帰還編 1-3
《今回はフルカネルリが異世界にいってる間の回想だヨー。だからボクの出番はここだけサー》
『……わたしも、そうなのよねぇ……』
《寂しいネー》
『……寂しいわねぇ……』
いつも通りに起きて、くっ、と伸びをする。
目覚まし時計を覗きこむと、そこにはいつも通りに6:00の文字か浮かんでいる。
カーテンを開けて、朝日を浴びて、今日も一日いい日であるようにと願った。
……すぐに、いい日ではなくなったけど。
いつもなら瑠璃ちゃんが既に起きていて庭に出て体操をしているのだけれど、今日は珍しく瑠璃ちゃんの姿が無かった。
今日は寝坊でもしたのかな? と思っていた。
今日は瑠璃ちゃんの誕生日だし、日曜日だし、ゆっくり寝かせてあげようと。
だからあの人が瑠璃ちゃんがいない理由を聞いてきた時もまだ寝てるみたいと答えたし、部屋を覗いた時も、何事もなく眠っているように見えたからそのままにしておいた。
でも、流石に十二時まで起きてこなければおかしいと思う。
いつも起こされることもなく朝早くに起きてくるはずなのに、いくらなんでも遅すぎる。
そう思った私は、瑠璃ちゃんを起こすために部屋へと入っていった。
瑠璃ちゃんは静かに横になっていた。
目を閉じて、全く動かない。
瑠璃ちゃんは、朝に見たときと、全く変わっていなかった。
「瑠璃ちゃん、もうお昼よ? そろそろ起きない?」
声をかけても全く反応しない。そんな瑠璃ちゃんのほっぺを撫でる。
――冷たかった。
「……え?」
もう一度、撫でてみる。
認めたくなくて、もう一度。
やっぱり冷たくて、それでも、もう一度。
何度やっても、結果は変わらなかった。
口元に耳を澄ましてみる。
――何も聞こえない。
胸に耳を当ててみる。
――何も聞こえない。
手を掴んでみると、既に固まっていた。
いつも手を握ると、柔らかくて、暖かいはずの瑠璃ちゃんの手は、もう、暖かくはなかった。
ここから先はよく覚えていない。ただ、泣きながらあの人に電話をして、あの人がすぐに帰ってきてくれて、話し合って…………そして、瑠璃ちゃんのお葬式を、やること、に…………
学校に行ってみたんだけど、瑠璃はいなかった。
いつも私より早く来ているのに、珍しいなと思うと同時に、風邪でも引いたのかな、と思うだけだった。
それが違うってわかったのは、高中先生が朝のホームルームで、瑠璃が死んじゃったと言った時だった。
最初は信じられなかった。本の少し前まで、瑠璃はとっても元気だったんだから。
先週も、‘また学校で’って言ってくれたのに……。
「ねえ、嘘だよね?」
先生に聞いてみる。
先生は首を横に振った。
そして、たった一言。
「事実」
それだけ言って、教室から出ていった。
私は、その日を魂が抜けたみたいな気分で過ごした。
夢を見た。私がいて、瑠璃がいて、いつも通りにお話したり、一緒にお弁当を食べたりしていた。
瑠璃は笑いながら私の頭を撫でてくれたし、私も楽しそうに笑っていた。
………でも、もうこんな日は来ない。瑠璃がいなくなっちゃったから。
それを思い出した途端に、瑠璃は笑顔じゃなくなった。
そして、私を置いて歩いていく。
走っても追い付かない。
手を伸ばしても届かない。
声を上げても止まってくれない。
瑠璃は、どんどん小さくなって行く。
……待ってよ、瑠璃。お願いだから。
瑠璃はほんの少しだけ止まって私の方に振り替える。
そして、悲しそうな顔をして――首を横に振った。
……私は、泣きながら目を覚ました。
瑠璃の話を聞いてから、毎日こんな夢を見る。
いくら泣いても涙は止まらない。視界はいつもぼやけっぱなしだし、泣きすぎて目が痛い。
それでもやっぱり涙は止まらなくて、私はまた泣く。
枕元に置いてある瑠璃からのプレゼントに目をやって、それを優しく抱き寄せる。
そのまま目を閉じて、夢の中に逃げる。
………このまま、瑠璃のところに行けたらいいのになぁ…………。
泣きながらも気丈な哀華と依存の強い白兎