I had such a feeling
ほのぼのしてます。
前話での謎の人、
大 公 開 ! ! ←
泣いてる
啼いている
君が好きだった風が
悲しそうに、鳴いている
その意味も判らないまま、あの頃の私は笑っていた
君とともに過ごした時間
流れる様に、風の様に過ぎ去って行く時間
永遠だと信じて疑わなかった
あの頃の私たちは笑っていた。
そう、笑っていたの
1話
獣も通らぬ深い森。
月光さえも差し込む隙間が無い程、木々が覆い茂る暗い森の中にその建物は在った。
ぼんやりと灯るランプがぽつぽつと木々に宿り、幻想的な風景を魅せてくれるだなんて
其処に何が在るかを知っている者か、その住人しか知り得る事は出来ないだろう。
理由は簡単。
外から見れば、この森はまるで樹海のようなモノだからだ。
入ろうとする気が起こる方がおかしいとさえ思われる。
オブラートに包めば御伽噺に出てくる怖い何かが出る場所。
はっきり言ってしまえば、魔の巣窟に見えるのである。
そこが、魔物を裁く術を持つ者たちが集う【聖架教団】だなんて、誰が想像するだろう。
まぁ、自分がその術を持つ者の1人だなんて、未だに信じられないのだが。
そんな事を考えながらも己の足はゆっくりと確実に、その城を覆い隠すような城壁につけられた出入り口をくぐったのであった。
「あ、お帰りなさい柘榴!」
声がした方を見ると、若干蜘蛛の巣が張られたような廊下に散らばる書類を、1人で懸命に拾う少女が目に入った。
黄緑っぽい癖のある髪はふんわりと女性らしさを強調するように後ろで束ねられ、くりりとした飴色の瞳には、自分の顔だけが映っている。
表情は穏やかで、うっすらと口元から八重歯が見えるのが可愛らしい印象を与える。
聖架教団に集う女性同業者が身に纏う団服から垣間見える、長くて細いや腕は、誰もが羨ましがる代物だ。
「ただいまー、レミリア。」
レミリアの出迎えに、嬉しそうに顔を綻ばせる自分が、彼女の瞳にごしに見える。
そして、散らばった書類をせっせと拾う彼女に手を貸した。
それに驚いたのか、レミリアは一瞬だけ眼を見開くと、すぐに笑顔になって「ありがとう」と礼を言った。
「柘榴は本当、優しいのね」
「いやぁー、俺は別に優しく何かないと思うけどー?」
そう言ってから、「あっつー」と、かぶっていたフードをとる柘榴。
フルネームは黒淵 柘榴。
聖架教団に集う【断罪者】の1人である。
.....生物学上、彼女はれっきとした女だと言う事を、今のうちに伝えておこう。
女性である...が、その中世的な顔立ちと女性らしくない立ち振る舞い(さきほどの紳士的な行為etc...)の所為で、
彼女が男であると勘違いしている人々は、教団の中で過半数を越えるだろう。
それに加えて、一人称が俺である事や、団服が女性用ではなく男性用である事も、彼女の性別を迷子にさせている理由である。
しかし、彼女もレミリアに負けず劣らずの麗人だった
日本人にしては青白い淡雪のような柔らかい肌は、珠の如しと密かに同業者の中で讃えられる程で、
それを一層引き立てる、細くて艶のある黒髪は伸びっぱなしのロングストレート。
瞳は常時、落ち着いた閑かな闇色で、その瞳を見ていると吸い込まれるような、
何もかもを見透かされてしまうような、そんな気持ちにさせる。
彼女が女性らしい仕草や口調をすれば、道往く数多の人々が振り向き虜になるだろう。
しかし、当の本人はというと軽い調子を崩さずに飄々とした笑みをするだけだ。
まぁそれだけでも十分な程、いや十分すぎるほど華があるのだが。
故に、彼女が任務から帰還し、教団内で1,2を争う美女が集うと、
それはそれは、絵になるのだ。
(実際ファンも居るらしく、何万円相当で隠し撮り写真が出回っているらしい。)
コツコツと、長い廊下を2人分の足音が響く。
レミリアは、先程から感じていた事を、おずおずと柘榴に尋ねた。
「あの、柘榴?なんだか...イライラしてない?」
「...さっすがレミリア~、俺の事良く見てるよねぇ。」
「...もしかして、また?」
「そ。司令官室から電話きてさ、司令官に聞いたから間違いないと思うんだよね~。ていうか俺の本能がそう言ってる~」
「…おつかれさま。」
レミリアは、柘榴の笑顔の裏に潜む真っ黒な、そう、清々しい程真っ黒なナニカを見た。
本人は、怪しげな笑みを貼っ付けたままズンズンと足を進める。
その先に有るのは、ちょっとオシャレな【司令官室】という札が掛かった茶色い扉だ。
それが視界に入った瞬間、笑みを一層深める柘榴。隣でついて来たレミリアが蒼白になった。
柘榴が、その細い体を一瞬にして飛躍させる。
まるでふわりと羽が浮いたようだった。
しかし、美しくもみえたその姿は突如として殺気を纏う。
と思った刹那、長い足が鋭い針のようにドアに向かって突っ込んで行くのがレミリアの瞳に映った。
うーん、短い!!!
無駄に空白あるのは気のせいなのです。