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01 俺のはじまり

 何で俺はここにいるんだろう。


 気がついたら冷たいつるつるした短くて狭い道の上で俺はペタンと倒れていた。全身が痛くて体を動かすのが辛い。お腹がすいているから動く気にもなれない。

 びゅうびゅうと吹く強い風が後ろの高い塀のおかげで防がれているのだがとても寒い。目の前がかすんできた。意識もだんだんぼけてきたしこのままここで死んでしまうのかな…


 そんなとき頭のほうから何かガチャっという物音が聞こえた。


「まあ、なんでこんなとこに…」


 そんな言葉を聞いたあとおれは抱きかかえられたところで意識がなくなった。


----


 んん・・・あったかい。


 気がついたら何か柔らかくてふかふかの布に覆われていた。どうやら家の中みたいで窓の外からひゅうひゅうと強い風の音が聞こえる。

 どうやら凍え死ぬことはなくなったようだけど…


 お腹がすいた…


 ここどこだろう。誰かの家なんだろうけど。なんか懐かしいような…

 そういえばさっきの布、猫の匂いがする…どっかで嗅いだような知ってる匂い…

 それより食べ物を探さなきゃ。


 気を失って冷えていた体が温まってきた。少し休めたのでまだだるい体を動かしてゆっくりと布から抜け出してあたりを見回した。


「あ、目が覚めたのね。」


 俺の体の何倍もある見たこともない生き物が扉を開けて入ってきた。声の高さからして雌のようだけど…

 ん?手に何か食べものらしいものを持ってる。あられ?のような小さな塊がたくさん入った皿を俺の前に置いてくれた。

 普通なら警戒しなきゃいけないのにおいしそうな匂いに空腹が負けてまっしぐらに食べ物に飛びついた。


「ごめんね。こないだまで飼ってた猫の食事しかなかったんだけどお腹がすいてるなら食べてね。」


 うめぇ!

 

 腹が減ってるから何でもうまいってわけじゃないけどカリッとしててなんかいろんな味があって…こりゃいいや。

 猫ってこんないいもん食ってんのか?

 そんなことどうでもいいやと勢いよく頬張ってあっという間にたいらげてしまった。

 いいもの食べさせてもらった。


『ごちそうさま。とっても美味しかった、ありがとう。』


 いただきます言えなかったからごちそうさまぐらい言わなきゃ…と思って言ったんだけど…


「…犬が…喋った?」


 あれ?なに驚いてんの?

 びっくりして固まってる。


『なに驚いてるの?』


 そう問いかけたけどしばらく沈黙が続いて出てきた言葉は。


「あなたが…喋ったから。」


 え?俺が喋るのおかしいの?

 どうして…って、あれ?

 この家に来る前の記憶がないことに気がついた。

 何でと言われたら…何故でしょうか?


 そんな馬鹿みたいな会話が続いてバカバカしくなったのかいつの間にかこの人と打ち解けていた。


「ねえ、あなた?野良なんでしょ。どう、ここに住まない。」

『え、いいのか?』

「ちょうどこの間まで飼ってた猫が死んじゃって…さみしかったの。あなたならお喋りもできるし。まだ小さそうだし私の息子ってことで、ね。」

『じゃ、じゃあ…ママさんって呼んでいい?』


 ママさんの笑顔にもなにか懐かしさを感じながら俺はここで飼われることになった。

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