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2-51

ちょっとネタ切れになってきたので2-55が出たあとは一週間ほどお休みします。

 

フルカネルリだ。本当に体育祭をやり直すことになった。白兎は諸手を上げて喜んでいるが、私としては良い迷惑だ。

《研究の時間が削られちゃうもんネー》

『……あらあらぁ……それは大変ねぇ……』

本当にな。


一年生達の元気な叫びを聞いたり、先輩達の妙に上手い組体操を見たりしていればあっという間に時間は過ぎる。

私は個人として徒競走に出場したため残りの出番は応援合戦と全体競技、学年競技のみである。

「応援しないの?」

「しているぞ?」

一応クラスメイトだしな。それに優勝賞品があるそうだし。

《あるノー!?》

あるぞ。中身は聞いていないがな。

『……ふふふ……勝ってからのぉ……お楽しみ、ねぇ……♪』

そうなるな。


優勝はできなかったが、敢闘賞を貰った。

中身は……干瓢だな。

《干瓢!? 敢闘で干瓢ってなんなノー!?》

『……駄洒落ねぇ……』

駄洒落だな。

《……考えたのはクトゥグアかナー? あいつ意外と親父ギャグ好きだシー……》

そうなのか?

《あんまり外には出さないけドー、実はそうなのサー》

そうなのか。

「今夜は干瓢巻きが主食かな?」

「酒のつまみにもいいだろうなぁ……」

父と母は既に食べる方向に思考がシフトしている。

……干瓢巻きが主食は………なんとかならないか?

『……ならないんじゃぁ……ないかしらねぇ………?』

悲しいことだな。

《でもそれが現実なんだよネー》


意外といけた。

《予想外すぎるよその反応ハー!?》

『……なんで、倒置法……なのぉ……?』

なぜだろうな。きっとナイアだからさ。

『……ふふふ……そうかもねぇ……♪』

まあ、なんにしろ確実なことは母の料理は旨いという事だな。

《……あーうんそうだネー》

うむ。私ではあれほど旨い干瓢サラダや干瓢ステーキを作るのは難しいだろう。

《ステッ!? マ、マジデー!?》

ああ。さすがに驚いた。

やはり料理には無限の可能性が眠っているのだな。

《無限って言うよりもただフリーダムなだけって気がしてきたヨー!》

そうかもしれないな。

だが、美味いものは美味いのだから仕方がない。

『……わたしもぉ……食べてみたいわねぇ……』

またいつかな。






遥かな未来のとある異世界のこと。食卓についたナイアとアザギがワクワクとした顔で何かを待っている。

「まだかナー♪ まだなのかナー♪」

「……ふふふふ……もう少しよぉ……のんびり待ちましょぅ……?」

「それもそうだネー。……でも楽しみだナー♪」

アザギに笑われてもワクワクを抑えきれないらしいナイアは、用意されているナイフとフォークをくるくるくるくるくるとかなりの高速で回している。

それは速いだけでなく無駄に滑らかで、暇な時間をどれほどこの手慰みで過ごしていたのかが伺い知れる。

そしてそれから三分ほどの時間が過ぎて、漸くナイア達が待っていた声が聞こえた。

「できたぞ」

「イヤッホー!」

「……ふふふ……ナイアは元気ねぇ……」

その声を聞いた途端にナイアは喜色に満ちた声を上げ、アザギはそんなナイアを見て苦笑している。

「まあ、喜ぶか否かは食べてから決めてくれ」

そう言って姿を見せたのは、外見の年齢はおおよそ二十歳を少々過ぎた頃であろうフルカネルリ。その手には薄い皿と料理を持っている。

「アハハー、まさかフルカネルリがあんな小さな約束を覚えてくれてるなんて考えてなかったからネー。嬉しかったのサー」

「……正直なところぉ………わたしたちも、忘れていたものぉ……ねぇ……?」

そんな話をしながらもフルカネルリの動きは止まらず、ナイアとアザギの前にその料理の乗った皿を置いた。

「……うーん、やっぱり見た目はかなりあれだネー……ほんとに美味しいノー?」

「人の好みにもよるが、不味くはないぞ」

ナイアのそんなわかりきった質問にフルカネルリは答える。その手は‘ないあるらとほてっぷ’と書いてある茶碗にぺたぺたと真っ白なご飯をよそっていた。

「まあ、食べてみろ。話はそれからだ」

「……そうだネー。それじゃ、いただきまスー」

「……頂きます……」

フルカネルリに言われて覚悟を決め、ナイアとアザギはぱくりとそれを口にした。

「……あレー? 意外といけるヨー?」

「だろう?」

びっくりしたように呟くナイアに、フルカネルリは言葉を返す。

「なぜか母の作る料理はある一定よりは不味くなることが無いんだ」

「……へぇ……不思議ねぇ………あらぁ、ほんとに美味しぃ……♪」

「意外だろう?」

ぱくぱくと食事を続ける二人にだけではなく、自分にも向けて呟く。

「……やれやれ。なぜこんなものが美味いのやら…………」

ちらりと目をやったその料理の名前を思い出す。

「……母も妙なものを作ってくれたものだ」

「……ほんとだよネー。何で干瓢でステーキを作ろうなんて思ったんだロー?」

ナイアとフルカネルリは、二人揃って首をかしげた。



  そんなあるかもしれない未来の事。




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