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フルカネルリだ。初雪だ。
そして初雪となれば今までもそうだったが校長が生徒に混ざって雪合戦だ。
「やっ!はっ!」
「あはははっ!いくよっ!えーいっ!」
校長が投げた雪玉は見事な勢いで飛んでゆき……
ガシャッ、パリンッ!
「「「あ」」」
……さて、教頭の長い説教に巻き込まれないように逃げるとするか。
《……賛成するヨー》
『……ふふふ……逃げるが、勝ちよぉ……♪』
その日の五時間めの授業はクラスの二割ほどが休むことになった。教頭から逃げることができなかったのだろう。
……合掌。
《アブホースの説教は長いヨー……がんばレー!》
ちなみに白兎は何故か
「今回は参加しない方が良い気がする」
と言って不参加だった。
……白兎。お前はいつの間にそこまで直感が鋭くなったのだ?
《この学校には人間の潜在能力を引き出す力がネー》
在るのか?
《別にないヨー》
無いのか。
《ただし人間の範疇を越えない程度に成長させてくれるみたいだネー》
ほうほう。それで白兎はあれほどの直感を?
《そうなんじゃないかナー? クトちゃんって優しいシー、自分の生徒たちへの選別がわりにそういうことをしてもおかしくないんじゃないかナー?》
……ほお…………。
ならば、私はどうなのだ?
《……ンー、炎に相性が良くなってるネー。火傷とかすぐに治るだろうシー、術式も少しだけ強くなるんじゃないノー?》
人間の範疇は越えない程度に?
《そうだネー。でもキミの場合は成長するから人間の範疇とかはあんまり気にしなくっても良いんじゃないかナー?》
……そうか。
《……ちなみに、フルカネルリはボクの加護も持ってるからネー。大地の方にも気持ち適正があるヨー》
ほう? どの程度だ?
《石ころの形を整えて球体にしたり正四面体にしたり二つ以上の石ころをくっつけたりとかかナー?》
便利だな。早速使わせてもらうとしよう。
『……ふふふ……何に使うのかしらねぇ……?』
アルミ製の銃を砕いてポケットの中に入っている原子配列変換機で材質を変える。名前はつけられていなかったが、私の白衣に使われている金属と同じものだ。
それを使ってもう一度銃を作り直す。反動がきつくても身体強化でどうにでもなるし、異世界で使うぶんには全く問題はない。
……異世界で銃刀法に当たる法があればまた話は変わるが、今度行く世界にはそんなものはないだろう。
そんなことを考えながら砕いた銃だった金属を一つに纏め、全てくっつけて一つの金属塊に。さて、ここからだ。
口径を変える技術や術式を弾丸に組み込む技術、それに術式そのものを弾丸に変えるもの、銃身の冷却術式、弾道の補正、威力の増加用のオプションパーツの製作などが楽々できる。
……実に便利だ。
《……良い笑顔をしてるネー……》
そうか? 自覚はないのだが……まあ、ナイアが言うのならばそうなのだろう。
「いい? 確かに雪合戦が楽しいのは分かるわ。でも、だからと言って窓ガラスを割るのはダメよ」
「うぅ……はい……」
現在、私はアブホースさんのお説教を受けています。
隣にはお兄ちゃんが正座で座っていて、どうしてガラスに当たる前に蒸発させなかったのかと監督責任を問われています。
その他にも後ろでは私と一緒に雪合戦をして遊んでいた生徒たちがずらっと正座で並んでいて、アブホースさんのお説教を聞いています。
……ちなみに、この時点でアブホースさんは四人になっていて、私とお兄ちゃんと生徒のみんなのお説教に一人ずつ、最後の一人は割れたガラスの片付けや新しいガラスの搬入(と言う名のガラスの創造)、それにお説教中の私達のお仕事の肩替わりで忙しそうにしています。
「―――と言うことは言わなくても……クトちゃん?」
「は、はいっ!」
い、いけない。ちょっと考え事で聞いてなかった………。
「……今、私が何の話をしてたかわかるかしら?」
「……ゴメンナサイ」
アブホースさんは深ーくため息をついて、
「……もう一度最初っからね」
死刑宣告にも似た言葉を言った。
……そ、そろそろ足が限界……(泣)
結局解放されたのは放課後だったクトとクトゥグアと生徒達。