺の従者だけど…あいつは俺の子供みたいなもんで…


 何でこんな時に体が動かないんだ。

 本当にしんどいから動けないのか。

 行っても何もできないから動かないのか。

 俺だけが助かりたいから動けないのか。


 脚ぐらい動いてくれよ!

 嫌だ、こんなの嫌だ、

 見てるだけなんて嫌だ…

 せめてあそこに行ってかき回すぐらいのことをやってやらないと…あいつがいなくなる…



---嫌カ、見テイルノハ嫌カーーー


 だれ? 俺の頭に響く声。

 どこかで聞いた声。


---見テイルノハ嫌カーーー


 嫌だ…


---ダガオマエニハ闇ガ足ラナイーーー


 うるさい!じゃあ出てくるな!

 邪魔だ!

 声をかき消そうと大きく首を振った…ら、そこから黒いガラス玉のようなものがこぼれて落ちてきた。

 これは…光喜くんを元に戻した時の戦利品…クロ…俊夫くんが俺の首輪のネームプレートにに無理やりはめ込んだんだっけ?

 なんでこんなとこに?


 闇…光喜くんについていた影の塊…

 もしかしてこれを使えば… 


 一口なめてみた。

 とくになんともな…くない。

 体がおかしい…

 感覚が鈍くなって…周りが段々消えていく。


 黒いものが俺を覆って…


次回更新は12/28 1時の予定です。

よろしくお願いします。

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